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山崎地区「酒蔵通り」にある宿
「山崎旅館Q」は、山崎の中心市街地の「酒蔵通り」の一角にある町家ホテルです。江戸時代から酒造りが盛んだった山崎地区には、今でも「老松酒造」「山陽盃酒造」という2つの酒蔵や、かつて醸造を行っていた「本家門前屋酒店」などが軒を連ね、重厚な商家建築や蔵などが立ち並ぶ歴史的な景観を保っています。
醸造業が営まれていた本家門前屋、北門前屋、そしてこちらの宿は中門前屋。中門前屋は、その昔は醤油と酢の醸造・販売所でした。建物は、屋敷の梁や柱といった昔ながらの建具を再利用し、古民家の風情を残しながら、リノベーションしました。築170年は、この界隈では比較的新しい建物だとか。
醤油の醸造所を廃業後、15~16年前までは、山崎高校の寄宿舎として使っていましたが、当主の「自分たちのルーツを残したい」と改修、その想いを引き継ぎ、夢乃井グループが旅館として家を守っている形ともいえます。
宿がオープンしたのは、2019年のこと。赤穂市の中心市街地にある「加里屋旅館Q」とは姉妹館で、「Q」とは、「Quality」(品質)、「Quest」(街を探求する)、「Quiet」(静かで落ち着いている)、唯一の存在である「Unique」の「Q」を意味し、それぞれを形にできる宿をめざして冠にしています。
また、暖簾の「グリーン」は、森林王国・宍粟をイメージするもの、「Q」の中にいる キツネは、山崎に伝わる伝説からデザインしています。
風情あるフロントロビー周辺
では中に入ってみましょう。
土間部分がロビーになっていて、一番奥がフロントになっています。
雰囲気ある空間で、醤油造りの道具などもさりげなく置かれています。
これ、なんだと思います?木のチェスト?ものいれ?レトロ感たっぷりでしょ。
実はこちら木製の冷蔵庫なんです。ステキでしょ。氷を入れれば、今も立派に使えるそうですよ。
フロントの部分は、天井が高く、立派な梁や柱がダイナミックに現われ、町家の造りが色濃く残り、雰囲気抜群。
武将柄が勇ましい端午の節句の幟も、当時使われていたもの。傷んでいない部分を残してセンスよく飾っています。
土間部分の左手には、フリースペースがあります。観光案内所的な役割もあるので、パンフレット類を並べたり、近隣でとれた野菜などを置いたりすることも。ちょっとしたイ ベントにも使えそうですね。
ロビー部分には、宿泊者が無料で使えるセルフバーがあり、宍粟の薬膳茶や近所の酒蔵のワンカップ酒、お隣・たつの市のメーカー「イトメン」のカップ麺が置かれることもあるそうです。歴史的な建物の中で、地域の味覚に触れるというのも、この宿の大きなコンセプトの一つです。
「この宿の最大の特徴は、ほとんど手直しをしてないところ。昔から林業が盛んな地域なので、木材を贅沢に使っています。全体的に骨っぽい男っぽい造りになっています」とは、夢乃井総務部次長の森脇隆広さん。
三間続きの座敷を使った広い部屋「翡翠」
宿には、バス・トイレ付きで全3室あり、部屋の名前は、森林王国をイメージする緑の和名を使って「翡翠(ひすい)」「常磐(ときわ)」「萌黄(もえぎ)」としているところも、センス抜群です。
それでは、宿で一番広い部屋、1階の「翡翠」を紹介しましょう。
中庭を望む和室と、その隣にソファが置かれたリビング、そして寝室があります。
定員5名で広々としているので、ファミリーの利用が多いそうです。
部屋は檜風呂付で、さすが森林王国・宍粟の宿ですよね。
ゆっくりと旅の疲れを癒せるはず。
お風呂に隣接して「瞑想の部屋」と呼ばれる小部屋があります。風呂上がりの涼みに使ってもよし、庭を眺めながら瞑想してもよし。こぢんまりとしているので、子どもたちが喜ぶかもしれませんね。
この部屋にのみ、ミニキッチンが付いています。宍粟のおいしいものを買ってきて、調理することも可能です。
洗面コーナーもステキです。ちょっぴりレトロな感じも町家の雰囲気とマッチしています。
紅葉の季節に特に人気の部屋「常磐」
2階の「常磐」は、5人定員の段差のある部屋。寝室部分からは1階の中庭を眺めることができます。
実はこの部屋、西日本有数の紅葉スポット「最上山(通称・もみじ山)」を部屋から見ることができるとあって、紅葉の時期には特に人気なんですよ。建物の奥にある山、こちらが最上山です。シーズンには山が真っ赤に染まり、約5万人が紅葉狩りに訪れる名所です。
真ん中の部分にはソファが置いてあります。
湯上りスペースにある一人がけチェアからは、ゆったりと酒蔵通りの町並みを眺めることができます。
2階にはもう一つ、5人定員のお部屋「萌黄(もえぎ)」があります。
地元のお店を利用した夕食付プランも
こちらのお宿、素泊まりが基本ですが、提携店の弁当で部屋食を楽しむプランもあります。山崎町で四代続く人気の鮮魚・仕出し料理店「北川」のお弁当を部屋まで届けてくれるんです。宍粟のお酒とも相性抜群なのでこちらもおすすめですね。
また、徒歩7~8分のところにある、おいしい鶏料理とへぎそばとクラフトビールを楽しめる店「bird man」の料理をいただくプランもあります。店まではスタッフのアテンド付きなので心配なしです。
もちろん、キッチン付きの部屋なら、宍粟のおいしい食材を買ってきて、料理をするのもおすすめです。冬場は鍋が人気だそうです。周りにはJAの直売所や道の駅などもあるので、新鮮な素材はすぐ手に入ります。
楽しみ方は自由自在
『播磨風土記』によると日本酒発祥の地と伝わる「庭田神社」も車で約25分のところにあります。お酒好きの方なら一度は訪ねてほしいですね。もちろん近隣には、2つの酒蔵があるので、おみやげには事欠きません。
宿のロビーにも、おみやげにピッタリな宍粟の“イイもの”を厳選して置いていますので、自分へのごほうびにしてもいいかもしれません。
また、自然豊かな宍粟市には、トレッキング、カヌー、ソーメン流しなどアクティビティスポットがいっぱいです。この宿を拠点にさまざまなアクティビティを楽しんでみてはいかがでしょう。
(ライター 歌見)
※本記事は2023年4月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
山崎旅館Q
住所 | 兵庫県宍粟市山崎町山崎10 |
電話番号 | 079-336-1002(夢乃井内 予約専用) |
営業時間 | チェックイン15:00(最終チェックイン21:00) チェックアウト10:00 |
定休日 | 不定休 |
アクセス | JR姫路駅北口から神姫バス山崎行きで約60分、「山崎待合所」下車徒歩8分、 中国自動車道山崎ICから約4分 |
駐車場 | 3台 |
HP | https://yamasaki-q.com/ |
ライター 歌見(うたみ)
晴れの国・岡山出身で、20代半ばで兵庫県赤穂市に移住。ライターという天職を見つけ、赤穂市内にとどまらず、兵庫五国くまなく回ることができました。五国それぞれに、独特の食文化があり、うまい酒があり…。食いしん坊の私を心身ともに潤してくれます。兵庫県の“間違いない”「食」や「人」や「イイもの」に関わる記事をお届けできたらと思っています。