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「東条川疏水を知るバスツアー」の概要
2025年7月8日(火)に行われた「東条川疏水を知るバスツアー」は、開催中の大阪・関西万博(開期:2025年4月13日〜10月13日)に合わせ、兵庫県の魅力を国内外に伝える取り組み「ひょうごフィールドパビリオン」の体験型プログラム事業のひとつ「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!」の一環として企画されました。

東条川疏水とは、鴨川ダム(東条湖)を主な水源とした水路網で108キロメートルに及びます。兵庫県の加東市や小野市、三木市の約3,000ヘクタールの農地へ水を運び、水道水としても利用される、地域の暮らしを支える重要な地域資源です。
今回のバスツアーは、一般社団法人加東市観光協会が主催し、東条川疏水の歴史や役割を次世代に継承していく活動を行う東条川疏水ネットワーク博物館が協力した、地域の魅力を知り尽くした人たちによる企画です。

ツアーのルートは、JR加古川駅前とJR姫路駅前を出発地とし、平池公園で見頃を迎えた大賀ハスを観賞、鴨川ダム(東条湖)へと向かい東条川疏水の役割と歴史についての紹介・現地見学。昼食では、老舗料理旅館で鮎料理を満喫。午後は、日本最大級のトリックAR美術館「加東市アート館」と国宝寺院「朝光寺」を訪れ、最後に道の駅とうじょうでお土産を買えるという行程です。
観光協会主催だからできる盛りだくさんの内容でありながら、1人7,500円ということもあり、出発地周辺の一部地域での告知にもかかわらず定員40名がほぼ満席で当日を迎えました。
平池公園に咲く縄文時代の花「大賀ハス」
最初に訪れたのは、兵庫県加東市にある平池。ため池として江戸時代初期に造られたのが始まりです。

池の周囲は1.2キロメートルと結構大きく、周辺の田畑のための灌漑(かんがい)用水として使われています。東条川疏水が整備されたことで、水位が低下した際には16.2Kmもの水路を通って鴨川ダム(東条湖)から供給される仕組みです。

現在は、東条川疏水の歴史や役割を次世代に継承する活動の一環で、平池公園として整備され、散歩やジョギングなど地域の憩いの場所です。なかでも、ハスやスイレンが見頃を迎える6〜8月は、多くの人が訪れる観光スポットになっています。

特に大賀ハス(おおがはす)は、縄文時代の遺跡(千葉県の落合遺跡)から発掘された2000年以上も前の種子を譲り受け発芽・繁殖させたもので「2000年ハス」とも呼ばれる貴重なもの。
開花時期は6月下旬から8月上旬。直径20センチほどの大きな紅紅色の花が開きます。

ハスやスイレンは、午後になると花を閉じてしまうので、鑑賞のベストタイムは午前中の早い時間。ツアーで訪れたのは10時すぎでしたので、閉じ始めといったところでしょうか。
平池公園
住所 | 兵庫県加東市東古瀬453-1 |
電話番号 | 0795-43-0504(加東市都市整備部土木課) |
駐車場 | あり(無料) |
HP | https://www.city.kato.lg.jp/kurashi/shizen/1457747656017.html |
鴨川ダムで東条川疏水の歴史と仕組みを知ろう
「東条川疏水を知るバスツアー」ならではの企画が東条川疏水の要「鴨川ダム」見学です。バスツアーではダムを管理されている農林水産省近畿農政局鴨川・大川瀬ダム管理所の方々や東条川疏水を守り次世代へつなげていこうと活動している「東条川疏水ネットワーク博物館」の人たちから、直接話が聞ける貴重な機会になります。


まずは、東条湖畔に建つ観光旅館「東条湖グランド赤坂」の大広間をお借りし、東条川疏水の役割や重要性、遠くまで水を運ぶ設備などについて、わかりやすい動画を交えて解説。
「東条湖は昔からあるもの」と思っている人が案外多いのですが、1951(昭和26)年の鴨川ダムの完成によって生まれた人造湖なのです。湖底には土井村があり、先祖代々の土地を守りながら生活を営む日常との引換に生まれました。


干ばつに苦しんだ地域の歴史やダム建設に適した土地であったことなど、初めて聞く人にとっては驚きの内容です。

ダム建設により立ち退かなければならなかった土井村の人たちの苦悩を、手作りの大型紙芝居を使い臨場感あふれる解説で知るのも東条川疏水ツアーの魅力。上演後は大きな拍手で包まれます。

大広間での説明の後は、実際に鴨川ダムへ。特別にダム操作室やダムの仕組みについて職員の解説付きで巡ります。

戦後初のコンクリートダムとしての魅力、ダム造りに最適な地形だったことなどを感じる貴重な体験です。鴨川ダム見学をしたくてツアーに申し込まれる人もいるなど、注目の観光スポットになっています。
名店で食す鮎づくし料理

お楽しみの昼食は、夏の味覚「鮎料理」です(鮎料理が苦手な人は別料理に変更)。
加東市を代表する観光名所「闘竜灘」のほとりにある老舗料理旅館「滝寺荘(たきじそう)」のレストラン「紅葉亭」でいただきました。


闘竜灘は、加東市を流れる1級河川・加古川の中流にある名勝で、ゴツゴツとした岩盤の隙間を縫うようにして川が流れる様子が竜に例えられた景観が広がっています。
5月になれば鮎漁が解禁され、滝寺荘でも鮎料理が味わえます。料理旅館ですが、食事のみでも大丈夫です。

