一般社団法人加東市観光協会が企画した「東条川疏水とグルメと銘酒を味わうツアー」が2026年2月5日(木)と6日(金)に開催されました(後援:東条川疏水ネットワーク博物館)。
本ツアーは、北播磨の水資源を守る東条川疏水と加東市の歴史や風土にふれ、料理旅館「滝寺荘」のおいしい料理と加東市特A格付け酒米「山田錦」を使った銘酒を味わう企画です。
6日(金)に開催されたツアーに参加してきましたのでリポートします。
兵庫県加東市には多くの魅力があります。なかでも、グルメでいえば酒米の王様と呼ばれる「山田錦」。最上位格付け「特A地区」に指定された産地です。観光ならば、名勝「闘竜灘(とうりゅうなだ)」。1級河川加古川の川幅いっぱいに広がる岩場を抜ける豪快な川の流れが見ものです。
「東条川疏水とグルメと銘酒を味わうツアー」では、闘竜灘の景観を眺められる料理旅館「滝寺荘」にて加東市自慢の山田錦を醸した銘酒と兵庫の幸を味わいます。最高峰の酒米作りに欠かせない水の話や加東市に伝わる歴史物語の講演、おいしい料理と日本酒の飲み比べをした後には、酒蔵見学や試飲、道の駅での買い物タイムもあり、加東市の魅力を存分に感じられる企画になっています。
2月5日(木)は姫路発加古川経由で参加者を募り、6日(金)は明石発神戸経由の日程。参加したのは6日に行われたツアーで、朝8時30分に明石駅前に集合。神戸駅前を9時30分頃に出発し、加東市へと向かいました。
途中にトイレ休憩をはさみ、ミシュランにも掲載されている料理旅館「滝寺荘」に到着。名勝闘竜灘に隣接する滝寺荘は、絶景を眺めながらの食事やお部屋でくつろげる料理旅館です。
(ここからは、兵庫県立社高校の2年生4名が加東市観光協会へのインターンシップで合流しています)
ここ闘竜灘は一級河川加古川のちょうど中央あたりに位置します。下流は高砂で播磨灘まで約50km。上流は日本で最も低い位置(標高約95m)にある分水嶺「石生の水分れ(いそうのみわかれ)」まで約50km。
舟運が盛んな江戸時代には、岩場を舟で通れなかったため、荷の積み替えをする人夫であふれ、たいそう賑わったそうです。
お楽しみのグルメの前に、2時間ほど東条川疏水と加東市について学びの時間です。
まずは、美味しい日本酒づくりに欠かせない酒米産地の水事情と東条川疏水について、加古川流域土地改良事務所からの解説で始まります。
東条川疏水とは、全国的にも雨量の少ない北播磨地方に巡らされた水路網です。戦後の食糧難を解消すべく建設が始まり、現在では約3000haにおよぶ農地の農業用水や飲料水などに活用されています。
「東条川疏水ネットワーク博物館」は、大切な東条川疏水を次世代に引き継ぐため、今ツアーの後援をはじめ、鴨川ダムの見学会などさまざまな活動をしています。ローカルプライムでも何度か紹介しているので、気になる人は過去記事を参照ください。
続いて「酒米「山田錦」を愛する会」の中前さんから東条川疏水の重要な施設である安政池についてお話いただきました。「酒米「山田錦」を愛する会」は15年ほど前に結成され、自らも学びながら山田錦の素晴らしさを伝える活動をする一方、東条川疏水ネットワーク博物館の知名度向上にも積極的に取り組まれています。
お話しに続き、デジタル紙芝居「東条川疏水物語 地域を救った安政池」を上演していただきました。デジタル紙芝居は、地域の水資源の大切さを小学生にもわかりやすく伝えるために制作され、加東市内の小学校に地域教材の一つとしてCDを配布されています。
安政池は、江戸時代に干ばつで悩まされた村人たちが自ら造りあげた造成池がはじまりです。安政3(1856)年2月に完成したことから「安政池」と名付けられ、当時の苦労がデジタル紙芝居としてよみがえりました。
観賞後、その出来栄えには参加者からも「わかりやすかった」との声がありました。内容もよく調べられてあり、驚くばかり。
制作者の中前さんにお話を伺うと、情報集めやヒアリングを含め1年半ほどの苦心の末、完成されたそうです。デジタル紙芝居は、パソコンとプロジェクターさえあれば、どこでも上演できる(少人数ならパソコンだけでもOK)ため、地域の児童たちだけにとどまらず、多くの人に見てもらえる機会が増えそうです。
最後に、加東市観光協会の阿江事務局長から加東市の観光案内と地域に伝わる源平合戦についての話がありました。
源平合戦といえば、一ノ谷の戦いや鵯越の逆落としなどが有名ですが、ここ加東市は前哨戦となる三草山の戦いの舞台となりました。
平氏の拠点・福原(神戸)を攻めるべく、源氏方は軍を2つに分け進軍。西から攻めるのは丹波路を進む源義経。これを迎え撃つ平家方は三草山の西に布陣するも、義経の夜討ちにあわてふためき敗走するという戦いでした。 源氏を勝利へと導く記念すべき地が三草山のある加東市なのです。
加東市観光協会からいただいたパンフレットなどにも義経や弁慶をデザインしたものがあり、伝承の地をめぐるルートなどが紹介されています。
食事会場に移動し、楽しみのグルメタイムです。
