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初公開!姫路城「西小天守」
今回、内部の特別公開がされる「西小天守」は、姫路城が一般に公開された1912(大正元)年以降、初めての公開になります。
2023年夏の特別公開(2023年8月11日(金・祝)から9月24日(日)まで)では「東小天守」「乾小天守」を含む6棟もの非公開エリアが同時公開された姫路城。平成の修理前の2009年以来、14年ぶりの大規模な特別公開でした。
これまで「西小天守」が非公開だった理由については、建物の状態や観覧ルートの整備など数々の問題があったといいます。それらを世界遺産登録30周年での公開に向けて準備し、今回の公開となりました。
非公開エリアの観覧券(通常入城券で入城し、非公開エリア前で特別公開の観覧受付)は、30周年記念観覧券として、昭和9年頃のデザインが用いられています。
大人、子ども関係なく、観覧料300円になります。
「西小天守」へ向かうルートの見どころ
今回の特別公開では、連立式天守群を体感できるルート設定がされています。
2023夏の特別公開と同じく、①「イの渡櫓」から②「東小天守(2階)」、③「ロの渡櫓」、④「乾小天守(2階)」、⑤「ハの渡櫓」まで行くと、ここから初公開となる「西小天守」へと入ります。
西小天守までのルートでの見どころは、2023夏の特別公開記事から抜粋して、今回のルート部分を紹介しましょう。
順路としては、通常公開の大天守の観覧までを終えてから、特別公開エリアの観覧に入ります。
姫路城は連立式天守と呼ばれるように、大天守と3つの小天守を渡櫓でつなぐ形をしています。ここからは、順路に沿って紹介しましょう。
①「イの渡櫓(いのわたりやぐら)」(国宝)
「大天守」と「東小天守」を繋ぐ、地下1階地上2階の渡櫓です。2階部分に小さな舞台のようなものがありますが、舞台ではありません。何のための形状か、訪れて考えてみてください。
ぜひ見ておきたいのが、中庭の眺望。左に大天守、正面に乾小天守、右にロの渡櫓が見えます。乾小天守の下1階部分に見えるのは、台所櫓。
②「東小天守(ひがしこてんしゅ)」(国宝)
地下1階、地上3階建てですが、2階建ての櫓の上に望楼(物見櫓)を乗せた質素な構造の小天守です。2023年夏の特別公開では、最上階まで上がれましたが、今回は2階部分を通り抜けます。
③「ロの渡櫓(ろのわたりやぐら)」(国宝)
「東小天守」と「乾小天守」を繋ぐ地下1階、地上2階の渡櫓です。映画のロケ地としてもよく使われる櫓で、長さ約28.7メートル、幅約5.9メートルという現存する渡櫓の中でも最大級のものです。
見どころは、3つ。1つは、写真右側(外側)の格子窓は、木心に鉄板を張り、その上から白漆喰で塗り固めた丈夫なもの。窓を閉めると狭間が現れ、敵からの攻撃を避けつつ攻撃できる仕組みになっています。
2つめは、壁にかかっている用具掛け。折れやすい竹釘が使われています。これは、引っ張るだけで取れるようにするためです。城内の他の場所でも見られます。
二条城にも同様の用具掛けがあり、火縄をかけていたという表記があるとのこと。姫路城でも同様の使われ方をしていたのか、はっきりとしたことはわかっていません。
3つ目が床。400年くらい前の鉋(カンナ)は手斧削り(ちょうなはつり)という技法のため、表面に魚の鱗のような模様になります。その技法で作られた板が残っています。
④「乾小天守(いぬいこてんしゅ)」(国宝)
3つある小天守の中で、最も大きく、優美な姿をした小天守で、地下1階、地上4階の5階建てです。 ここも、2023年夏の特別公開では、最上階まで上がれましたが、今回は2階部分を通り抜けます。
⑤「ハの渡櫓(はのわたりやぐら)」(国宝)
「乾小天守」と「西小天守」を地階で繋ぐ渡櫓で地下1階、地上2階です。
ここまでが、2023年夏の特別公開でも見られたエリア。そして、写真奥に見える扉が「西小天守」への扉です。
内部初公開!「西小天守」の見どころ
西小天守は、大天守の西南に位置することから、築城時には「未申(ひつじさる)櫓」と呼ばれていたことがわかっています。これは、建築時だけで呼ばれていたのか、当初はこの呼び名だったのか、定かではありません。
構造は、三重三階地下二階。外観は、三の丸広場や備前丸など、南から西側にかけての方角からよく見えます。
「西小天守」最上階でもある三重目の火灯窓にも注目です。「乾小天守」の火灯窓とは違い縦格子が入っています。
また、西小天守の南面の外壁には瓦片が塗り込まれていることがわかっていますが、その目的も不明なままです。