今回、バスツアー用にご用意いただいたのは「鮎御前」。鮎の塩焼き、鮎の飴煮、鮎のフライに鮎の南蛮漬け、鮎の炊き込みご飯と、鮎づくしのメニューでした。
ツアー参加者からも「いろんな料理が楽しめて良かった」「どれもおいしかった」と満足なご様子。「このツアー料金に含まれているとは思えないくらい豪華!」など喜びの声が聞かれました。
料理旅館滝寺荘(たきじそう)
住所 | 兵庫県加東市上滝野283 |
電話番号 | 0795-48-3223 |
営業時間 | 11時~21時 最終受付18時30分 |
定休日 | 不定休 ※公式サイトのカレンダーを参照 |
駐車場 | あり(無料) |
HP | https://takijisou.com |
国内最大級のトリックARアートの美術館「加東アート館」

午後の最初の訪問先は「加東アート館」。立体的に作品を見せるトリックアートやスマートフォンを使った「トリックARアート」を楽しむ美術館です。その規模は国内最大級(加東アート館調べ)。年間3万人が訪れる人気の施設です。

トリックARアートは、スマホにダウンロードした専用アプリを使い、館内にある作品を撮影すると、現実空間にはない絵柄が画面上に現れトリックアートをより楽しむ事ができます。
初めて体験する参加者も多く、スタッフのサポートを受けながら挑戦。はじめは、うまく撮影できなかった人も慣れてくると楽しいようで、いっぱい写真を撮っていました。
スマートフォンも持っていない、使い方が分からない人でも楽しめます。


お土産販売コーナーもあり、自分で作れるトリック3Dアートキットなどが販売されていました。

加東アート館
住所 | 兵庫県加東市下滝野1269番地2 |
電話番号 | 0795-48-4915 |
営業時間 | 10時〜17時(最終入場16時) |
定休日 | 水曜日(祝日の場合は営業)・12月28日〜1月3日休館 |
観覧料 | 中学生以上440円、小学生220円、未就学児無料 |
駐車場 | あり(無料) |
HP | https://katoartmuseum.web.fc2.com |
室町中期建立の国宝寺院「鹿野山朝光寺」

現代のアートを楽しんだ後は、室町中期の1413(応永20)年に建立された国宝寺院「鹿野山朝光寺」へ。寺伝によると創建は平安時代。権現山(現在地の北)にあったものが、鎌倉時代初期の1189(文治5年)年にこの地へ本尊を移し再建されたそうです。

本堂内では、ボランティアガイドが解説してくれます。詳しい説明が聞けるのもバスツアーの魅力です。
本堂の造りは、当時の密教寺院本堂の典型を受け継ぎ、何度か修繕修理が行われているものの柱の何本かは600年前のまま使われています。

ご本尊さまは、東本尊と西本尊の2体の木造千手観音像。どちらも非公開のためパネルでの紹介。
西本尊は重要文化財で、京都にある国宝の蓮華王院(三十三間堂)に安置されている観音像と様式が一致するため、蓮華王院から当寺に移されたものと推定されていますが、その理由は不明だそうです。
もう1体の東本尊は県指定の文化財で、全身を1本のヒノキで彫られた一木造。平安時代中期の特徴が見られることから、創建期から本尊として奉られてきたものと考えられます。

朝光寺には、鐘楼(重要文化財)や多宝塔(県指定文化財)など多くの文化財があるので見応えがあります。
朝光寺(ちょうこうじ)
住所 | 兵庫県加東市畑609 |
電話番号 | 0795-44-0735(総持院) |
駐車場 | あり(無料) |
HP | https://www.kato-kanko.jp/2017/03/choukouji/ |
お土産は「道の駅とうじょう」

バスツアーの最後に向かったのは「道の駅とうじょう」。加東市の魅力がいっぱい詰まった道の駅です。

夏のおすすめは「やしろの桃」。完熟で収穫するため糖度が高くジューシーな味わいが人気です。収穫時期が7月上旬から8月中旬までと短いので、見かけたら買っておくべき逸品です。
他にも東条川疏水の恩恵を受けた地元産野菜や酒米山田錦を使ったパンやスイーツなど、多くの商品が並んでいます。特徴ある商品が多いのも「道の駅とうじょう」の魅力です。

日本一の酒米山田錦の産地とあって日本酒コーナーも充実。山田錦の産地の中にある老舗酒蔵「神結酒造」の商品はもちろん、北播磨の山田錦を使った日本酒、この地域でしか買えないレアな銘酒など、数多く並んでいます。
道の駅とうじょう(特産館)
住所 | 兵庫県加東市南山1丁目5番地3 |
電話番号 | 0795-47-2400(代表) |
営業時間 | 9時〜18時30分 |
定休日 | 毎月第2月曜(祝日の場合は営業) |
駐車場 | あり(無料) |
HP | https://www.tojo21.co.jp |
今回の「東条川疏水を知るバスツアー」。東条川疏水ネットワーク博物館の「フィールドパブビリオン体験型プログラム事業」の支援を受けての開催でもあり、通常よりも低価格で催行されました。
このような充実した内容のツアーが、今後も企画されています。
例えば、今年2月に開催された「東条川疏水の恵みを感じるグルメツアー」が今年度も2月の開催に向けて企画されているそうです。
鴨川ダムの冬景色と地元酒蔵で味わう山田錦大吟醸の味は絶品そのもの・・・
当時の体験談は以下に掲載しておりますので参考にご覧ください。
東条川体験⑧「東条川疏水の恵みを感じるグルメツアー」がおトクだった件(イベント後日談)
加東市の広報ページや「ハートにグッと北播磨」公式サイト、SNS等で随時PRをしていますので、気になる情報がアップしていないかチェックしてください。
ローカルプライムでもどんどん紹介していきます。
(ライター 塚本隆司)
※本記事は2025年7月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
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ライター 塚本 隆司(つかもと たかし)
姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。