兵庫県の加東市観光協会主催による「山田錦の里・東条川疏水ウェルネスサイクリング」が2025年9月28日(日)に行われました。山田錦の稲穂が揺れる美しい風景が見られるこの時期だからこそ楽しめるツアーです。豊かな大地を支える東条川疏水スポットを巡りながら、約36Kmのサイクリングを楽しみます。電動アシスト付きバイクは初めてという人でもサイクルガイドが同行するので安心。同行取材してきましたので、紹介します。
集合場所は加東市観光協会。ここには、レンタサイクルやシェアサイクルのほか、自転車のメンテナンスができる設備が整ったサイクリスト御用達のサイクルステーションです。
 
	 
	レンタサイクルには、MERIDA社製のロードバイク・クロスバイク・Eバイクの他、ママチャリタイプの電動自転車が用意されていますので、身長や経験、用途に応じたものを選ぶことができます。
 
			「サイクリングに興味があるけど、何から始めればいいのだろう」という人にも優しく相談に応じてくれます。今回は、これからサイクリングを始めたい人や加東市でのサイクリングは初めてという人向けに不定期で開催されているツアーのひとつとして、東条川疏水スポットを巡ります。
東条川疏水とは、鴨川ダム(東条湖)を主な水源とした全長108Kmに及ぶ水路網で、加東市・小野市・三木市の約3,000haの農地に水を運び、水道水などにも活用されています。降雨量が少ないこの地域を悩ました水不足解消のために整えられた、大切な地域資産です。
参加者が集まれば、サイクルガイドから今回のルートや交通ルール、注意事項の説明です。
 
	自転車はもちろん、ヘルメットや水筒などは事前に用意してくれているので、自身で準備する物は手袋と運動しやすい服装、日焼け対策、念のための保険証など。特別な準備は必要ないので初心者でも参加しやすくなっています。
 
	自転車選びやサドルの高さ調整は、サイクルガイドが行ってくれます。調整しながら、サドルの高さの決め方、信号などで停車する時の姿勢、漕ぎ出す時の注意などを教えてくれます。
 
	調整が終われば、駐車場の広いところで練習です。スタート時にヨロヨロしないコツや、集団で走る時のルールなどを実践形式で練習します。
 
	30分ほど、じっくり練習したら、いよいよ出発です。
「山田錦の里・東条川疏水ウェルネスサイクリング」は、加東市観光協会を9時30分に出発し、王子ヶ池、安政池、曽根サイフォン、東条温泉とどろき荘で昼食。午後は、六ケ井円筒分水、酒米試験地を巡って加東市観光協会に戻るルートです。走行距離は、約36km。ゆっくり走る約5時間のツアーとなります。参加者は6名。3名ずつの2チームに分かれ、それぞれにサイクルガイドが1名付き先導しながら走ります。
 
			練習タイムが終われば、元気いっぱいにスタートです。
 
	スポーツサイクルに乗り慣れない者にとって公道を走るのは緊張しますが、今回のルートは車の通りが少ないところを選んであるので安心。しばらく走れば、風景を楽しむ余裕もでてきます。最初の休憩は、王子ヶ池。東条川疏水関連のため池です。
 
			高台にあるので、美しい山田錦の稲田を見下ろせます。刈り取りは10月初旬頃になりそうとのこと。
 
	休憩中にサイクルガイドから「小腹はすいていませんか?」と声かけがあり、クッキーをいただきました。サイクリング中に気をつけなければいけないのが、熱中症や低血糖症状。喉の渇きや空腹を感じる前に、こまめに休憩をとるのが重要とのこと。サイクリングを楽しむための基本を教えてくれます。
 
	次に着いたのは、安政池。江戸時代に築かれた大きなため池を昭和38年に安政ダムとして整備したものです。サイクルガイドがスポット毎で解説してくれるので、観光も楽しめます。
 
	この東条川疏水をめぐるコースで最も象徴的なスポットの曽根サイフォンに到着しました。
 
	谷や低地を越えて遠くに水を運ぶ仕組みがサイフォンです。東条川疏水には多くのサイフォンが設置されています。そのほとんどが地下に設置されているのですが、曽根サイフォンは地上にある珍しいケースのうえ最も大きく、内径94cm、延長1087mの鋼管内を毎秒1.3㎥の水が流れています。
 