内部は、倉庫的に使われていたと思われるため、華美な装飾等はありません。
天井に近いところには、鉄砲を屋内で使用したときのための排煙窓があるなど、軍事的な機能を見ることができます。
西小天守に張られている障子紙は、姫路の高校生たちが現代の名工・表具師梅岡一晴氏の指導の下で製作。材料の雁皮(がんぴ)は、書写山で採取したものです。
ちなみに、床面、手すりには、今回の特別公開のための養生が施してあります。
「西小天守」の1階部分からは「ニの渡櫓」越しに大天守へと続く扉が見えます。
ここを通れる日がいつ来るのか、楽しみでなりません。
「西小天守」最大の役割は防御
「西小天守」が担う最大の役割は、籠城の際の天守防衛、最後の拠点としての機能です。
写真は、天守へと続くルートである「水の二門」から奥の「水の三門」へと進む場所です。
「水の二門」をくぐり見上げると「西小天守」が見えます。
格子窓や狭間、石落としから弓や鉄砲で狙われ放題。実際に「西小天守」から丸見えです。
「水の三門」を抜け「水の四門」、「水の五門」へと進むのも「西小天守」に沿って枡形虎口が連続するように造られているため、なんとしても敵兵を先に進ませない恐るべき防衛拠点としての役割が実感できます。
西小天守と大天守との間は、「水の五門」の上に「二の渡櫓」を設けた櫓門になっています。
さらに「水の五門」の奥、西小天守地下2階にあたるところには「水の六門」があり、ここでも枡形空間を作り出すことで、至近距離からも狙い撃ちができる徹底した防御施設になっています。
美しい見た目の裏に、恐ろしいまでの備えが隠されている姫路城の防御力がよく分かります。
連立式天守群を眺めるスポット
大天守と3つの小天守を見学した後には、ぜひ外からもその全てを眺めて欲しいところです。
写真は、2023年夏の特別公開でも紹介した風景。撮影場所は、姫路城ループバス「清水橋(文学館前)」バス停のすぐ近くです。
バス停の目の前には、1762(宝暦12)年に編さんされた「播磨鏡」にも登場する名水「鷺の清水」が湧いていた井戸とその屋形が復元されています。
由来、形状に特徴があり、往時の姿が概ね復元されている貴重な遺構で、姫路城跡の中でも重要な史跡のひとつです。
姫路城の西、男山(男山八幡宮、千姫天満宮がある)の山頂からも、はっきりと連立式天守群が見られます。「清水橋(文学館前)」バス停から、徒歩で5分ほどですが、山頂へは長い急な階段があるので、頑張って登って下さい。
姫路城周辺を楽しむなら、姫路城ループバスがおすすめです。桜シーズンの紹介記事ですが、こちらの記事を参考にしてください。
桜の姫路城を100円でぐるりと満喫!姫路城ループバスでお花見を
姫路城や姫路の歴史についてもっと知りたいなら、兵庫県立歴史博物館に立ち寄られるのがおすすめです。常設展では、姫路城や播磨地域のことがよくわかるはずです。場所は姫路城ループバスで「博物館前」バス停下車すぐです。
【姫路】いっしょに行きたくなる博物館 「兵庫県立歴史博物館」
姫路城のお土産などの情報は、こちらの記事を参考にしてください。御城印や姫路城内売店限定商品を紹介しています。西小天守の特別公開中は、復刻版を含め6種類の御城印が購入できるチャンスです。
(ライター 塚本隆司)
※本記事は取材時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
世界遺産・国宝 姫路城 西小天守特別公開
住所 | 兵庫県姫路市本町68 |
問合せ先 | 079-285-1146 |
開城時間 | 9時から17時(16時最終入城)、西小天守特別公開エリアは16時最終受付 |
休城日 | 12月29日、30日、西小天守特別公開中の休城予定は無し |
入城料 | 18歳以上1,000円(1,050円)、小中高生300円(360円)*()内は 姫路城・好古園共通券の場合 西小天守特別公開エリアは観覧料として+300円 |
アクセス | JR姫路駅、山陽姫路駅から徒歩約20分 姫路駅北口から神姫バスに乗車し「大手門前」で下車、徒歩約5分 姫路城ループバスの場合「姫路城大手門前」下車、徒歩約3分 |
駐車場 | 周辺駐車場を利用 |
HP | https://www.city.himeji.lg.jp/castle/ |
SNS | instagram https://www.instagram.com/my_himeji/ |
ライター 塚本 隆司(つかもと たかし)
姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。