有馬温泉(兵庫県)のお土産といえば、真っ先に思い浮かぶのが『炭酸煎餅』ですね。パリッと軽やかな食感とやさしい甘さで、愛され続けてきた銘菓です。その発祥の店、『三津森本舗』では、創業当時から受け継がれる手焼きの『炭酸煎餅』に加えて、『炭酸煎餅』を使った新感覚スイーツが人気を集めています。まもなく創業120年を迎える同店を訪ね、昔ながらの『炭酸煎餅』の魅力と、新しい味にフォーカスました。
日本三古湯のひとつに数えられる有馬温泉は、豊臣秀吉もたびたび湯治に訪れたと伝わる名湯です。歴史ある温泉街ならではの風情が今も残り、近年は、古い町家をリノベーションしたカフェやショップが増え、若い世代や海外からの観光客にも人気です。
有馬温泉はアクセスの良さも魅力のひとつ。神戸・三宮からバスで約45分、大阪・梅田から高速バスで約1時間、JR京都駅からも高速バスでスムーズにアクセスできるため、日帰りでも楽しめます。
有馬温泉は、「金泉」「銀泉」という異なる泉質があり、世界的にも珍しい7つもの主成分が含まれています。その「銀泉」にあたる炭酸泉は、かつては正体がわからず「毒水」と呼ばれ、人々が近づくことはありませんでした。しかし、1875(明治8)年に成分分析が行われ、飲用・浴用のどちらにも適した天然炭酸水であることが判明。有馬の炭酸泉は、新たな価値を持つ資源として注目されるようになります。
その炭酸泉を生かして誕生したのが、『炭酸煎餅』です。1907(明治40)年頃、『三ツ森本舗』の創業者・三津繁松氏は、「湯治に訪れる病人や体の弱い人でも食べやすく、栄養がとれるお菓子を作りたい」と考え、『炭酸煎餅』の開発に着手しました。しかし、理想の食感を生み出すまでには試行錯誤の連続。当時の大阪・慈恵病院長・緒方惟準氏の助言や、薄焼き煎餅を製造していた職人の協力を得て、ようやく現在の『炭酸煎餅』が完成したそうです。
『炭酸煎餅』の材料は、小麦粉、片栗粉、砂糖、そして有馬の炭酸水だけ。添加物を使わないシンプルな配合は、創業当時からほとんど変わっていません。
焼き上げられた煎餅は、厚さ約1mmという薄さで、パリッと軽やかな食感とやさしい甘さが広がり、小さな子どもから高齢者まで幅広い世代に親しまれています。「体にやさしいお菓子を届けたい」という創業者の想いは、100年以上経った今も、一枚一枚の『炭酸煎餅』に受け継がれています。
有馬温泉の湯本坂沿いに店を構える『三津森本舗』の店舗は、築120年以上という歴史ある建物で、店内には、大正時代に博覧会で受賞した際の賞状なども展示されており、『炭酸煎餅』とともに歩んできた長い歴史を知ることができます。
店内では、職人が手焼きで煎餅を作る様子を見ることができます。鉄製の焼き型に生地を流し込み、人の力で一気にプレスして焼き上げる様子は、まさに職人技。
力の入れ具合ひとつで焼き上がりが変わるため、厚さ約1mmという薄さに均一に仕上げるには、経験と技術が欠かせません。使われている焼き型は昭和30年頃から使い続けられているもので、70年以上経った今も現役で活躍しています。
焼き上がった『炭酸煎餅』は、型からはみ出た部分(バリ)を一枚ずつ手作業で切り落として仕上げます。この作業もスピードと正確さが求められる、熟練職人ならではの技術です。
ここでは焼きたての『炭酸煎餅』を一人一枚試食できます。焼きたてならではの香ばしさと、パリッとした食感は格別です。
味をたしかめてから、お土産に『手焼き炭酸煎餅』を選べるのも『三津森本舗』ならではの楽しみでしょう。
ちなみに、大通りにある『三ツ森本店』では機械焼きの『炭酸煎餅』、抹茶やチョコなどのクリームをはさんだ『クリーム炭酸煎餅』なども販売しています。
削り取ったバリを集めた『せんべの子』(200円)も、隠れた人気商品。アイスクリームやヨーグルトにトッピングしたり、子どものおやつにしたりするのもおすすめです。
兵庫県神戸市北区有馬町290-1
078-903-0101
長い歴史を持つ『三津森本舗』ですが、伝統を守るだけでなく、新しい挑戦も続けています。そのきっかけとなったのがコロナ禍でした。観光客が激減するなか、「家庭でも炭酸煎餅をもっと楽しんでもらえないか」と考え、SNSで『炭酸煎餅』のアレンジレシピを募集。寄せられたアイデアをヒントに、新しいスイーツが誕生しました。そのスイーツを味わえるのが、『三津森本舗』に隣接する『MITSUMORI CAFE』です。
築年数を重ねた町家を改装した店内は、落ち着いた雰囲気。コーヒーは、関西でスペシャルティコーヒーの先駆けとして知られる「HIROコーヒー」の豆を使用しており、『炭酸煎餅』を使ったスイーツとの相性も抜群です。
一番人気は『炭酸煎餅ティラミス』(600円)です。カフェオレ液に浸した『炭酸煎餅』を3枚ずつ重ね、マスカルポーネとバニラアイスを合わせたものを二層仕立てにした、オリジナルスイーツです。仕上げには、『炭酸煎餅』を焼く際にできる切れ端「炭酸フレーク」をトッピング。
パリッとした『炭酸煎餅』とはまったく異なる、しっとりとなめらかな食感は意外性たっぷり。じゅわっと広がるやさしい甘さに、マスカルポーネの爽やかなコクとカカオのほろ苦さが重なり、新しい『炭酸煎餅』の魅力を発見できます。
『炭酸煎餅ミルクレープ』(600円)は、牛乳に浸した『炭酸煎餅』と生クリームを6層に重ねた一品。見た目はまるでミルクレープですが、口に運ぶと『炭酸煎餅』ならではのやさしい風味がふんわりと広がります。
オリジナルの『炭酸和ッフル』(400円)は、『炭酸煎餅』と同じように炭酸水を使って焼くことで、外は香ばしく、中はふんわりとした食感に仕上げています。定番は、「あんこ×アイス」、「あんこ×ホイップ」など4種類。さらに、夏は「抹茶」、秋は「モンブラン」、冬は「サンデー」、春は「桜あん」など、季節限定メニューも登場します。テイクアウトも可能なので、有馬温泉を散策しながら味わうスイーツとしても人気です。
兵庫県神戸市北区有馬町811
078-904-0107
長年愛されてきた『炭酸煎餅』は、有馬温泉を代表する銘菓でありながら、今も新しい楽しみ方を広げ続けていました。昔ながらの『手焼き炭酸煎餅』を味わい、『MITSUMORI CAFE』で新感覚スイーツを楽しむのも、有馬温泉ならではの過ごし方。訪れた際は、ぜひその魅力を満喫してみてください。
※2026年8月時点の情報です。