席に着けば、飲み比べ用の日本酒が5種類。ツアー案内には「銘酒を約1合半」とありましたが、それよりもかなり多そうです。日本酒好きにはたまりません。
向こう側に並べられた大きめのグラスの2種は、大七(福島県、大七酒造)と小澤(兵庫県姫路市、壺坂酒造)。加東市産の特A地区山田錦のみで醸された特別な純米酒です。
手前側は、浦霞(宮城県、佐浦)、龍力(兵庫県姫路市、本田酒造)、闘竜灘(兵庫県加東市、神結酒造)。加東市産山田錦100%の純米大吟醸です。
滝寺荘おすすめの日本酒だけあって、どれも食中酒としてピッタリ。香りが高く、口当たりや余韻に個性があり、同じ加東市の酒米でありながら、こうまで違った味わいになるのかと日本酒の奥深さを実感しました。
ちなみに日本酒なしでの参加もでき、個別にビールを頼まれる人、日本酒1合だけ注文し友達とシェアする人など思い思いのスタイルで楽しまれていました。
日本酒だけではなく、料理についても紹介しておきましょう。
着席時、テーブル上には先付や刺身(カルパッチョ)などと一緒に、黒田庄牛のすき焼きが置かれていました。これだけでもワクワクしてきます。
そして、温かい鰻の蒸し寿司が登場。宴の始まりです。
加東産山田錦の銘酒を一口一口味わいながらいただきます。
甘鯛の蕪蒸しやサワラの西京焼き、ふろふき大根。日本酒に合わないはずはありません。ついついお酒がすすみます。
あっという間にお酒もなくなり、ご飯へ。鯛ご飯に鯛のアラの吸い物と贅沢な内容。デザートまでしっかりといただきました。
参加者からも「料理がとてもおいしかった」「味付けが日本酒にもピッタリ」などの声があり「(名物の)鮎のシーズンにまた来たい」と満足されていました。
ちなみに闘竜灘では、毎年5月1日に鮎漁が解禁になります。
食事が終われば、酒蔵見学です。
闘竜灘の少し下流、バスで5分くらいの場所に神結(かみむすび)酒造があります。徒歩でも20分ほどで行ける場所です。
神結酒造の創業は明治26(1893)年。加東市唯一の酒蔵で酒米山田錦の産地の中にあるというだけでも見学が楽しみになります。
蔵は、創業当時の姿を残しており、今では少なくなったホーロー製のタンクがずらりと並んでいます。
酒蔵見学ができるのは、酒造りが盛んな冬場でも1月中旬〜3月初旬の限られた時期です(一般の見学受付には、事前連絡が必要になります)。 時間によって見学できる内容は異なり、この日はできたばかりの麹(こうじ)を見せてもらい、少し味わわせてもくれました。
甘く旨みのある味わい。これが酵母と同じ容器内で一緒になって平行複発酵(酒米の糖化と糖の発酵を同じ容器の中で同時に行う)することで、日本酒が造られていきます。言葉だけではなく体感できる見学は貴重なものでした。
見学が終われば、試飲が用意されていました。 滝寺荘でもいただいた「闘竜灘 大吟醸」とこの季節だけ味わえる「しぼりたて 冬の虹」、麹から造ったノンアルコールの甘酒の3種類。酒蔵での試飲はバスツアーだから楽しめる醍醐味といっても良いのではないでしょうか。
神結酒造には、直売所が併設されているので購入もできます。試飲した日本酒以外にも原酒やにごり酒、発泡系など飲んでみたい日本酒がいろいろあります。酒粕の販売もあり、ツアー参加者の多くが購入されていました。
直売所は、日本酒造りが盛んな時期(11月〜3月)は月曜日から土曜日、その他の季節は月曜日から金曜日に営業されています。
酒蔵見学が終われば、最後の立ち寄り先「道の駅とうじょう」でお買い物タイムです。
道の駅とうじょうには、加東市産山田錦などを使用した全国の酒蔵の日本酒が並ぶコーナーがあります。
酒蔵見学が終われば、最後の立ち寄り先「道の駅とうじょう」でお買い物タイムです。
道の駅とうじょうには、加東市産山田錦などを使用した全国の酒蔵の日本酒が並ぶコーナーがあります。
加東地域以外ではめったに見かけない商品もあるので、日本酒好きなら特に立ち寄る価値ありの道の駅です。
他にも新鮮な野菜や果物などあり、いつ訪れても楽しめます。
おいしいグルメと加東市の魅力が詰まったバスツアーを紹介しました。
東条川疏水を知ってもらうため「ひょうごフィールドパビリオン」の体験プログラム「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!」の一環として開催されたモニターツアー。前年も好評で、今回参加された人のうち半分近くがリピーター。満足度の高さを証明するツアーで、帰り際には「来年も案内くださいね」の言葉が添乗スタッフにかけられていました。
参加した筆者も心地よい満足感と酔いも加わり、幸せな1日となりました。出会った加東市の人々の笑顔と楽しんでもらいたいという心遣いが大いにプラスされた結果であることは疑う余地無しです。
次回開催情報や加東市のイベントについては、加東市公式サイトやSNSをフォローして探してみてください。
(写真・文:塚本隆司)
※2026年3月時点の情報です。