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TOPIC/読み物

本場のそばめしってこんなに美味しいのか。
そばめし発祥の店、お好み焼青森。

そばめし

神戸市長田区の局地的ソウルフード、「そばめし」。中でも『お好み焼青森』のそばめしは、ただ焼きそばとご飯を一緒に焼いたもの とは一線を画す味わい。その魅力に迫ります。

神戸市長田区のソウルフード

まいど憶良(おくら)です。
神戸市に根付くソウルフードがあるということで、神戸市長田区にやって来ました。

みなさんは、「そばめし」をご存知でしょうか。全国的にはあまり馴染みがないようですが、神戸市、しかも長田区ではポピュラーな食べ物なんです。

お好み焼青森外観

今回はそばめし発祥のお店、『お好み焼青森』で本場物のそばめしをレポートします。

店内

店内は大きな鉄板のあるカウンター席9席、テーブル席が10席と、さほど大きいお店ではなく、町のお好み屋さんという感じ。

メニュー札

テーブル席の上にはずらりとメニューが並んでいます。
目的はもちろん、そばめし750円です。

そばめし誕生のきっかけ

憶良 : 全国的には珍しいそばめしですが、どんなきっかけで作られたんでしょうか。
店長さん : 昭和30年代の話なんですが、近くの靴工場の工員さんが焼きそばをおかずに、ご飯を食べていたんです。
当時ご飯は提供してなかったのでお客さんはご飯を持ち込んで、鉄板で温めてから一緒に食べていました。
そのうちの一人がある時、「このご飯も一緒に焼いてもらえないか」と言ったのがきっかけ。

ご飯とそば

先々代の、今の店長さんのおばあさんが一緒に焼き始め、より食べやすく、より美味しくと改良して今の形になったんです。
このご飯持ち込みスタイルはかなり長い間続いたそうです。 お店でご飯も用意して正式なメニューとなるまでは、ご飯を持ち込まないと食べられないという珍しいメニューだったんですって。

ビートの効いた鉄板料理

憶良 : では早速ですが、そばめしをお願いします。

ご飯とそばを並べて魚粉

ご飯とそばを並べて魚粉を振りかけたら、
チャン・チャン、チャン♪とリズミカルにそばを切っていきます。
ある程度刻んだところで、

ぼっかけを投入

ぼっかけを投入。
これがそばめしの旨さの核となります。

そばを刻む

更にチャンチャン♪と細かくそばが刻まれていきます。
まさにビートの効いた鉄板料理といった感じ。

キャベツを乗せたら、また刻む

キャベツを乗せたら、また刻む。
そばがどんどん短くなっていきます。

ソース投入

ばらソースの串かつソースが「じゅわあぁっ」と加わり、一気に香りが鼻に飛び込んできます。
この串かつソースは焼きそばや天ぷらにも合うソース。
このソースで酸味とスパイシーさが加わります。

ソース甘口

ソースを全体になじませた後、ばらソースの甘口を投入。
あっさりと優しい甘味と、追加の酸味が加わります。

そばめし

焼き始めからなんと約3分。
あっという間にそばめしが焼きあがりました。

そばめし

店長さん : ソースは甘口、辛口どちらにしましょう。
憶良 : 辛口でお願いします。

そばめし

まずはそのままで一口食べました。
他店で食べたそばめしは、ご飯と焼きそばが、べちゃっとまとまって団子みたいになってしまっていることもあったのですが、青森のそばめしは、しっとり・ぱらりともいうべき優しい食感。
後は甘口・辛口・どべソースの3つのソース、青のり、味の素など、自分で好きに振りながら好みの味で食べ進めて行きます。
これは、美味しい。
お客さんの多くは、まずこのそばめしをシェアして食べながらおみ焼きが焼きあがるのを待つみたいでした。

かすすじ焼

『かすすじ焼(800円)』

こちらも人気メニューの『かすすじ焼(800円)』

調理風景

青森の、といいますか長田のお好み焼きの特徴として生地に玉子を混ぜないんです。
生地を焼き、その上にキャベツ、魚粉、天かす、ぼっかけ、油かすと乗せていきます。
油かすというのは、牛の腸などを煮詰めて油を取り出した後に残ったもの。
油を採って残ったカスというのがその名の由来です。
旨味が詰まっているので関西では、うどんのトッピングやお好み焼きの具材として好まれています。
ちなみにですが広島の油かすは、豚のガツから油を取り出した後に残ったものを指すのが一般的で、「せんじがら」と言われ、酒のツマミなで楽しまれています。

