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【山田錦にふれるツアー2024②】山田錦発祥のまち多可町「稲刈り&酒器作り」編
兵庫県の多可町の「日本一の酒米「山田錦」発祥のまちゴールデンプロジェクト」モニターツアー第2弾を2024年10月19日(土)に催行しました。 同年6月に実施した第1弾企画「山田錦の田植え体験」に続く「山田錦の稲刈り&酒器作り」でしたが、あいにくの雨模様で稲刈りは断念。代わりに「杉原紙の紙漉き」を行いました。山田錦酒器作りと合わせ、当日の様子を紹介します。
3つある多可町発祥のもの
播磨の奥座敷とも呼ばれる多可町は、清流・杉原川や美しい姿の妙見山など、四季の移ろいを感じさせてくれる魅力あるまち。神戸や大阪から車で約80分の距離にあり、日本の原風景を楽しめるとあって今注目のスポットです。
この多可町が発祥のものが3つあります。それは、日本一の酒米「山田錦」、奈良時代から生産が始まった手漉き和紙「杉原紙」、おもいやりのこもった「敬老の日」です。
2025年に開催される「大阪・関西万博」に合わせて兵庫県の魅力を国内外に発信する取り組み「ひょうごフィールドパビリオン」でも発祥地の魅力を伝えるべく『日本一の酒米「山田錦」発祥のまちゴールデンプロジェクト』や『多可の語り継がれる伝統産業・芸能「杉原紙の里における紙すき体験」』、『多可のデリシャスフード』など、多可町の特徴を活かしたプログラムでPRされています。
今回、10月19日(土)に企画されたモニターツアーは「山田錦の稲刈り体験&酒器作り」。同年6月に開催した「山田錦発祥のまちで田植え体験2024」に続き『日本一の酒米「山田錦」発祥のまちゴールデンプロジェクト』を盛り上げる第2弾の企画でしたがあいにくの雨。カミナリも鳴る荒天のため午前中に予定していた稲刈りは断念。雨天時の企画として用意していた杉原紙制作体験に向かいました。
杉原紙は『多可の語り継がれる伝統産業・芸能「杉原紙の里における紙すき体験」』として、ひょうごフィールドパビリオンにも認定されている多可町自慢の特産品です。
体験してみるととても楽しいプログラムで、参加者から「紙の歴史や奥深さなど、新しい発見ができました」「雨天で良かったかも。こんな楽しいものに出会えるとは!」との言葉があったほどです。
午後は予定通りに酒器作り体験をしましたので、「杉原紙の里における紙すき体験」の様子からお伝えします。
語り継がれる伝統産業「杉原紙の里における紙すき体験」
播磨には奈良時代から優れた紙作りの技術があり、和紙「杉原紙」もその技術と伝統を受け継ぎ今に伝えられています。鎌倉時代には公用紙にも使われ、「杉原」という言葉が紙のことを示していたほどだったとか。しかし、明治になると機械漉きや西洋紙の普及で衰退し、大正時代には杉原谷での紙漉きの歴史は幕を閉じ、「幻の紙」と呼ばれるようになってしまったそうです。
昭和になってから杉原紙の研究が進み、昭和47年に町立(旧加美町)の製紙施設「杉原紙研究所」が設立され、杉原紙が復活。現在、県指定の重要無形文化財や兵庫県伝統的工芸品に指定されています。
杉原紙の紙漉き体験ができるのは「道の駅 杉原紙の里・多可」。売店やレストランの他、キャンプやバーベキューもできる総合施設型の道の駅です。
道の駅のとなりを流れる杉原川を渡った先に杉原紙研究所と杉原紙展示・体験工房、杉原紙製品の販売を行う紙匠庵「でんでん」、和紙博物館「寿岳(じゅがく)文庫」があります。
体験したのは、はがき作り。2枚のハガキを作ります。
簀桁(すけた)と呼ばれる道具をハガキサイズにした木枠で紙を漉くところから始めます。
先生の指導のもと、はじめは恐る恐る。慣れてくれば、大胆に手際よく紙をすいていきます。この槽(漉き船)の中に入っているのがどういうものなのかは、となりに建つ杉原紙研究所で詳しく解説してあります。
紙の下地ができれば、思い思いのデザインに仕上げていきます。季節を感じさせる草花やマスコットをあしらったパーツなどが用意され、染料もあるので自分だけのデザインで作ることができます。
参加者の表情も真剣そのもの。作品にどんな思いが込められているのか、完成が楽しみです。
