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忠臣蔵ゆかりの花岳寺からすぐ
「加里屋旅館Q」は、赤穂城旧城下町の一角、歴代赤穂藩主の菩提寺であり、赤穂義士のお墓がある「花岳寺」の南隣にある町家ホテル。築120~130年の町家をステキにリノベーションした宿で、2019年5月にオープンしました。⽊造2階建て延べ約330平⽅メートルという広さで、5部屋を備えています。白地の暖簾に黒で描かれているのは虎。花岳寺・本堂の天井に飾られている虎の絵をモ チーフにしています。天井絵は1854年の寅年に法橋義信が描いたものでかなりの迫力があります。この宿に泊まったら、ぜひ花岳寺にお参りして、本堂の天井絵も見て帰っていただきたいですね。
宍粟市山崎町の酒蔵通りにある「山崎旅館Q」とも姉妹館で、山崎旅館のコンセプト同様、「Q」とは、「Quality」(品質)、「Quest」(街を探求する)、「Quiet」(静かで落ち着いている)、唯一の存在である「Unique」の「Q」を意味し、それぞれを形にできる宿をめざしています。
趣たっぷりなロビー周辺
こちらはロビーです。北欧デザインの家具と、昔ながらのガラス戸や、飾られている古美術品の屏風や掛け軸が見事に調合して、和モダンな雰囲気を醸しています。
石灯篭や手水(ちょうず)を配した中庭も風情がありますよね。このスペースは当初からあったもの。
庭の風情をそのまま残しながら、広めの濡れ縁を取り、ダイアモンドチェアを置きました。ここに座ると赤穂の空気を感じることができます。
濡れ縁に沿って右手に進むと小さな茶室があります。この茶室は、必要最小限の明かりだけを灯して楽しむ小部屋。ここから庭を見ながらのんびり過ごすのも贅沢です。
ロビー脇には、もう一つ小部屋があります。ここは小さな読書室として、ミニライブラリーとデスク、チェア、スタンドライトが置かれています。絵本も備えているので、子どもたちも喜びそうですね。
古民家独特の雰囲気を色濃く残す部屋「蘇芳」
ではお部屋を紹介しましょう。
この宿にある5つのお部屋の名前は、夕陽が美しい赤穂御崎にちなんで、オレンジの和色名を使っています。
こちらは「蘇芳(すおう)」の間。路地を抜けた先に入り口があり、古民家独特の雰囲気を色濃く残す部屋です。
森林王国・宍粟市から取り寄せた杉材の床は素足で歩くと気持ちよく、ミニ盆栽が飾られたテラスにも木がふんだんに使われていて、街なかにいるようには思えません。
この部屋には檜風呂が備えられています。檜の湯船につかれば、旅の疲れをゆっくり癒せそうですね。
メゾネットタイプの離れ「躑躅」が人気
この宿で唯一の離れの部屋「躑躅(つつじ)」は、2階建てのメゾネットタイプです。5人定員の部屋でこちらは2階です。10畳の板張りのスペースに3畳の座敷が付いた和洋室になっています。この部屋も屏風など古美術とのコラボレーションがステキですね。
黄色のチェアが目を引きますが、この宿のすべてのチェアは、スタッフが各部屋に合うものを一つひとつチョイスしています。赤穂御崎の「祥吉」のロビーにも、形状の異なる多くのチェアがありますが、この宿にもそれが採用されているんですね。椅子フェチの私は、いちいち座ってみたくなります。
1階には、小さな和室とそれにつながる広々とした檜風呂があります。脱衣スペースと半露天のお風呂は、天然木の板張りで、お風呂のスペースだけで約3畳分という広さ。浴槽にはサワラの木を使い、部屋専用の平庭もあって何とも贅沢。風呂上がりに外の空気を感じながら涼むのにも最適です。
どの部屋も風情があってステキ
「紅緋(べにひ)」の間です。部屋の天井は当時のまま修復をし、柿渋だけを塗っています。土壁の材料もたつの市から取り寄せ、左官職人が熟練の技で仕上げています。
他の部屋にもありますが、この部屋でも、もともとこの家にあった水屋をクローゼットとして使っています。そんな家具の使い方も懐かしくてほっとしますよね。
こちらは4名定員の「撫子(なでしこ)」の間です。母屋では最も広く、6畳の畳スペースと洋間がある和洋室です。
天井の材や、家具類、格子やすりガラスの窓、全てを復元し、当初の状態まで戻す修復を行なっており、古民家の雰囲気をしっかり楽しむことができます。
