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丹波焼のまちで陶芸体験と作家の作品にふれる
丹波篠山市今田町(こんだちょう)立杭地区は、南北約4kmの間に60軒ほどの窯元があり、様々な陶器が作られているまちです。850年の歴史を持つこの地域の焼き物は、かつては地区の名前から立杭焼と呼ばれていましたが、現在は丹波焼と呼ばれています。『丹波伝統工芸公園 立杭 陶の郷』(以下、『陶の郷(すえのさと)』)は、丹波焼の歴史を伝え、古丹波の名品を直に見て、現在の作家の作品にふれて、陶芸体験もできる施設なのです。
丹波焼の歴史
この地域で焼き物が作られるようになったのは、平安時代末期から鎌倉時代はじめの1200年頃だとされています。中世から現在まで継続して陶磁器の生産を続けている越前、瀬戸、常滑、信楽、備前と並ぶ、日本六古窯の一つです。1600年代に効率のよい登り窯(蛇窯)が取り入れられ、蹴りロクロが普及して生産量が増えて、以後陶器の産地となりました。今では電気やガス窯での焼成が増えましたが、その独特の風合いや大量に焼成できることから登り窯も使われており、まちのあちらこちらで見かけます。
『陶の郷』はどこにある?
『陶の郷』は丹波篠山市の南端、すぐとなりは三田市です。JR相野駅からウイング神姫バスで約10分、のどかな景色をながめながらあっというまに到着します。自家用車の場合は舞鶴若狭自動車道「三田西IC」から約10分、「丹南篠山口IC」から約20分で、広い無料駐車場があります。また、多くの人が訪れる春と秋の陶器市の際は、臨時駐車場が設置されます。
『陶の郷』は山を背にしてとても気持ちがいい場所です。入園料を払って中に入って、まわりを見てみると、コンクリートの床にも陶器のかけらが埋め込まれていて、陶芸の郷らしい演出に気付きます。
入園料 大人(高校生以上) 200円、小中学生50円
窯元横丁で窯元ごとの作品をチェック
敷地内にある「窯元横丁」は、約50の窯元のブースが並ぶ器のショップです。窯元のテイストがそれぞれ違い、同じ窯元でも作者が違うとまた個性的で、いざ選ぼうとすると目移りしてしまいます。伝統的な形や色、技法はありますが、作家の個性を自由に発揮できるのが丹波焼の魅力です。作家物って高い?いえいえ案外手頃な価格なんです。
日本の伝統的な市松模様もくすみカラーで軽やかな雰囲気に。源右衛門窯・市野太郎氏の作品はモダンなテイストです。丹波ヤマキ窯・大上喜仁氏の個性的な形と重厚な色合いにも目をひかれます。
展示スペースでは、季節のテーマに合わせ様々な窯元の器が並びます。たとえば「母の日」「新春のうつわ」「新米のための器とさんま皿」など、テーマもいろいろ。見るだけでも楽しいですが、もちろん購入もできます。
「窯元横丁」でお気に入りの窯元を見つけたら、窯元の工房を訪ねてみませんか。ほとんどが徒歩圏内で、工房の横にショップを構えている窯元が多いので、さらに多種類の器と出会えます。交渉しだいでは、おまけしてくれるかも。
手びねりや絵付けでオリジナルの器を作ってみよう
『陶の郷』の陶芸体験は2つのコースがあります。
粘土細工は、粘土で自由に形を作る手びねりで、初心者でも簡単にお皿やお茶碗などが作れます。小さな子どもも工作感覚で楽しめるので、来園の記念や夏休みの宿題にももってこいです。子どもの方が大胆な作品を作ってくれそうですね。
絵付けは、お皿や湯のみなどに筆で絵を描いていきます。イラスト見本もあるので、描きたい絵を参考にトライしてみましょう。
これらの陶芸体験では、指導員がサポートしてくれるので不安はありません。形や絵付けが出来上がったら、釉薬をかけたり焼き上げたり、あとの行程は丹波焼の陶芸家が仕上げてくれます。どんなふうに焼き上がってくるか、出来上がりを待つ期間も楽しいものです。
陶芸体験受付時間 10:00~15:30
粘土細工(約90分) 小500g 1,320円、大900g 1,870円
出来上がりの釉薬の色指定はできません。窯元におまかせとなります。
絵付け(約30分) 湯呑770円、皿880円
※別途入園料と完成品の発送には送料が必要です。
問い合わせ 079-506-6027(陶芸教室直通)
希少な古丹波の名品を展示
『丹波立杭焼 伝統産業会館(伝産会館)』では、丹波焼のことを紹介する映像が常時上映されており、歴史や作陶について詳しく知ることができます。陶の郷で一番高い場所にあるので、ここから見える景色もなかなかのものです。
