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鴨川ダム誕生の歴史に迫る探訪ツアーに行ってきた(東条川疏水2025⑦)

東条川疏水を代表するスポット「鴨川ダム」。その誕生には興味深いストーリーがあるのをご存じでしょうか。地域の歴史に興味がある人やダム好きの間で注目されている鴨川ダムを知るモニターツアー「鴨川ダム歴史探訪」が2025年10月23日(木)に開催されました。鴨川ダムの歴史を知り、普段は非公開のダム内部を実際にダムの管理をされている人の解説で見学できる特別なツアー。同行してきましたので紹介します。

大人気「鴨川ダム歴史探訪」ツアー

昨年(2024年度)開催し好評だった「鴨川ダム歴史探訪」が今年も行われました。平日開催にもかかわらず、募集開始早々に定員に達し、キャンセル待ちが多く出る状況に。参加者は、地元はもちろん、京都や大阪、西宮,神戸、姫路などからも来られ、来訪理由も「内部に入れると知って」や「住んでいるところにもダムがあるので気になって見学に来た」「ダムが格好いいから」などさまざま。ダム内部に入ることができる、レアな企画に人気の高まりを感じます。

「鴨川ダム歴史探訪」ツアーは、非公開エリアを含む鴨川ダムの見学や歴史学習、将来にわたり守り続けなければならない地域の宝と水と人との関わりを知る企画です。「2025大阪・関西万博」に合わせて兵庫県が魅力ある地域の体験を発信していく取り組み「ひょうごフィールドパビリオン」のSDGs体験型地域プログラム「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!」のモニターツアーとして開催されました。

湖畔に建つ「東条湖グランド赤坂」

開催場所は、観光旅館「東条湖グランド赤坂」。東条湖畔に建ち、客室からの風景と料理自慢の宿です。特に「東条湖おもちゃ王国」を楽しむ家族連れに人気です。「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!」の鴨川ダム関連企画では、欠かせない場所になっています。

こちらが館内からの自慢の眺望です。

観光旅館「東条湖グランド赤坂」大広間から望む東条湖

鴨川ダムはなぜ造られたのか

この日の鴨川ダムは貯水率30%を若干越えた程度。夏の渇水状態から回復してきていますが、例年より低めです。

東条湖おもちゃ王国の観覧車などが見える

東条湖は、ルアーフィッシングやボート遊びなど北播磨地域を代表する観光スポット。周辺には、東条湖おもちゃ王国やアクア東条(淡水魚の水族館)があります。1969(昭和44)年に東条湖ランド(東条湖おもちゃ王国の前身)が開園した頃は、湖上を遊覧船が就航するなど一大観光地として人気を博し、多い時で年間約80万人が訪れていたそうです。レジャースポットとしての印象が強い東条湖ですが、ダム建設によって生まれた人造湖であることを知らない人が結構いるのも事実。

「鴨川ダム歴史探訪」では、はじめに東条川疏水がなぜ必要となったのか、どのような仕組みで整備されたのかなど、動画やパネル、紙芝居を使って解説してくれます。

配布された資料。鴨川ダムに関する資料の他、ダムカードなど配布された

会場で配布の資料には、東条川疏水に関するパンフレットやダムカード、ピンバッジの他、周辺の観光パンフレットなども入っていました。

解説は、東条川疏水に関する映像から始まります。

日本で最もため池の数が多い県は兵庫県。なかでも加東市や小野市、三木市周辺は、淡路島に次いでため池が多い地域。それは、雨が少ない地域だからです。水を大切にする先人たちの知恵なのですが、およそ100年前の1924(大正)年の大干ばつをはじめ、水不足には苦労をしてきました。その経験から検討されたのがダム建設の話です。

ダム上から望む東条湖、湖底に土井村が眠る

東条湖がある地(土井村)は、山に囲まれた盆地で高所にあったため、1箇所を堰き止めるだけでダム湖になる最適地であることが発見され、ダム建設が計画されました。ただ、日本が戦争状態になったため、計画は中止に。戦後、国内の食糧難を背景に1947(昭和22)年に再びダム建設に動き出します。鴨川ダムの完成は1951(昭和26)年10月。ダム本体の着工から、わずか2年で戦後初のコンクリートダムは完成しました。堤高42.4メートル、堤長97.1メートル。

高度な土木技術と近代的な施工、今では当たり前のダンプカーやパワーショベルカー、フォークリフトなど当時の最新車両が導入され、昼夜を問わず建設されました。

建設当時の車両写真

鴨川ダムの完成により水路網が整備されていきます。これが東条川疏水です。今では、水の心配なく暮らせ、日本一の酒米・山田錦をはじめとする農作物の恵みをもたらしてくれています。

ダム上から望む加東市の風景

映像では、東条川疏水で用いられている設備の解説などもあり、地域の水資源を守る世界的にも珍しい仕組みを紹介する、見応えある内容でした。

大型紙芝居で語られる鴨川ダムの知られざるストーリー

鴨川ダム建設により、湖底に沈むことになった土井村。それは容易なことではありませんでした。

紹介してくれたのは「ふるさとみんわ会」のみなさん。関係者への聞き取りから歴史調査、ストーリーの作成、紙芝居制作など550日もの時間をかけて、全て自分たちで作られています。

