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目じるしは杉玉のある長屋門
国道43号沿いにある『神戸酒心館』は、昔ながらの酒蔵の雰囲気を残す重厚な門構えです。この長屋門の軒下には蔵元の象徴ともいえる杉玉(酒林)が吊るされています。最近は飲食店のディスプレイに見ることもありますが、もともとは新酒ができた目じるしに吊るされるもので、吊るされた時は緑色のそれが、時間を経て茶色に変わり、1年後に新酒ができたら新しいものと取り替えられるのがならわしでした。
庭に展示されている大きな桶のベンチは、絶好の記念撮影スポット。これは、かつて日本酒の仕込みに使われていた桶で、1つが32石(6キロリットル)入る大きさです。現在では木製ではなく、温度管理をしやすいホーローのタンクが使われています。
この地域は1995年の阪神淡路大震災で、酒蔵のほとんどが倒壊し、『神戸酒心館』も例外ではありませんでした。再建にあたっては、江戸期から続いた震災前の街の景観を思い出させるように、主に古材を使って建築。使い込まれた木材のぬくもりが感じられる建物も必見です。
日本の里山を思わせる庭園にあるのが、日本酒と和食が楽しめる蔵の料亭「さかばやし」です。メニューは季節の和食や自家製蕎麦、もちろん『福寿』の日本酒も多種類用意されており、お酒とお酒に合う料理を堪能できます。
「さかばやし」で『福寿』のお酒と和食を味わう
重厚な雰囲気かつ和の情緒が漂う店内は、広い客席の奥に個室があり、グループでゆっくり食事を楽しめます。個室に用いられているテーブルは、震災で倒壊した酒蔵の木材やお酒を搾る酒槽の木材を再利用しています。
2階は天井にある大きな梁が印象的な食事スペースで、靴を脱いで上がり、テーブルと椅子席で飲食ができます。団体での会食にも利用できるので詳しくは問い合わせを。
ランチメニューは自家製胡麻豆富や季節の野菜を使った多彩な内容がそろいます。各種のお膳料理や月替わりの会席料理のご飯は、旨みのある但馬の棚田米こしひかり。味噌汁の味噌は地元の六甲味噌を使って滋味豊かな味わいです。
自家製蕎麦は、こだわりのダシと楽しめる細めの蕎麦。お酒が飲める人は、『福寿』の純米酒がついた『酒そば』がおすすめです。ひと口目の蕎麦にお酒を少しかけると蕎麦の香りがふわりとたちます。ふた口目からはダシをたっぷりつけていただきます。このダシは、昆布と鰹、干し椎茸でとったダシを一晩寝かせてマイルドにしたもの。蕎麦に絡んだダシの旨みが口の中に広がります。蕎麦と日本酒の相性の良さは、日本酒好きにはたまりませんね。
日が暮れてからの「さかばやし」のシックな雰囲気も素敵です。夜は一品料理も豊富なので、好きなお酒に合わせていろいろ注文して、シメに蕎麦を食べるのもいいですね。「さかばやし」では、自社の酒粕を料理に使う「酒粕プロジェクト」を展開中で、様々な料理に新鮮な酒粕を使っています。写真の『ホタテ貝の酒粕あえ』は、さっと炙ったホタテを旨みがたっぷり残った『福寿』の酒粕と白味噌などで和えた逸品です。
季節の野菜や魚を中心にした会席料理も充実しているので、ゆっくりお酒と料理を楽しめます。
このときの『福寿』のラインナップは、『蔵直採り生酒』『御影郷 純米酒』『純米吟醸』『大吟醸』『純米大吟醸 黒ラベル』。これらのお酒を飲み比べするのも楽しいですよ。
蔵見学で日本酒造りを知ろう
『神戸酒心館』は蔵見学ができます。実際に日本酒造りが行われている「福寿蔵」をガラス越しに見学、試飲、記念撮影などができます。蔵見学は事前にWeb予約が必要ですが、ビデオ鑑賞や試飲は予約なしでも大丈夫です。
●蔵見学
・ビデオ→蔵見学→利き酒→買い物→フォトスポットで記念撮影。
・2日前までに要予約。
・12月は実施なし
・予約サイト
蔵見学のスタートは、酒造りと『神戸酒心館』の歴史をビデオで見るところからです。270年ものあいだ、生産量を増やすよりもおいしい酒造りに力を注いできた『福寿』。現在13代目となる当主の思いは『神戸酒心館』と社名を変えてからも変わりません。洗米、蒸米、麴づくりなど、どのように日本酒が造られていくのか、その工程が理解できます。ビデオは日本語、英語、中国語対応。
