「かつめし」は、兵庫県加古川市を代表するご当地グルメで、農林水産省が選定する「郷土料理百選」にも選ばれています。加古川市内では専門店だけでなく、喫茶店や洋食店のメニューにもあるほど一般的。兵庫県内の他地域ではあまり見かけませんが、地元ではあたりまえのように食卓に並び、給食にも登場します。
加古川観光や加古川ランチで何を食べようか迷ったら、まずは「かつめし」を味わってみてください。加古川市では5月29日は「かつめしの日」。この機会にぜひ食べに行きましょう。
かつめしとは、白ご飯の上にカットしたビフカツをのせて、デミグラスソース系のたれをかけたもので、付け合わせは茹でキャベツが定番です。どんぶりではなく、お皿で提供され、ナイフとフォークではなく、お箸で食べます。
そのルーツは戦後間もない頃というから、もう80年ほど前のこと。加古川駅前の食堂で「お箸で気軽に食べられる洋食」としてメニューに並び、人気が出たそうです。工業で発展した加古川では、工場で働く人たちが、短時間で食べられてボリュームもある料理を好んで人気が出たとも考えられます。
かつめしは、長年地域で受け継がれてきた食文化として、2007年に農林水産省の「郷土料理百選」に選定。さらに2022年度には文化庁の「100年フード」にも認定されています。加古川を代表する文化のひとつとして、イベントやフェスでも人気ですが、地元では日常の延長線上にあるソウルフード。親しまれているあかしとして、JR加古川駅近くには、かつめしのキャラクター、「がっつん」と「デミーちゃん」のモニュメントがあるんです。
元気いっぱいの「がっつん」と、デミグラスソースをイメージした「デミーちゃん」。あちこちにある看板やチラシなどでもその姿を見ることができます。
加古川市内には、かつめしを提供する店が80店舗以上あるといわれています。ビーフだけでなく、ポークやチキン、エビを揚げたもの、デミグラスソースに個性を出したもの、付け合わせを工夫したものなど、店ごとに違った魅力があります。今回はその中でも、昔ながらの“王道かつめし”を味わえる店「もんぶ」を訪れました。
「もんぶ」のオープンは2017年5月。10年目を迎えたばかりの店が、昔ながらの味を受けついでいるのには理由がありました。店主の門谷裕明さんが、今は閉店してしまった加古川の人気店「八重食堂」に勤めていたのです。いったん飲食業を離れていましたが、同店が閉店した後「この味を残したい」と決意して開業しました。
八重食堂がかつめしを作り始めたのは昭和30年代のようで、門谷さんが先輩たちから聞いていたのは、「かつめしは洋食屋のまかないから生まれた」という話です。当初はカツライスと呼ばれ、ステーキなどに使った牛肉の端肉で作って、ごはんの上に乗せて食べていたとか。お箸で食べたのは、忙しい厨房でナイフとフォークを使う余裕がなかったから、あるいは洗い物を減らすためだったとも考えられます。
カウンターごしに調理風景を見ていると、薄く延ばした牛肉に衣をつけて揚げていきます。カラッと揚がったカツにスパゲテイと茹でキャベツが付け合せ。これが昭和のスタイルです。たっぷりかかったタレは、小麦粉を油で2時間ほどかけて炒めたものをベースに、野菜を加えてじっくり煮込んだ自家製。サラッとしたタレは、深みのある甘さと旨みをたたえ香ばしさも感じられます。カツも重たくなく、後味がすっと消えていくのが印象的でした。かつめしは並(内もも)、上(国産もも肉A4)、特上(国産ロースA4)の3種類。A5ランクではなくあえてA4ランクの牛肉を使用しているのは、脂っぽさをおさえて肉本来の美味しさを活かすためだそう。
「お客さんが懐かしいって言ってくれるのがうれしいんです」と言う門谷さん。おいしいのはもちろん、あの頃の味を思い出せる一品として、正月やゴールデンウィークには、県外へ出た人たちが訪れることも多いそうです。テイクアウトもできるので、家族分を買っていく人の姿もありました。
店主が一人できりもりするカウンターだけの店「もんぶ」は、JR加古川駅から徒歩約4分の好立地にある加古川グルメの人気店です。一品料理も豊富で、加古川で気軽に居酒屋利用したいときにもおすすめです。
同じかつめしでも、お店によって味も雰囲気も全く違うので、加古川グルメ巡りをしながら何軒か食べ比べするのも楽しいですよ。地元のスーパーでは、家庭用の「かつめしのたれ」も販売されているので、おうちで加古川名物を再現してみるのもおすすめです。
取材・写真 駒村こりの
※2026年5月時点の情報です。
加古川市加古川町寺家町164-2
電話番号 090-6676-8559
11:30〜21:30
火曜(祝日は営業)
JR加古川駅 徒歩約4分
加古川駅 徒歩4分
加古川駅南口 徒歩8分
なし