油かす投入

かすすじ焼にはけっこうタップリと油かすが入ってます。
これは美味しそう。

生地流し込み

最後に再度生地を流して、ここからじっくりと、若干優し目に火を通していきます。

調理風景

ソースは辛口でお願いしました。

『かすすじ焼(800円)』

一般的な広島や大阪のお好み焼きと違うのは、生地がもっちりとしているところ。
これは長田区のお好み焼きの特徴なんですが、基本的に生地に玉子を混ぜないことが原因の一つと言われています。
ソース、生地、ぼっかけ、油かす、キャベツ。
絶妙なバランスでまとまったお好み焼きは、めちゃ旨でした。
神戸に行くことがあれば是非食べてみて欲しい一品です。

青森のぼっかけの秘密

今回注文した二品ともに入っていたぼっかけ。
長田区ではポピュラーな「ぼっかけ」ですが、これは全国的にいうところのスジコンです。
牛すじとコンニャクを甘辛く煮詰めたものなんですが、青森のぼっかけは他とはちょっと違うんです。

ぼっかけ

基本的に鉄板の上でじっくりと味を入れていくという作り方も珍しいですが、見た目にもかなりの特徴があります。
それは牛すじ、コンニャクともにかなり細かく刻まれていること。牛すじをお肉屋さんに発注する際、特別にミンチにしてもらった状態で仕入れているんですって。
その理由を聞きますと、初代店長であるおばあちゃんが、ぼっかけは好きだけど歯が悪くて食べられなかったからミンチ状にしてもらったというのが始まりだったとのことです。
その副産物なんですが、青森の牛すじは歯に挟まらないというメリットがあります。
これって意外と食べ終わった後も気が付かない人が多いかも知れませんね。

長田のソース、ばらソース

ばらソース

青森のお好み焼、焼きそばなどにつかわれているばらソースは神戸市長田区にある、「ばら食品」で作られています。
上品でいてスパイシーな味わいのソースは、広島や大阪のソースと違った特徴があって味わい深いです。
中でも私のお気に入りは旨辛の、どべソース。
ソースを作った時に底に残った、旨味も辛味も濃縮されたソースで、私はこの味にドハマリしました。
他の食材や麺なども地元の物を使っていることで長田の味が形成されているんですね。

困ったなぁ、こだわりは・・・ないんです

店のこだわりなどインタビューしていくと、かなりの確率で帰ってくる答えが「特にこだわってはないですねぇ」とのことでした。

調理風景

店内の様子やオペレーションを見ていて、
めちゃくちゃ忙しく焼き続けているにも関わらず、頻繁に鉄板の上など掃除していることや、まとめキャベツは刻まず、すぐ使う分だけ刻んでいることなどについて、これってこだわりじゃないですか?と聞いてみても、
「特に何かを考えているわけではない」という答え。
・・・!!
と、いうことは逆に言うと、食べ物を扱う鉄板の衛生面に気を付ることや、キャベツの鮮度を保つことなどは、気にしていないほど当たり前のこととしてやっていることということになります。
自分の好みのソースを好きなだけ使えることであったり、なんと味の素を振りかけることですら自由だということは、味にこだわりがないというよりも、お客さんの満足度を一番の優先事項としてとらえているということ。
最後に店長さんが言った、「本当にただ一生懸命焼くことしか出来ないですが、美味しかったとお客さんに思ってもらえれば嬉しいです」という言葉が印象的でした。

店長さん : あ、マヨネーズは置いていません。全体がマヨネーズ味になってしまいますから。
憶良 : 良かった。こだわりが聞けて。

(ライター 憶良)

※本記事は2023年3月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

お好み焼 青森

住所    兵庫県神戸市長田区久保町 4-8-6
電話番号  078-611-1701
営業時間  11:30~14:30
      17:00~21:00
定休日   火曜日
アクセス  JR新長田駅から徒歩6分
      駒ケ林駅から徒歩5分

okura

ライター  憶良(おくら)

ゲームプランナー、プロデューサー、ゲーム企画講師や駄菓子屋店長などを経て現在に至る。日本で一番古いハンドルネーム、OKURAです。休日は温泉へ出向き、道中での食べ歩き、行先の地元スーパーで珍しい食材を買い込んで料理したりと、食に対してはかなり貪欲。「美味しいものを食べている時、美味しいものについて話している時に、悪いことを考える人はいない」という持論を持つ。

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