お風呂は広めにとったゆったりサイズで、好評のレインシャワーも備えています。
こちらは「銀朱(ぎんしゅ)」の間。2階の部屋の一つです。この部屋の窓からも隣接する花岳寺を望むことができます。
2人定員のコンパクトな部屋ですが、天井が高いので不思議と狭さを感じさせません。
この宿には、たくさんの屏風が飾られていて、ステキに宿の雰囲気になじんでいますが必見は2階の廊下にある屏風です。この宿のモチーフとなった虎の絵を描いた作家による猿の絵が屏風のなかに残されています。ぜひ探してみてくださいね。
料理も旅行の楽しみの一つ
旅に出ると、料理も楽しみの一つですよね。
夕食は、希望に応じて館内のレストラン「GOKAN」で用意します。料理人が目の前 で仕上げる割烹スタイルで、御崎の祥吉同様、瀬戸内の旬の味覚がたっぷり詰まった料理を楽しむことができます。
コロナ禍で好評だったのが、すぐ近所の仕出し「三弥」の弁当です。こちらは、部屋食で用意してもらえるので、ゆっくり過ごしたい方には最適です。
その他、徒歩圏内にある割烹料理の名店「くいしん坊」や「どんぐり」で夕食をいただくプランなどもあるので、好みに応じて予約するといいでしょう。
また、宿は街中にあるので近隣には飲食店がいろいろあります。朝食のみのプランを利用して、夕食は外食するのも選択肢の一つですね。
朝食は、GOKAN特製の和定食を用意。オープンキッチンで、魚は炭で炙って出し、出汁巻きも目の前で焼いて出してくれます。出汁がきいたおみそ汁の香りと土鍋で炊いたごはんや自家製豆腐のおいしさを実感できます。
地域に開かれたレストラン「GOKAN」
1階のレストラン「GOKAN」です。宿泊客が食事をするスペースですが、普段はカフェとして地域に開かれています。洗練された和モダンな空間で、座り心地のよい椅子とテーブルを置いています。
こちら大人気の『ワンコインセット』500円。
ドリンクに3種類のスイーツが付いてこのボリューム。すごいでしょう。
スイーツは、自家製塩キャラメルアイス、塩キャラメルソースが添えられた自家製プリン、ブリュレ、地元の洋菓子店・プリエールの塩クッキーなど5種類を用意し、スタッフがそのなかから3種類を選んで、ワンプレートに乗せて提供する形です。
フードメニューも『穴子の釜飯』(予約制)を提供しています。夏期には、かき氷など も登場します。
こちらの宿は、若い女性スタッフがメインで対応してくれます。笑顔がステキな方ばかりで、お話するのが楽しくなるほど。
「大きな旅館ではなくて小さな宿なので、特にお客様とのコミュニケーションを大切にしています。『親身になってもらってうれしかった』など、接客を褒められるとうれしいですね。街の活性化も宿のコンセプトの一つですので、近くのおすすめのお店もご案内しています」とスタッフの河村瑠実さん。
大切な情報を最後に。
宿泊客の方は、赤穂温泉の祥吉の温泉を無料で利用できるんですよ。お風呂は各部屋にも備えられていますが、大きな湯舟でのびのび入浴したい場合は、こちらを利用しては。15:45加里屋旅館Q出発、17:15祥吉出発の送迎バスを利用することもできますよ。
(ライター 歌見)
※本記事は2023年5月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
加里屋旅館Q
住所 | 兵庫県赤穂市加里屋1996 |
電話番号 | 0791-55-9517 |
営業時間 | チェックイン15:00(最終チェックイン21:00) チェックアウト10:00 レストラン「GOKAN」11:00~17:00(16:00LO) |
定休日 | 不定休 |
アクセス | JR播州赤穂駅から徒歩8分 |
駐車場 | 8台 |
HP | https://kariya-q.com/index.html |
ライター 歌見(うたみ)
晴れの国・岡山出身で、20代半ばで兵庫県赤穂市に移住。ライターという天職を見つけ、赤穂市内にとどまらず、兵庫五国くまなく回ることができました。五国それぞれに、独特の食文化があり、うまい酒があり…。食いしん坊の私を心身ともに潤してくれます。兵庫県の“間違いない”「食」や「人」や「イイもの」に関わる記事をお届けできたらと思っています。