館内には鎌倉から江戸時代に作られた古丹波の名品が展示されています。古丹波の特徴として、自然釉による緑色や茶褐色の美しい色、「しのぎ」と呼ばれる削りによる稜線模様です。初期は壺や瓶(かめ)、のちに徳利や桶と、その器は人々の暮らしに密着したものでした。
反対側の部屋には、丹波焼現代作家50名の最新作が展示されています。洗練された新しい丹波焼の魅力に惹かれます。
初期の穴窯を再現した模型。とてもシンプルな窯で、生活に必要な器が焼成されていたことがわかります。記録が残っていないのですが、農閑期の仕事として、この地域で広まったものと考えられています。陶器づくりの技術が代々受け継がれて、今日の丹波焼があるのですね。
食事と喫茶は『獅子銀』でゆっくりと
『陶の郷』の中にあるレストラン『獅子銀』は、地元の食材を使った和食の店。特産品の黒豆や山の芋を使ったうどん、そば、定食の他に御膳や釜飯など、メニューは豊富です。中でも『獅子銀 陶の郷店』だけのオリジナル『しし肉うどん』は、猪の肉を特製の和風ダシであっさりといただけます。同じメニューが12~3月は、味噌仕立てにチェンジ。体が芯からあたたまります。また、冬にはぼたん鍋も登場。天然の3才のメス猪のみで、しゃぶしゃぶ、石焼きでも食べることができます。
手作りケーキと黒豆コーヒーなど、喫茶でも利用できます。
カウンター、テーブル席、座敷があるので、子ども連れでも遊び疲れた時に、休憩できます。また、お土産物売り場も充実しており、特産品やお菓子など、すぐに食べられるものから保存できるものまで、丹波篠山の美味しいものを自宅でも楽しめます。
※レストラン利用のみの方は『陶の郷』入園料は不要です。
電話番号 079-597-2173(直通)
営業時間 10:00〜21:30(17:00以降は要予約)
定休日 火曜(祭日の場合は営業、翌日休み)
窯元の工房が連なる路地を歩いて最古の登り窯へ
『陶の郷』で窯元をめぐるマップをもらったら今田町を歩いてみましょう。山の麓に窯元の住まいや工房がたくさんあり、その間を細い路地が通っています。乾燥中の器が並ぶ光景は産地ならでは。思わぬ器との出会いを求めて、メイン通り以外の散策もおすすめです。
各窯元のショップには『陶の郷』に置いてあるもの以外の器も多数あります。お声がけをすれば、お邪魔にならない範囲で実際に作陶されている姿を見学できることも。歩いてゆっくりと散策するのがおすすめですが、『陶の郷』にはレンタサイクルもあるので、利用してもいいかも。
レンタサイクル
利用料 1日:500円
保証金 1台:1,000円
国内最大のアベマキの木「おみの木」のすぐ横に、現存する丹波焼の「最古の登り窯」があります。1895(明治28)年に作られたもので、全長47メートル、9つの焼成室がある大きな登り窯で、兵庫県の有形民俗文化財に指定されています。
「最古の登り窯」は老朽化のために2年の歳月をかけて修復され、2015(平成27)年の秋に初焼成が行われました。登り窯は、大量の薪をくべて、3日3晩、窯元が交代で火の具合を調整します。蜂の巣から上る炎、色味穴から見える1300℃の炎は、迫力と同時に美しさを感じます。
今田町に出かけたらまず『陶の郷』に行くと、丹波焼のことがよくわかります。毎日使う器だからこそお気に入りのものを大切に使いたい、そんな思いが強くなります。陶芸体験、買い物、グルメ、町内散策など、ここを起点に丹波焼のまちを楽しみましょう。
(ライター 松田/ウエストプラン)
※本記事は2023年5月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
丹波伝統工芸公園 立杭 陶の郷
住所 | 兵庫県丹波篠山市今田町上立杭3 |
電話番号 | 079- 597-2034 |
営業時間 | 10:00〜17:00 |
入園料 | 大人(高校生以上) 200円、小中学生50円 |
定休日 | 火曜(祝日は営業) |
アクセス | ・JR相野駅からウイング神姫バスで「清水」「兵庫陶芸美術館」行きに乗車、 約10分、陶の郷前バス停下車すぐ ・車の場合は、舞鶴若狭自動車道「三田西IC」から約10分。 「丹南篠山口IC」から約20分 |
駐車場 | あり(観光バス可) |
HP | https://tanbayaki.com/ |
SNS | https://www.instagram.com/tanbayaki_official/ |
株式会社ウエストプラン
松田きこ、かさはらみのり、中田優里奈、都志リサほか、兵庫県に精通した女性ライターが、観光やグルメ情報を中心に、阪神間や丹波・丹波篠山を縦横無尽に駆け回って取材します。