防波堤の先、つまりここは西宮の中でも一番海に近い場所。昭和40年代、西宮市がコンビナートを誘致して埋め立てようとしたところ、住民の激しい反対運動が巻き起こって、その結果生き残った「阪神間で唯一の砂浜」がある辺りです。

あの交通量の激しい喧噪の国道43号線からほんの1キロちょっと走っただけで、ここまでリゾートな景色になるとはなかなか不思議な感じではあります。そんなマリーナな雰囲気の中に建つアメリカンなライダースカフェ、インザシー。店主のJackey Maiさん曰く、「お店のコンセプトはROCK’N’ROLLとmotorcycle！！」なんだそうです。

18時、お店がオープンすると程なくあちらこちらからバイク乗り達がやって来ます。排気量の大小、メーカー、国産も外車も様々なバイクが集まります。

一口にオートバイ乗りと言っても、例えばハーレーに代表されるアメリカンな方々からドゥカティやアプリリアなどのヨーロピアンかっ飛びの皆さん、BMWフル装備のツアラーさん、旧い国産バイクを愛でる渋いおじさま達、最近台頭しているカブ主の皆さんなど、実にたくさんの流派があります。そしてライダーズカフェというとそういった流派のカラーというか、特定の層が集まるというイメージがあるのですが、インザシーはこの辺りとてもまんべんなく良い感じで混ざってるんですね。

海上コンテナがベースのお店はカウンターと小さなテラス席、後奥にテーブルのある隠れ家的な席があります。基本的に外とイケイケになったオープンなお店ですから、バイクのお客さんが来るとすぐにわかります。常連さん同士はきっと、排気音で誰が来たかわかるんじゃないでしょうか。

カフェバーですが、バイクやクルマで来る人が多い（ていうか、この立地ですから公共交通機関で来る人はあんまり居ないんじゃないでしょうか）ので、ノンアルコールメニューが充実しています。カウンターに座って、とりあえずお店の名前の「インザシー」を頼んでみました。まさに海を思わせる綺麗な色のノンアルコールカクテルです。そして、見た目の通り爽やかでおいしいです。

インザシーはカフェバーですが、フードメニューが充実しています。品数が多いという意味ではなくて、ボリュームが充実してるんです。だいたいバイク乗りというのはよく食べる人が多い気がするのですが、そんなライダーの視覚嗅覚に真っ正面から飛び込んでくる、つまり「肉！」ですね。肉系の食べ物がしっかりと食べられるんです。

レギュラーメニューは油淋鶏、そしてサイズが選べるステーキ丼。ノーマルは160gで1,000円、メガステーキ丼は350gで2,000円、その上のワンポンドステーキ丼は500gで3,000円です。全て税込み、実にシンプルな値付けですね。
さらに、その日によって日替わりのメニューがあります。ローストビーフとか牛タン、とんかつ、チャーシュー麺など、どれも魅力的です。

ちなみにこの日はビーフカツがありました。このボリュームで1,000円です。これは食べないわけにはいきませんよね。

現在は基本的に18時からの営業ですが、マイさんの助っ人あにーちゃんが入れる日はランチ営業もしています。その時には特製のプリン（600円）もあります。しっかり堅めの焼きプリンでとてもおいしいです。さらに予約限定メニューで1,100ccの「リットルプリン」（3,000円）もあります。プリン好きとしてはこれ、一度体験しておきたいところです。プリンなんてもう、なんぼあってもいいですからね。

また、もう一つインザシーの顔があります。お店でチームを組んで、レース活動をしているのです。どんなレースかというと、カブです。あの世界最高のビジネスバイク、カブばっかりで戦うレースなんですね。
筆者は以前、このカブのレースを取材したことがあります。カブにはあんまりレースのイメージはないかも知れませんが、しかしこれがなかなか本格的で思いっきり盛り上がるんですよ。

だいたい何か乗り物、人が乗って動くものがあれば、そして二人以上居れば、そこで競争が始まるんですよ、きっと。イギリスやアメリカでは乗用の芝刈り機でレースが行われていて、時速200キロの芝刈り機をホンダが作ったとかありますし、日本ではコマ付きの事務用椅子で速さを競う大会もありますし。なのでカブ乗りが居ればそこでレースが始まるのはきっと自然で健全なことですよね。
ちなみにレースの日は、インザシーはお休みです。

西宮のシーサイド、潮風に吹かれながら「肉」を食べる。街から近い穴場スポットで過ごすちょっと非日常な夜はいかがでしょうか。

（ライター　小嶋）