ひとまず完成したハガキは、施設側で水分を吸い取り、乾燥させます。所要時間は、制作に約20分、乾燥に約1時間かかります。
本モニターツアーでは、午後の酒器作り体験後に完成品をお渡ししましたが、待つ間は周辺の散策がおすすめです(別途料金で郵送も可能)。
体験工房のとなりには杉原紙研究所があり、杉原紙の歴史や作業場風景を見ることができます。
モニターツアーでは、杉原紙の復活に情熱を傾けた人々の話などを、杉原紙研究所設立時から携わってこられた井上顧問に特別に解説をしていただきました。
杉原紙の原料や紙になるまでの工程は映像があるので、体験の順番待ちや乾燥を待つ間に見学するのがおすすめです。
原料となるコウゾの木から紙になるまでの過程の大変さ。昔、例えば紫式部が物語を書いていた時代など、紙がいかに貴重なものだったのかがよくわかる映像になっています。
ショップや和紙博物館も見応えがあり、道の駅前にある青玉神社の風格漂う鎮守の杜にも圧倒されます。道の駅での買い物や食事などを考えると、あっという間に時が過ぎそうです。
紙漉き体験は事前予約が必要ですが、当日でも状況によっては体験可能です。
杉原紙研究所(道の駅 杉原紙の里・多可)
住所 | 兵庫県多可郡多可町加美区鳥羽768−46 |
電話番号 | 0795−36−0080 |
営業時間 | 9時〜17時(12月〜3月は9時30分〜16時30分) |
定休日 | 水曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始 |
入館料 | 無料(紙漉き体験は有料) |
アクセス | 中国自動車道、滝野・社インターから国道175号経由、国道427号で50分。 北近畿豊岡自動車道青垣インターから国道427号で20分。 |
駐車場 | あり(無料) |
HP | 杉原紙の里 http://www.sugiharagaminosato.net |
多可町の古民家お食事処「れもんの木」でランチ
杉原紙の体験を終えた後は昼食タイム。その前に、稲刈り予定だった山田錦の田んぼを見学することにしました。
山田錦は、食用米よりもひと月ほど収穫時期が遅く10月初旬〜中旬に稲刈りが行われます。この日は雨でなければ山田錦の稲刈りがあちらこちらで見られたはずでした。
「実るほど頭を垂れる稲穂かな」。今年は暑く晴れの日が多かったため、例年より稲が長く育ったうえ、雨で頭を垂れるどころではなくなっていますが、晴れていれば、とても気持ちのいい風景が見られたと思うと残念。次の機会に期待です。
稲刈りができず残念がっているだろうと、本企画に協力いただいた株式会社アグリイースト様がプレゼントを届けに来てくれました。
新米コシヒカリ2kgと朝採れ枝豆。思わぬプレゼントにツアー参加者も大喜びです。
昼食は、古民家を改装し夫婦でレストラン経営をされている「れもんの木」へ。人気のレストランで、この日も多くの人が訪れていました。
今回用意いただいたツアー限定メニューは、気まぐれ定食(2200円)。近隣農家さんから調達した野菜など地元食材を中心にした滋味深い味わいのランチです。
珍しい野菜も盛り込まれ、ボリューム満点。食べ切れるか心配になる量でしたが、おいしくてあっという間に完食です。多可町の土や水や気候、そして人が生み出す食の魅力を感じられるランチでした。
お食事処 れもんの木
住所 | 兵庫県多可郡多可町中区東山447 |
電話番号 | 090−5178−4077 |
営業時間 | 11時30分〜14時30分 17時〜20時 |
定休日 | 火・水曜日、不定休 |
アクセス | JR加古川線 「本黒田駅」から9.6km |
駐車場 | あり(無料) |
SNS | https://www.instagram.com/lemon_no_ki514/ |
山田錦を育てる土で酒器作り
午後は那珂ふれあい館の体験室で、講師に東条秋津窯(加東市秋津2001-175)の陶工・藤村拓太さんを迎えての陶芸体験です。
藤村拓太さんは、日本一の酒米・山田錦を育てる土を混ぜ合わせ、釉薬にも山田錦の藁灰を使った日本酒を楽しむための酒器「山田錦酒器」を作られています。ミニロクロを使った体験教室も人気で、出張教室もされています。