	山田錦の稲穂に囲まれての休憩タイム。おやつには、山田錦の煎餅。お土産に買って帰ろうかと思う美味しさでした。
 
	休憩が終わって、昼食場所へ向けて出発です。
 
	刈り取り前の最も田が美しい季節。サイクリングを満喫できる風景ばかりです。
 
	もうすぐ昼食場所というところで、東条川に日本地図がありました。
 
	東条温泉とどろき荘に隣接する割烹成山(なるやま)さんに到着。昼食タイムです。ちなみに東条温泉とどろき荘は日帰り温泉として利用できます。割烹成山さんは、創業50年ほどの老舗料理店。地元の茶葉を練り込んだ「三草茶うどん」と、名物「成山特製巻き寿司」をいただきました。
 
			 
			茶葉の風味豊かな味わいと、のどごしの良いうどん。人気の巻きずしも酢飯の具合が絶妙でおいしくいただきました。復路は、東条川に沿って進みながら、お隣の小野市へと入っていきます。
 
	到着したのは、六カ井円筒分水(ろっかいえんとうぶんすい)。まわりに駐車場や看板はなく、徒歩や自転車でなければ行く機会の少ない場所にあります。外形14.7m、内径4mの大きな分水路。円筒分水は、水の配分を平等に行うための先人の知恵です。水路を分岐させるだけでは、平等に水を行き渡らすことが難しいため、中央から水を湧き出させることで、周囲に造った水路へ水を平等に配分しています。
 
	ここでも休憩しながら、おやつタイム。円筒分水に合わせてでしょうか、丸い大きなどら焼き。加東市社町名物で、昔ながらのやさしい味わいに、ほっこりします。
 
	 
	ツアー一行は、再び稲田の中へ。心地よい風と気温と目に映る風景のおかげで、気持ち良く走れました。
最後に立ち寄ったのは、兵庫県立農林水産技術総合センター酒米試験地。全国唯一の酒米専門の研究機関です。酒米の王者・山田錦を世に送り出して89年。その栽培試験や技術開発などが行われています。
 
	 
	酒米試験地から加東市観光協会へは、すぐ近く。出発してから約5時間。事故無く無事に到着です。
到着後は、お茶やお菓子を食べながらアンケートの記入や、1日の振りかえりをしながら談笑。出発前の緊張感から解放され、加東市の魅力や風景、自転車談義に花が咲き、時間があっという間に過ぎていきました。
同行してみた感想は、完走した達成感と心地よい疲労感で、すがすがしい気分になれました。サイクルガイドが参加者の体力を考えペース配分し、適時休憩をとりながら水分や栄養補給の大切さなど、サイクリングの基本を教えてくれるので勉強にもなり、また走ってみようかなと思わせてくれます。
サイクリングは、ウォーキングやランニングとは違う全身の筋肉を使うものなのだと、改めて実感。ツアー翌日に執筆している筆者も、毎日のウォーキングである程度は鍛えているつもりでしたが、なかなかの筋肉痛に見舞われています。
 
			美しい風景を眺めながら、水資源の大切さなどを学び、心も体もリフレッシュできる良い体験になりました。まさに、加東市の自然・歴史・食文化をまとめて体感できるウェルネスガストロノミーツアー(地域の気候風土が生んだ食文化を体験しながら、心身の健康も追求する観光の形)でした。
今回は、不定期開催のツアーでしたが、加東市観光協会では様々なサイクルツアーメニューを用意されています。レンタサイクル・シェアサイクルも充実しているので、サイクリング体験をしてみたいと思ったなら、まずは連絡してみること。個人での申込も受け付けているので、どんなツアーを体験したいか相談し予約されることをおすすめします。
※ この内容は2025年9月時点の情報です。
※ 本記事は「ひょうごフィールドパビリオン SDGs体験型地域プログラム」の認定プログラム「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!(東条川疏水ネットワーク博物館会議)」におけるプログラム記事の今年度5回目として紹介しました。
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