加東市の秋を彩る恒例イベント「東条山田錦の里 探訪ウォーク」(主催:東条山田錦フェスタ実行委員会)が、2025年9月21日(日)に開催されました。たわわに実った酒米山田錦の稲穂を眺めながら歩く約11Km。ゴール地点では同日開催の「加東市山田錦乾杯まつり」で日本酒を味わうこともできる楽しいイベントです。酒米山田錦を育む東条川疏水の大切さを肌で感じながら、楽しく歩いてきましたので紹介します。
最高峰の酒造好適米として知られる山田錦。89年前に兵庫県立農業試験場で生まれて以来、酒米の王者として君臨し続けています。生産地は全国に広がっていますが、生産量の半分は兵庫県。そのうち約8割が、加東市を含む北播磨地域のものです。
中でも、東条地区は最高品質を誇る「特A地区」に指定され、地域ブランド「東条産山田錦」として商標登録されています。
この「東条産山田錦」の里を支えているのが東条川疏水。降雨量の少ないこの地では、古くから多くのため池が造られてきました。それでも、安定した水量が確保できず、戦後に鴨川ダム(東条湖)を建設し、逆サイフォンの原理を応用した曽根サイフォンなどの全長約108Kmにおよぶ水路網「東条川疏水」を完成させました。
東条川疏水は、農業用水だけでなく水道水としても利用される地域の大切な施設ですが、日本酒を愛する人々にとっても、おいしい日本酒を楽しむために欠かせない重要な施設なのです。
「東条山田錦の里 探訪ウォーク」は、東条川疏水を支える安政池や曽根サイフォンを巡りながら、収穫前の山田錦の稲田を歩く全長11.4Kmのウォークイベントです。
今年で16回目。リピーターも多く、10年以上参加されている人もチラホラ。先着200名まで参加(事前申込)できますが、毎年ほぼ満員になる人気ぶり。地元の人が多いですが、神戸や姫路からの参加もみられます。
途中の休憩所では加東市産ブドウの振る舞い、ゴール後には豪華な抽選会など、楽しみがいっぱい。ゴール地点の社中央公園ステラパークでは「加東市山田錦乾杯まつり」が開催中で、東条産山田錦を醸した全国の名酒と出会えます。
昨年に引き続き、今年も参加し全行程を歩いてきました。
集合場所は、東条福祉センターとどろき荘。数百年前から湧出している源泉を利用した日帰り温泉施設です。
受付開始時間の8時30分を前に、参加者が続々と集まってきます。
受付(参加は事前登録)を済ませば、探訪ウォークマップをはじめノベルティが手渡されます。
ウォーク参加者の印となるミニ鯉のぼりを身につけ、とどろき荘内の出発式会場へ。
ちなみにミニ鯉のぼりは、加東市特産品が鯉のぼり「播州鯉(ばんしゅうごい)」をモチーフにしています。
出発式は、加東市「山田錦」乾杯まつり実行委員会石田会長の挨拶から始まります。
「自分のペースでゆっくり歩きながら、山田錦がどういう環境で育っているのかを眺めください」とのこと。
つづいて、岩根正加東市長からの挨拶。
東条産山田錦の素晴らしさについて力説いただきました。
この後、注意事項の説明があり、いよいよ出発です
昨年は、歩いている途中に雨が降り出し大変でしたが、今年の空は青く澄み渡り、ちょっと暑いかなといった印象です。
しばらくすると全国の有名酒蔵の幟がはためく稲田に。加東市自慢の酒米山田錦の稲田です。
稲穂が倒れかかっているところがあります。
山田錦は、食用米に比べ背が高いうえに、粒が大きいため倒れやすいのです。これが収穫のサイン「倒して倒さず」の状態。今年も立派な酒米が実ったようです。
刈り入れは、食用米より少し遅めで10月になれば本格化します。
稲田を眺めながら歩くのは、とても気持ちがいい。秋の爽やかな空気に草木の香りが感じられ、ウォーキングに最適。足取りも軽くなります。
