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地域に根ざしたお菓子屋さん
「五層もなか本舗」は、1958年創業のなかの株式会社が掲げる屋号。JR播但線京口駅からほど近く、民家が並ぶ静かな路地に本店を構えます。
「近所の方が気軽に立ち寄っておしゃべりできる憩いの場なんです」と真衣さん。取材の日も常連さんが次々と訪れていました。お店の人と何気ない会話を交わして笑顔で帰っていくようすに、地域に根ざしたお店ならではのあたたかさを感じます。
「よい素材でよいものを届けたい」との思いでお菓子づくりに取り組む同店の銘菓を、一つずつ紹介していきましょう。
姫路城を食べちゃおう!雄大なお城がかわいらしいもなかに
姫路城の五層の大天守を模した『五層もなか』は、昭和の大改修を記念し、真衣さんの祖父である現会長によって生み出されました。
封を開けると、もなか皮の香ばしい香り。すぐにでも頬張りたくなりますが、まずはその姿をじっくりご覧あれ。屋根や窓など細部まで再現されており、世界遺産の名にふさわしく自立するんです。
佐賀県産ひよくもち米を使って手焼きしたさっくりと香ばしい皮に、北海道産小豆でつくる上品な甘さの粒あん。口に入れた時の一体感がたまりません。あんの中からぽこっと顔を出す刻み栗が、風味と食感のアクセントになっています。
もなか専用に独自製法で炊き上げるというあん。二代目である社長が「時代にあわせて甘さ控えめに」と砂糖の配合を工夫し、この味にたどりつきました。
お椀に割り入れお湯を注げば、おしるこに。皮がもっちりとした食感に変身し、食べごたえがあります。
眺めて、香って、食べて。かわいいお城を五感で堪能してくださいね。
あの白さをもう一度!地元高校生とコラボした新感覚モナカ
平成の大修理時には、こんなもなかがつくられました。しっくいが塗り替えられ白くなったお城をイメージした、その名も『城白(しろしろ)モナカ』。県立姫路商業高校とのコラボ商品で、学生のアイデアを取り入れながら試作を繰り返し完成したそうです。
まっしろな皮の中には、チーズを練り込んだ白あんが。食感を楽しめるホワイトチョコチップも加え、とことん白を追求しました。まろやかな甘さと新感覚の味わいが若い人や女性に人気なのだとか。
改修当時、その愛称「白鷺(しらさぎ)城」をもじって「白すぎ城」と呼ばれた姫路城。すでに8年が経ち“白すぎ”ではなくなりましたが、城白モナカがあの時の白さを物語ってくれています。
10月下旬から5月上旬までの期間限定。桜のシーズンには桜あんが登場します。
どっしり重厚な石垣をふんわりどら焼きで表現
五層もなかがお城の大天守を模したお菓子なら、『姫路ロマン』は石垣をイメージした和洋折衷どら焼きです。たまごをたっぷり使った生地はふんわりやさしい口あたり。ほどよい甘さの粒あんとクリームが調和し、ここでも刻み栗がいい仕事をしています。
あれっ、石垣はどこに?そう思ったあなた、生地をよく見てください。焼き目が石垣模様になっているんです。この焼き目、火加減や焼き時間で大きく変わるため、同じ模様を出すには微調整が欠かせません。
また、あんは洋風な味わいにマッチするよう、もなかとは異なる製法でつくっており、お菓子づくりへの探究心が感じられます。
素材の風味を生かした姫路ロマンも好評です。「抹茶」は、生地とクリームに抹茶を練り込み抹茶もちをサンド。オリジナルブレンドのコーヒー豆「姫路コーヒー」を使用した「カフェラテ」は、コーヒーのほろ苦さと粒あんの甘さが絶妙に重なります。
ほかに、安富町産のゆずをふんだんに使ったさわやかな味わいの「ゆず」も。
子どもや女性はもちろん、男性客のファンも多いという姫路ロマン。 重厚な石垣をどら焼きで表現するセンスに脱帽です。長い歴史をもつ城下町のロマンに浸りながら召し上がれ。冷凍してアイスどら焼きにしたり、オーブンでカリッと焼いたりするのもおすすめですよ。
サクサクの瓦煎餅にオリジナルの焼き印はいかが?