今回の体験では、多可町で山田錦を栽培している田んぼから譲り受けた土を使用。同じ山田錦の産地でも土の性質には特徴があり、焼きものに違った味わいが出るというから不思議です。
まずは、東条秋津窯の紹介や酒器作りに使用する土や釉薬について、パネルを使って解説。続いて簡単に作り方を説明したのち、体験に入ります。
土の感触を手のひらで感じながら、イメージを形にしていきます。
今回は経験者もいて、デザイン画を持参し「これを作りたい!」とレクチャーを受ける強者まで。個性的な器が出来上がりそうです。
形が出来上がれば、ロクロから外しドライヤーを使って軽く乾燥させます(藤村さんが乾燥作業をおこなってくれます)。
乾燥させる間、20〜30分ほど時間があるので、那珂ふれあい館の隣にある東山古墳群(兵庫県指定文化財)を散策。館長の安平勝利さんが特別に案内してくれました。
東山古墳群は、聖徳太子が活躍していた7世紀初頭に作られたとされ、どのような人たちが埋葬されていたかは、いまだ謎のままです。
一番大きな東山1号墳の中を案内してもらいました。大きな石で囲われた石室(せきしつ)に驚かされます。壁には江戸時代、天保の頃に書かれた落書きが残され、墓として認識された上での観光スポットだったことが想像されます。
那珂ふれあい館の館内には展示室があり、企画展が開催されています。常設では、近隣の人たちが持っていた昔懐かしの家具などを飾ったコーナーがある楽しい施設です。勾玉作りや埴輪制作などの体験教室も開かれています。
乾燥が終わったようなので酒器作り体験に戻ります。
乾燥させたとはいえまだ柔らかい状態。そっと扱いながら、底面の角を取ったり、高台をつけたり名前(印)を入れたりといった工程に進みます。
最後に、釉薬の好みを紙に記して体験は終了です。後は、約2ヶ月後の焼き上がりを待つのみ。思い通りに出来上るか楽しみです。
多可町立「那珂ふれあい館」
住所 | 兵庫県多可郡多可町中区東山539-3 |
電話番号 | 0795−32−0685 |
開館時間 | 9時〜17時 |
休館日 | 月・火曜日(祝日の場合は翌水曜日)、年末年始 |
アクセス | JR加古川線 「本黒田駅」から12km |
駐車場 | あり(無料) |
HP | http://web.town.taka.lg.jp/nakafureai/ |
体験 | 勾玉づくりや土器作りなど ※山田錦の酒器作り体験はバスツアーとして企画したもので不定期開催です |
2025年2月23日開催「多可町日本酒フェスタ」
今回のツアー参加者には、さらに楽しみが残されています。それは、翌年2月23日(日・祝)に開催される「多可町日本酒フェスタ」に合わせたバスツアーへの申込・参加で、「多可町産山田錦を使用の日本酒(ミニボトル)」をプレゼント。さらに6月の田植えツアーにも参加された方には、継続特典として日本酒フェスタで利用できる500円分チケット付きでした。今回、出来上がった器を持参しての参加も特別に認められ、会場で楽しめるさらなる特典も検討されています。
「多可町日本酒フェスタバスツアー」には、前回・今回に参加できなかった人も申込・参加できます。ローカルプライム公式サイトやSNSにて発表しますので、ぜひ応募ください。
昨年の「多可町日本酒フェスタ2023バスツアー」の様子は、こちらを参照ください。
帰りには、多可町の山田錦を使った日本酒や山田錦を使用したスイーツ、多可のおすすめグルメなどがそろった「道の駅山田錦発祥のまち・多可」に立ち寄り、買い物タイム。新鮮野菜など、楽しげに買い物をされていました。
あいにくの天候の中でも、素晴らしい発見ができる多可町の懐の深さ。ひょうごフィールドパビリオン関連の企画はもちろん、今後も多可町に注目です。
(ライター 塚本隆司)
※本記事は2024年10月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。
ライター 塚本 隆司(つかもと たかし)
姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。