ビデオを観た後、実際の工場を見学します。酒造りの工程ごとに映像やパネルで説明があり、お酒の原料となる酒米と麴についても、より理解が深まります。日本酒造りに水の役割はとても大きく、この灘地域では六甲山系の伏流水「宮水」が使われています。『神戸酒心館』ではこれに純水を加えて仕込水とし、細やかな温度管理を行いながら、おいしい日本酒を造っているそうです。
『福寿』のお酒の味の良さはよく知られており、『福寿 超特撰 大吟醸』が令和5年全国新酒鑑評会で金賞を受賞するなど、これまでに数々の賞に輝いています。このお酒は、酒米の王様といわれる山田錦を35%まで磨き、たらい麴法で麴を作り、『福寿』の酒造りの結晶ともいえるお酒です。パンフレットは15カ国語対応なので外国の人も楽しめます。
しぼりたての日本酒の試飲や買い物が楽しめる「東明蔵」
「東明蔵」では『福寿』の各種日本酒と酒肴などを販売。ここでしか買えない量り売りの生酒や、専用耐圧ボトルに詰める微発泡生酒『FUKUJU KEG DRAFT』は、お酒好きにとって、すごく魅力的です。レアなお土産としても喜ばれますね。
『福寿』の中でも、神戸の名所が描かれたパッケージに入ったミニボトル3本セットは、旅の記念としてもお土産としても手ごろです。その他、多数ある日本酒は利き酒をしてから選ぶこともできます。
酒肴の中で人気ナンバー1は奈良漬のうり。同じ御影郷にある甲南漬(高嶋酒類食品)とコラボした灘の名産です。上品な酒粕の風味が、お酒にもご飯にも合うんです。
人気ナンバー2は、純米吟醸の酒粕を使ったクッキーです。神戸の洋菓子店と福祉施設、そして『神戸酒心館』のコラボでできたもので、サクサクの食感とふんわり酒粕が香るコクのある味わいが大人向け。他にも様々なお菓子や酒器など、オリジナルも多数並んでいます。お酒が飲めない人には、『甘酒』(300g388円)もありますよ。
純米吟醸酒が入ったバニラソフトクリームも、ここでしか味わえない優れものです。濃厚なバニラの風味とほのかな吟醸香で、あとあじの良いスイーツです。
※試飲は20歳以上、妊婦やハンドルキーパーはノンアルコールを。
食事をして限定酒を買って、蔵見学もできる『神戸酒心館』は、何度行っても楽しめる場所です。270年以上の歴史を受け継ぐ酒造りのこだわりもさることながら、近年ではSDGsに取り組み、環境に配慮した「サステナブルな酒造り」を行い、エコプロアワードで財務大臣賞を受賞、海外の環境アワードを受賞するなど、その心意気が伝わってきます。
(ライター 松田/ウエストプラン)
※本記事は2023年7月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
神戸酒心館
住所 | 兵庫県神戸市東灘区御影塚町1-8-17 |
電話番号 | 078-841-1121【さかばやし】078-841-2612 |
営業時間 | 【さかばやし】 昼の部11:30~15:00(L.O.14:30) 呑みの部(土・日曜、祝日のみ)14:30~17:00(L.O.16:30) 夜の部17:30~21:00(L.O.20:00) 【蔵元ショップ 東明蔵】10:00~18:30 【蔵見学】11:00~16:00 |
定休日 | 【東明蔵】12月31日15:00まで営業、年始 【さかばやし】水曜・年末年始 |
アクセス | 阪神石屋川駅から徒歩約10分 |
駐車場 | あり(60台) |
HP | http://www.shushinkan.co.jp/ |
SNS | https://www.facebook.com/shushinkan.fukuju/ https://twitter.com/SHU_SHIN_KAN |
株式会社ウエストプラン
松田きこ、かさはらみのり、中田優里奈、都志リサほか、兵庫県に精通した女性ライターが、観光やグルメ情報を中心に、阪神間や丹波・丹波篠山を縦横無尽に駆け回って取材します。