『白雪ブルワリーレストラン長寿蔵』は築250年以上になる酒蔵を改装したレストラン。高い天井の広々とした空間で、見上げれば年代を感じる太い梁が使われており、日本らしい雰囲気の中で飲食を楽しめます。個室と半個室もあって大人数でも利用できるので、グループでの宴会にも重宝します。

酒蔵直営だから、お酒好きにはたまらない品揃えです。専用のケトルで高いところから注ぐ諸白づくり『淡にごり』のパフォーマンスは、場が盛り上がるだけでなく、味もまろやかになってより甘さを感じるんです。60％以上精米した超微炭酸のさわやかな味が特徴です。

いろんな味が楽しめる『飲み比べセット』は、吟醸ひやしぼり、大吟醸ひやしぼり、碧冴えの澄みきり純米、純米酒こくあがりの4種類が各50ml。すっきりした旨口揃いですが、少しずつ味が違うので、お気に入りを選ぶのに迷ってしまいます。

小西酒造は、日本でいち早く1988（昭和63）年にベルギービールの輸入販売を開始しました。現在は輸入と並行して自社でも様々な種類のビールを造っており、レストランでは新鮮なクラフトビールを味わえます。人気のテイスティングセットは、日本酒酵母と山田錦を使った「ゴールドエール」、蘭学者・川本幸民がペリーの黒船で飲んだビールを再現した「幸民麦酒」、爽やかな酸味のホワイトビール「スノーブロンシュ」、芳醇な味わいの「ブラックエール」の4種類が各100mlです。

レストランの入り口ではクラフトビール製造設備を見ることができます。

ランチはピラフやパスタ、ピザなどが人気。中でも生地とソースの両方に酒粕を加えた『酒粕ピザ』は、長寿蔵の名物ともいえる逸品です。もっちりした生地からは酒粕の豊かな風味が漂い、長芋のシャキシャキした食感も好印象。トッピングされた白雪奈良漬がアクセントになっています。他にも特製粕汁付の『自家製ローストビーフ丼』（1,450円）、や和食の『長寿蔵御膳』（1,700円）など、多彩なメニューがあります。

ディナーの人気メニューは、ベルギービールと相性抜群のベルギーの名物料理『ムール貝のワイン蒸し』。長寿蔵では国産のムール貝を特製スープとワインで蒸しあげます。ナチュラルテイストまたはガーリックテイスト、どちらかお好みで選び、セロリとともに味わいます。コース料理や、クラフトビールが飲み放題のパーティプランなど、シーンによって様々なメニューがありますよ。

牛肉のビール煮込み、「カルボナード」もベルギーの郷土料理です。ビールに香味野菜や牛の出汁や黒糖を加えたソースでじっくり煮込んだ肉は、ほろほろとほどけるようにやわらかく、風味豊かなソースも味わい深いのです。

敷地内の別棟にあるショップには、ずらりとお酒やビール、おつまみが並んで、その品揃えにわくわくします。『白雪 樽酒』は、吉野杉の樽で造られた樽酒が持ち運びしやすいカップに入っており、きりっとした樽香が残る、ほんのりとした辛口が特徴です。

精米歩合や仕込みの状態によって、様々な味が楽しめる白雪ブランドの日本酒。定番の味に季節の味、サイズも小瓶から一升瓶まであるので、好みや用途によって選べます。

蔵元の小西家に伝わる江戸から明治の酒造り記録『酒永代覚帳（さけえいたいおぼえちょう）』のレシピを2年の歳月をかけて紐解き、復活させた『江戸元禄の酒』。現代の酒米の王者、山田錦を使って、精米歩合88％、仕込み水は現在の約２分の１にし、木桶でじっくりと発酵させたお酒です。琥珀色の純米原酒は、ロックや水割り、お湯割りでおいしくいただけます。

清酒発祥の地、伊丹をリスペクトしたネーミング『伊丹諸白』は、芳醇な味わいで、おでんや鍋料理に合う、やや淡麗でやや辛口のお酒です。

思わず手にとってしまうキュートな色合いのボトルは、通称スパカリというスパークリングのお酒です。hop（ピンク）はポリフェノールを含んで爽やかな苦味とライチのような香り。Kaoru(ブルー）はリンゴに似た吟醸香が特徴のほんのり甘いお酒です。

日本酒酵母で仕込んだ『ITAMI BEER（イタミビール）』はクラフトビールの先駆者、小西酒造ならではの味。独自のボトル熟成方式のため常温で持ち運びできます。ボトルデザインが映えると、若い人にも人気だそうです。

ベルギービールの多彩な味はファンが多いもの。トラピストビール、デュベル、ヴェデットなど、メジャーどころからレアな輸入ビールまでたくさん並んでおり、地方発送も可。いろんな味を試してみたくなりますね。

ビールの種類によって適した形のグラスがあります。形、大きさともに様々な種類のビールグラスがここで買えます。

日本酒の副産物である酒粕で作る粕漬はおつまみにもごはんのお供としてもおいしいですね。キュウリ、スイカ、ダイコンなど、贈答品にしても喜ばれます。

酒粕を使ったお菓子やドレッシング、スプレッドなどのお土産も。酒粕の風味が加わると味に深みが出て、お酒が飲めない人もその味わいを楽しめます。

レストランの２階はミュージアムになっており、自由に見学できます。ひときわ目を引くのが、ケヤキの一枚板に書かれた「白雪」の文字。これは、国史「日本外史」を著した儒学者頼山陽が書いたもの。頼山陽は、小西家と親交が深く度々伊丹を訪れていたそうです。

昭和の時代まで使われていた、樽や桶などの酒造りに欠かせない道具が展示されています。映像や展示は英語対応もあるので、海外からのお客様と一緒に行く際も喜ばれます。

「伊丹諸白」の諸白とは、お酒造りに使う麹米と掛米、両方に白米を用いる製法のことです。現在の清酒はこの造り方ですが、かつては白くにごった「濁り酒」、今でいう「どぶろく」が主流でした。透明の澄んだ清酒が初めて造られた伊丹は清酒発祥の地といわれ、「伊丹諸白」の製法が確立し、樽廻船に乗せられて江戸に運ばれ、一大人気となったのです。

伊丹市には、『白雪長寿蔵ブルワリービレッジ』『旧岡田家住宅・酒蔵』の他に、『有岡城跡・伊丹郷町跡』、『鴻池稲荷祠碑』といった日本遺産の構成文化財があります。伊丹のまちをゆっくり散策するのもいいものですね。

（ライター　松田／ウエストプラン）