大天守、石垣ときたら最後は瓦。姫路城の瓦の形を煎餅にした『姫路城瓦煎餅』は、ほんのり甘いたまご煎餅。
瓦煎餅といえば硬いイメージがありますよね?本物の瓦ほどでなくても、かぶりつく時はちょっぴり覚悟がいりますが、同店の瓦煎餅は年配の方や子どもでも食べやすいサクサクの歯ざわりが自慢です。
一枚ずつ手押しされた美しい姫路城の焼き印も味わい深いですね。
瓦煎餅にオリジナルの焼き印を入れることもできます。会社の記念品や個人でのお祝いの品などにオーダーする人が多いそう。似顔絵を入れて名刺代わりに配る、なんていかがでしょうか?
チョコとせんべいが出会い、新たな姫路名物が誕生
そんな瓦煎餅とチョコレートが出会い、このほど新たな商品が生まれました。チョコがけせんべい『チョコ-sen(せん)』です。姫路市が、かねてから連携協定を結んでいる昭和女子大学と商品を共同開発するにあたり、五層もなか本舗が商品化を任されることに。真衣さんも開発に加わり、できあがったチョコ-senは3種類。
「ミルクチョコ」はアーモンドスライスと玄米パフが入って香ばしく、姫路城をイメージした「ホワイトチョコ」は、カラフルチョコをトッピングしてレトロな雰囲気を演出。
姫路産のいちごパウダーを使用した「イチゴチョコ」には、波乱の人生を歩んだ戦国時代最後のヒロインとして知られる千姫がデザインされています。いちごダイスとピスタチオをあしらった華やかな見た目もさることながら、いちごの芳醇な香りと甘酸っぱい味わいにうっとり。
チョコのまろやかさとせんべいのサクッとした食感が相性よく、両者の出会いに運命を感じます。
パッケージは心ときめくピンク色で、お土産にもぴったり。真衣さんは「チョコせんが当店を知ってもらうきっかけになれば」と話します。
姫路城が世界遺産に登録されてから30年を迎える今年。姫路名物としてはもちろん、周年記念のお菓子としても話題になりそうですね。
地域とのつながりを大切に、新たな魅力をプラスする
お城とともに歴史を刻んできたといえる五層もなか本舗。誕生当時から変わらず愛されるお菓子は、時代にあわせて改良が重ねられ今に至ります。そして新たに仲間入りしたお菓子もまた、この先長く愛されることでしょう。
今後も、コラボ商品や地元産の素材を使った商品の開発に挑戦していくという真衣さん。「世界遺産を抱くまちで育ち、この仕事をさせてもらえてるって、すごいこと。若い人たちを巻き込んで新しい商品をつくり、地域を盛り上げていきたいです。それがわたしにできる地元への恩返しだと思うから」と目を輝かせます。
祖父母と父が築いてきた伝統に、真衣さんがどんな魅力をプラスしていくのか楽しみですね。
(ライター ながら)
※本記事は2023年3月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
なかの株式会社 五層もなか本舗
所在地 | 姫路市幸町71 |
電話番号 | 079-284-2525 |
営業時間 | 8:00~17:00 ※記事で紹介した商品はJR姫路駅前ピオレ姫路お土産館でも購入できます (8:30~20:00) |
定休日 | 年中無休 |
アクセス | JR播但線京口駅より徒歩約5分 神姫バス『神屋町』バス停 下車 徒歩2分 |
駐車場 | あり |
URL | http://goso.co.jp/ |
ながら いつこ
あんこをこよなく愛するフリーライター。生まれも育ちも兵庫です。魅力ある人や食をメインに取材・ライティングをおこなっています。お気に入りのおやつのようにじっくり味わいたくなる記事をお届けします。