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地域おこしの一環として2019年にオープン
『老松ダイニング』は、山崎町の中心市街地、山崎地区の「酒蔵通り」の一角にあるお店。「老松酒造」は創業250余年の江戸時代から続く酒蔵で、現当主の前野正晶さんで11代目です。江戸時代から酒造りが盛んだった山崎地区には、「老松酒造」だけでなく「山陽盃酒造」という酒蔵や、かつて醸造を行っていた「本家門前屋酒店」などが軒を連ね、重厚な建物が残る風情ある景観を保っています。
『老松ダイニング』は、地域おこしの一環として、宍粟の観光スポットの一つという位置づけで、2019年2月にオープンしました。
「新酒の季節に、遠方からわざわざ買いに来てくれるお客さんのために直売所があればいいなとは思っていたけれど、それだけでは人は来ない。発酵食はブームだったし、日本酒を造る麹を使ったダイニングがあれば、お客さんが喜んでくれるのでは、という思いでオープンしました」と女将の前野久美子さん。
やると決めたのはいいものの、母屋の子ども部屋と物置だったスペースをダイニングとショップに改修するのに大掃除。27部屋から60トンの道具などを処分したそうです。「2トン車で30杯、すごかったです。もっとお宝があるのかと思ったけどあんまりなかったわ~」と笑います。
店内には、美しい日本庭園を望むテーブル席と、あとから増設した、二間続きの仏間の客席があり、特に土日は、予約をしないと席の確保が大変だそう。
季節替わりのランチを2種類用意
『老松ダイニング』では、日本酒を造る麹そのものを使って、塩麴、醤油麹、甘酒、酒粕などを手作りし、それを調味料として料理に使っています。天つゆやしゃぶしゃぶのタレも醤油麹入りの自家製、ドレッシングやマヨネーズも自家製で、日本酒との相性は抜群です。
季節替わりで『発酵ありがとうランチ』(1,500円)と『発酵繋(つながり)ランチ』(2,200円)を用意し、繋ランチの方が、主菜のボリュームがアップします。
まずは、「食前酒」として、日本酒、もち米甘酒、果実のお酢(ビネガー)のなかから1種セレクトします。私は「もち米甘酒」にしました。自然の甘味がおいしい濃厚な甘酒です。
取材日の『発酵ありがとうランチ』の主菜は、自家製タルタルソースを添えた「酒蔵唐揚げ」です。副菜は、粉ふき芋のたらこ和え、醤油麹旨みだし豆腐、野菜のナムル、刺身こんにゃく、はりはり漬けというラインナップです。なかなかのボリュームでしょう。
「ご飯」は定番で、玄米を圧力窯で炊き3日間発酵させた「酵素玄米」です。もっちもちの食感でおいしい。
「汁もの」は「老松の酒粕たっぷりの粕汁」でもちろん定番です。
オリジナル調味料「酒蔵ゆずもろみ」(右)と「山椒もろみ」(左)も添えられていて、唐揚げをつけて食べてもおいしかったです。デザートの「玄米豆乳ヨーグルト 宍粟産りんごジャム添え」も定番です。そのほか、野菜は、地元の農家さんが発酵肥料で丹精込めて育てたものを一部使用しています。
「食べるものが人の身体を作るでしょう。身体を元気にしてくれる発酵食には興味があったんです」と久美子さん。
ダイニングと直売所を同時オープンしてから、NHKをはじめ、テレビ各局で紹介され、あっという間に「予約の取れない大人気の店」になったのです。「全部おいしかった」「今度は料理がいつ変わる?」など、料理が変わるたびに訪れる、阪神間や岡山方面からの常連さんも多いそうです。
今後は、酒粕や発酵あんこを使ったチーズケーキや、酒粕や甘酒を使ったソフトクリームなど、発酵スイーツにも力を入れていきたいそうで、久美子さんのパワーはとどまるところを知りません。
直売所で日本酒や調味料も入手できる
ダイニングの入り口手前部分に直売所があります。ここには「老松酒造」で扱うすべての銘柄が並んでいます。下の段には、商品の特徴を詳しく書いたミニカードも置かれているので、買い物もしやすいですよね。
贈答用の詰め合わせサンプルもあるので、お遣い物にもしやすくて便利。
こちらの特徴は、すべての銘柄に300mlの小瓶があるところ。これはサービスの一環ともいえるのではないでしょうか。300mlの小瓶をいくつか買って、帰って飲み比べをするにもいいですよね。
女将おすすめの3銘柄を紹介しましょう。
①「5年熟成 古酒 善次郎」~夏でもひんやりとした老松の酒蔵で5年間じっくりと熟成させた、まろやかでこくのある琥珀色のお酒です。 カルパッチョやカマンベールなど、洋食にもよく合います。明治時代に出荷量を増やした功績がある6代目「善次郎」さんにちなんで命名した酒です。
②「純米大吟醸(繋)」~山田錦を100%使い、低温でじっくり発酵させた純米大吟醸は、香り豊かで旨味がたっぷりです。皆様とのなお一層の繋がりを願い、「繋」と命名した酒です。
③「寿惠広 老松 純米吟醸酒」~兵庫県産山田錦を100%使用した純米吟醸酒。生で無濾過原酒。吟醸ならではの香りと老舗の伝統が醸す逸品で、穏やかなうまみとキレの良さが特徴です。
果実酒もラインナップしています。ネーミングにも「善次郎さん」登場でおもしろいですね。紀州南高梅を使ったうめ酒は、善次郎さんの妻なので、少し年季が入った感じ。地元宍粟波賀産のりんごを使ったりんご酒は、善次郎さんの孫なので、フレッシュさがウリなのかな?また、高知産のゆずを使ったゆず酒は、善次郎さんの娘なので、程よい落ち着いた味なのかな?と想像力が掻き立てられます。
ダイニングで使っている調味料も販売しているので、これという商品があれば買って帰りたいですね。
(ライター 歌見)
※本記事は2023年8月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
老松ダイニング/老松酒造
住所 | 兵庫県宍粟市山崎町山崎12 |
電話番号 | 0790-62-2345 |
営業時間 | 老松ダイニング11:00~14:30(LO13:30) 直売所10:00~17:00 |
定休日 | 木曜 |
アクセス | JR姫路駅北口から神姫バス山崎行きで約60分、「山崎」バス停下車徒歩8分、 中国自動車道山崎ICから約4分 |
駐車場 | あり |
HP | http://s-oimatsu.com/ |
SNS | https://www.instagram.com/oimatsusyuzou_dining/ |
ライター 歌見(うたみ)
晴れの国・岡山出身で、20代半ばで兵庫県赤穂市に移住。ライターという天職を見つけ、赤穂市内にとどまらず、兵庫五国くまなく回ることができました。五国それぞれに、独特の食文化があり、うまい酒があり…。食いしん坊の私を心身ともに潤してくれます。兵庫県の“間違いない”「食」や「人」や「イイもの」に関わる記事をお届けできたらと思っています。