タイトル「東条湖物語“湖底のふるさと”」は、湖底に沈むことになった土井村の7世帯51名が突如持ち上がった立ち退き話に苦悩する話です。先祖代々の地、豊かで美しい故郷との別れ、将来への不安。さまざまな思いを胸に押し込め、「世の中のため、多くの人が助かるならば」と立ち退きを決断した思いを情感豊かに語ってくれます。

「自身が土井村の住人であったならば、どうしただろうか」

みな、考えさせながら見たに違いありません。終了後には大きな拍手につつまれました。

鴨川ダムの心臓部!非公開エリアを見学

鴨川ダムのことを学んだ後は,いよいよ現地見学です。東条湖グランド赤阪からは徒歩で4,5分。

人数が多いため、2班にわかれての行動です。

解説してくれるのは、農林水産省近畿農政局鴨川・大川瀬ダム管理所のみなさん。見学できるのは、ダム操作室と取水塔(ダムから水を取るための設備)、洪水吐ゲート巻上室(ダムの放流機能を担う施設)、そして外階段経由でダム内部へと入る監査郎(ダムの点検や異常の有無を観察・測定する点検通路)です。どこも普段は見学できない施設で、特別に入らせてもらいました。

ダム操作室では、ダム管理の日々の仕事など実際の機器の前で解説してくださいました。

取水塔外部の取水口がよく見えるのは、水位が低くなっている今だから見られる風景です。内部に入ることもできました。

洪水吐ゲート巻上室は、大雨などの時に操作される場所です。

監査郎は地元小学生の体験学習で入ることがありますが、一般への公開はめったに行われないレアなスポットになります。

監査廊に向かうには、まずは高所恐怖症の人には勇気のいる外階段から。

内部に入っても急な階段。中は、夏はひんやり、冬は暖かい洞窟の様な場所です。ひとりで入るには、ちょっと怖いと感じるかも知れません。

コンクリートを流し込む時に使われた木枠の形が天井などにはっきりと残っています。

監査廊では、日々の点検や地震発生時の状況確認が行われます。

完成から70年以上。どっしりと構え、水を蓄え地域の生活を守るダムの心臓部。中に入った者にしか感じ取れない空気感があります。

参加者からは「来てよかった」「見るもの初めてばかりで、想像以上に楽しかった」との感想。ダムに興味のある人が集まったこともあり、質問も多く飛び交い関心の高さを感じました。

昼食は北播磨の味がギュッと詰まったお弁当

見学が終われば昼食です。鴨川ダムを要とする東条川疏水がもたらす恵みを味わってもらおうと、地元食材をふんだんに使った特別弁当が用意されていました。

弁当のフタを開けると、色とりどりのおかずがいっぱい。入っているものは、北播磨の味覚が多く取り入れてあります。播州百日どりとは、100日という長い時間をかけて平飼いした銘柄鶏。肉厚でジューシーな身が特徴です。黒田庄和牛は、「神戸ビーフ」の素牛となる和牛のことで、脂身の質がよく赤身の味もしっかりとしているのが特徴です。野菜は東条川疏水の恵みをいっぱい受けたものばかり。さすがにフルーツは地域外ですが、北播磨の味が詰まっています。

参加者の感想は「どれも美味しかった」という声がいっぱい。特に播州百日どりを使った五目ご飯や黒田庄和牛コロッケなど、地域自慢の逸品が好評。茄子の煮浸しなど、素材の良さが実感できるメニューも喜ばれていました。

ダム上で撮った記念写真

加東市や小野市・三木市は、鴨川ダムを初めとする東条川疏水によって、水の心配なく静かで平和に暮らせる地域となりました。この地域全体を大きな博物館と捉え、東条川疎水の大切さや地域の財産を共有し、疎水にまつわる人と水、人と人とのネットワークの力を高め「地域の手で次世代のために水の恵みを活かす」ことを目的に活動しているのが、今回のツアーを企画運営した「東条川疏水ネットーク博物館」です。東条川疏水ネットワーク博物館では、今後も大人から子どもまで楽しめるイベントを企画しています。

気になる人は、加東市観光協会や東条川疏水ネットワーク博物館の公式サイト・SNSに情報が掲載されているのでフォロー・閲覧をおすすめします。当サイト(ローカルプライム)でも、参加者募集をはじめさまざまな情報を発信しているのでチェックしてみてください。

※この記事の情報は2025年10月時点です。

鴨川ダム

住所

兵庫県加東市黒谷

電話番号

0795-47-1091
(近畿農政局 鴨川ダム管理分室)

営業時間

24時間
(施設内の見学は不可)

定休日

なし

アクセス

相野駅から直線距離で8011m

駐車場

なし

この記事を書いた人
ライター
塚本隆司
姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。

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