株式会社薮営農倉庫、松沢公民館で休憩し、しばらく歩けば曽根サイフォンが見えてきました。
解説コーナーがあり、いったん歩みを止めて説明を聞きます。
曽根サイフォンは、鴨川ダムによって東条湖に蓄えられた水を加東市や小野市へとサイフォン(逆サイフォン)のしくみで送る施設です。直径約1m。この大きな水管が地上に設置してあり、谷や川、道路などを越えて水を運んでいます。
東条川疏水には大小合わせて59カ所のサイフォンが設置され、曽根サイフォンが最大のものになります。
解説コーナーでは、手作り模型を使って逆サイフォンの仕組みを紹介していました。
曽根サイフォンは、老朽化のため、数年後には改修工事が実施されるとのこと。
改修後には一部地下へ埋設されますが、施設が見学できるよう検討されているとのことで、今後に注目です。
次に目指すスポットは安政池。東条川沿いより高い場所にあるため、ウォーキングコースは山歩きの雰囲気。登り坂ということもあって、少し息があがります。
安政池では、パネルを使って紹介。戦後に拡張工事があったとはいえ、池の広さと堤の大きさから、重機がない江戸時代(安政年間1854〜1860年)に人力で作られたと聞いて驚かされます。
安政池を過ぎ、依藤野公民館の休憩所では、お茶の他に加東市産ブドウの振る舞い。ひとり3粒ですが、立派で大きな実です。
皮ごと口に含んでひと噛みすれば、プチンと弾けて甘い果汁があふれ出し、疲れも吹き飛びます。
ここからゴールまではあと4km。残り3kmあたりからは、県道564号沿いを歩きます。
行き交う車とアスファルトからのムッとした熱気。稲田のなかを歩いていた時の空気の心地よさを改めて実感できます。
残り2km、1kmを長く感じながら、乾杯イベント参加者が多くいる会場内にあるゴールに到着。
先頭集団で約2時間30分、最後の人でも3時間ちょっとのウォーキングでした。
ゴールした人から順に、お楽しみの抽選があります。
景品は、山田錦で作られた日本酒や加東市東条産のブドウ、甘酒、トートバッグなどたくさん。
加えて、山田錦で作った巻き寿司が昼食用として参加者全員に配られました。
乾杯イベント会場から早速日本酒を購入して、巻き寿司と一緒に楽しむ人など、ウォーキングの疲れを日本酒でほぐす人の姿もありました。「東条山田錦の里 探訪ウォーク」は、これにて終了。ここからは自由に「加東市山田錦乾杯まつり2025」を楽しみます。
加東市「山田錦」乾杯まつりでは、加東市産山田錦で醸した全国の名酒が集まり、購入して飲み比べることができます。会場内に、日本酒に合うグルメや酒器の販売、ステージでのトークショーなど、毎年楽しみにしている人が多い人気のイベントです。
ウォーク参加者のゴール時間に合わせて、会場内ステージでは振る舞い酒(加東市の酒蔵、神結酒造の純米吟醸酒「たましずく」)。
市長やゲストがステージにあがり一緒に「乾杯」と声をあげ、お目当ての酒蔵ブースやグルメを探して盛り上がります。
「東条山田錦の里 探訪ウォーク」は、秋の山田錦の稲田を歩く心地よさをぜひ感じて欲しいイベントで、来年も開催が予定されています。加東市の公式サイトやローカルプライムなどで8月初旬から募集する予定ですので、「来年は私も歩くぞ!」と思われた人はぜひ忘れずご応募ください。
本記事は「ひょうごフィールドパビリオン SDGs体験型地域プログラム」に認定された「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!(東条川疏水ネットワーク博物館会議)」におけるプログラム紹介記事の今年度4回目として掲載しました。今後も活動の内容など紹介していきます。
※こちらは2025年9月時点の情報です。