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「KOBEとんぼ玉ミュージアム」が語り継ぐ、阪神淡路大震災への想い
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阪神淡路大震災とKOBEとんぼ玉ミュージアム
2023年1月17日で、阪神淡路大震災から28年を迎えます。
当時1歳の私は、徳島市で震度4の揺れを体験しましたが、 両親の話によると、震源地から距離があるにもかかわらず、かなりの揺れだったと言います。
阪神淡路大震災によって人生がガラリと変わった方は多数いらっしゃるかと思いますが、 神戸は旧居留地に位置する「KOBEとんぼ玉ミュージアム」の館長である 宮本恭庸さんもそのうちの一人です。
——震災がなければ、いまの自分はなかった。とんぼ玉と出会うこともなかった。——
と宮本さんはこれまでの人生を振り返ります。
KOBEとんぼ玉ミュージアムは、とんぼ玉をはじめとする古代から現代までのガラス作品約2000点を展示した私設の美術館です。
館内に展示エリア以外に体験工房があり、自分だけのオリジナルとんぼ玉制作体験ができると、地元の方や国内外の観光客(老若男女、とくに女性やお子様に大好評)に親しまれています。
「とんぼ玉ミュージアム」というネーミングから、とんぼ玉に特化した美術館かと思われがちですが、とんぼ玉だけでなくマーブルという作家の個性あふれる模様を封じ込めた球体状の作品、古代エジプト当時の技術で作られたガラス作品、精巧なガラス細工の生き物たちなど幅広く展示されており世界中のガラス細工ファンから聖地のような場所として絶大な支持を集めるミュージアムなのです。
なぜ宮本さんはミュージアム開館に至ったのでしょうか。
宮本さんは、ご実家が経営されていた飲食店で勤務していましたが、 1995年1月17日、震度7の揺れが神戸市中央区を襲い、店舗は全壊してしまいました。
しかし震災被害に屈することなく、宮本さんはその跡地でアート・工芸品を扱うセレクトショップの運営を始めます。それが、“小さなガラスにアーティストそれぞれの世界・宇宙が表現された”とんぼ玉に魅了されていくきっかけとなりました。
さらに、とんぼ玉をはじめとするランプワークといわれるガラス工芸の魅力を「観る」「学ぶ」「創る」「買う」など多面的に発信したいと思うようになり、 阪神淡路大震災から10年を迎えた2005年に、「ガラス工芸を通して再生・創生の願いを発信する美術館」として開館したのです。
KOBEとんぼ玉ミュージアム 震災復興への取り組み
KOBEとんぼ玉ミュージアムでは、
震災を機に開館したミュージアムとして、
震災への思いを伝え続けるため以下のような展示・取り組みを行ってきました。
たとえば、
国内外から寄贈された、復興への思いを込めたガラス作品を常設展示したり、
アーティストを招き、鎮魂のメッセージを込めたガラス作品を制作実演していだだいています。
また、毎年1月の期間限定で、東遊園地にある「1.17希望の灯り」の分灯を、
ガラスを溶かす際に使用する火として用いたとんぼ玉制作体験を受け付けています。
(売り上げ1個につき100円を、NPO法人阪神淡路大震災『1.17希望の灯り』に寄付)
ある日、震災でお母様を亡くされた方が来館されたことがありました。
その方は「1.17希望の灯り」で制作したとんぼ玉をネックレスとして仕立て、
身に着けることで常にお母様へ思いを馳せることができる、と感激して帰られたそうです。
「1.17希望の灯り」とは
東遊園地にある「1.17希望の灯り」について知っていただきたいと思います。
東遊園地は、日頃から神戸市民の憩いの場としてだけでなく、「神戸ルミナリエ」や「阪神淡路大震災1.17のつどい」など震災関連行事の会場としても利用されている神戸市中心部の公園です。
その敷地内に、震災犠牲者の慰霊、市民への励まし、災害に対する復興の意義を世界に発信することを目的として、2000年1月16日に「慰霊と復興のモニュメント」が設置されました。
「慰霊と復興のモニュメント」建設に際して、ご遺族やボランティアの方々から、「やさしさ」、「思いやり」、「生きている証」としての灯りを灯したいとの提案があり、「1.17希望の灯り」が誕生しました。
ここには、被災10市10町を巡って運んだ種火と47都道府県から寄せられた種火を一つにした灯りが灯されています。
「1.17希望の灯り」には碑文が刻まれ、「あの震災で亡くなった方々の命と生き残った私たちへのメッセージ」を発信し続けています。
次世代に記憶を繋げる
「慰霊と復興のモニュメント」や「1.17希望の灯り」は、
震災の犠牲になってしまった方への鎮魂としてだけでなく、
残された我々にとっても「命」や「大切な人」について考え、
かけがえのないものを守るために私たちは日々なにができるのか、なにをすべきなのか、
示唆を与えてくれる重要な役割を持っていると私は思います。
しかしながら、目まぐるしく物事が変わる現代社会を生きる我々は
どうしても日々の中でそのことを意識して生きることが困難です。
だからこそ宮本さんのような、悲劇を悲劇のままふたをせず
我々に伝え続ける語り部が必要なのです。
宮本さんは、阪神淡路大震災をきっかけとして誕生したとんぼ玉ミュージアムの館長として、震災に関わる人々の想いを心に灯し続けていこうとされています。
さらに、震災の記憶の風化を留めるよう常時発信することが必要と考え、
「1.17希望の灯り」の分灯を使ってのとんぼ玉制作体験と、
宮本さんによる震災体験の講話を、通年で実施できるよう構想を練っています。
(条件が整い次第、Local Primeでも予約受付を開始いたします)
戦争体験と同様に、過去の悲劇を語り継ぐ存在がいなければ、
彼らの想いは風化し、忘れ去られてしまいます。
宮本さんは2022年末から24歳の次男に、
自身が創り上げたミュージアムとこれまでの取り組みを引き継いでいこうとされています。
次世代に想いを繋いでいく。
彼らのような若者が、震災を乗り越えた神戸のこれからを担っていくために。
宮本さんは、1月17日に限らず常日頃から震災について考えるきっかけを
とんぼ玉制作体験や、作品展示など様々な形で、私たちに与えてくださっています。
ぜひ一度、「KOBEとんぼ玉ミュージアム」にお越しいただき、
ガラス細工に込められた彼らの想いに触れてみてください。
KOBEとんぼ玉ミュージアム
住所 〒650-0034兵庫県神戸市中央区京町79番地日本ビルヂング2階
アクセス 各線 三ノ宮(神戸三宮)駅、元町駅より徒歩8分
シティーループ「京町筋」「旧居留地(市立博物館)」バス停より徒歩2分
開館時間 10:00〜19:00(最終入館18:45まで)
休館日:年末年始 12月31日~1月2日
バイヤー SHUN
1993年、徳島県生まれ。大学卒業を機に兵庫県に移り住んでいます。好きなものは90年代JPOPで、spitzを崇拝しています。最近の悩みは、ウケを狙ってボケたことよりもウケるつもりのない行動で笑いをとってしまうことです。兵庫県民とはまた違った視点から兵庫県の魅力を紹介できればいいなと思っています!