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お散歩して、おしゃべりして、お買い物して  第3土曜は「旧市のきさき朝市」

姫路駅の西、かつて卸売市場として栄えた「旧市」

姫路駅の西、かつて卸売市場として栄えた「旧市」には、今でも市場の文化が健在しています。昨年12月、ここに新たな文化が生まれました。いつもどおり軒先で営業する店に交じって、ふだんは別の場所で営業している店主が店舗等の軒先で出店する「旧市のきさき朝市」です。 同エリアにある〈蒲田商店〉の店主・土田由里さんをはじめとする運営委員会のメンバーに、取り組みの趣旨や思いをお聞きしました。早起きが苦手な筆者が、早起きして体感してきた朝市の雰囲気とともにお伝えします。

かつてにぎわった「旧市」に新しい文化が

活気あふれる昭和の市場の風景(撮影:瀬川卯ノ一氏)
活気あふれる昭和の市場の風景(撮影:瀬川卯ノ一氏)

姫路駅の少し西。八百屋や駄菓子屋、おもちゃ屋などレトロな商店が並ぶエリアがあります。
かつては200以上の店舗が軒を連ね卸売市場として栄えていましたが、時代の流れとともに衰退し空き店舗が増加。駅からほど近い場所でありながら、人足が少なくなってしまいました。

昭和の面影が残る現在の「旧市」
昭和の面影が残る現在の「旧市」
三代続く〈枌原(そぎはら)青果〉は、「うちは朝4時から営業してるよ」
三代続く〈枌原(そぎはら)青果〉は、「うちは朝4時から営業してるよ」

しかし今でも市場の文化は変わらず続いており、「旧市」と呼ばれご近所さんから親しまれています。

その旧市に今、新しい文化が根付こうとしています。昨年12月から始まった「旧市のきさき朝市」です。
昔から店を構える店主がいつもどおり営業するなか、ふだんは別のところで営業している店主が店舗等の軒先で出店するという取り組み。このまちを愛する若者が運営委員会を結成し、毎月第3土曜の朝に定期開催しています。

朝市は、旧市の文化に触れるきっかけづくり

朝市でお客さんと話す土田由里さん
朝市でお客さんと話す土田由里さん

運営メンバーのひとり、土田由里さんはこう話します。

「レトロな町並みや、早朝からの営業という独自の時間軸がこのまちの特徴です。また、50年来の目利きの店主がいて、『この人から買えば間違いない』『この人から買う』と考える文化があります。スーパーとちがって、店主に話しかけないと買い物ができないので抵抗感もありますが、実は話してみるとおもしろいんです。そんな旧市がわたしは好きなので、いろんな人に来てもらって、まちの人と話してほしくて。朝市は、旧市を知ってもらうためのきっかけづくりなんです」。

スーパーに行けば一度で日常の用品がそろい、人との会話は最小限ですみます。でも、「この人から買う」買い物には、売り手の顔が見える安心感や地域の情報交換などといった付加価値がついてきます。

〈蒲田商店〉前にて、土田さんとご主人の昌平さん。お二人とも本業は建築関係なのだとか 
〈蒲田商店〉前にて、土田さんとご主人の昌平さん。お二人とも本業は建築関係なのだとか 

姫路市が主催する「第1回リノベーションスクール」を受講したことがきっかけで、旧市に親しみをもつようになった土田さん。
駅西エリアのまちづくりを推進する同スクールは、空き店舗などの遊休不動産の活用方法を考え、オーナーにその活用方法を提案するというもの。土田さんが担当した物件が、当時閉店を考えていた金物店〈蒲田商店〉でした。物販に関心があった土田さんは、蒲田夫妻の後を継ぎ2022年1月に店主に。
内装をリノベーションしたり受け継いだ商品に新しいものを加えたりしながら、「この人から買う」ことの価値を見出してもらえるよう、自身も工夫しているそうです。

日常に特別感を“ちょい足し”

筆者が伺った5月20日の朝市のようす
筆者が伺った5月20日の朝市のようす

土田さんと思いを同じくするリノベーションスクールの受講生のなかで、この地域を盛り上げたいという気運が高まり、運営委員会を結成。
「自分でイベントを主催したこともなければ、パリピでもない。でも、とりあえずやってみないと始まらないと思って」。
そんな土田さんや運営メンバーの思いに賛同した出店者が集い、朝市が動き出しました。

常連さんと、朝市めあてに訪れた人が同じ軒先でお買い物
常連さんと、朝市めあてに訪れた人が同じ軒先でお買い物

朝市は旧市の時間軸にあわせて開催。「日常に少しだけ特別感をプラスした、いわば日常のイベント化ですね」と土田さんは話します。
昔ながらの風景を変えてしまうのではなく、そこになじむように新しい風景を重ね合わせる。それがこの朝市なのです。

おしゃべりしてお買い物して、朝市を歩こう

バイオリンの生演奏が土曜の朝を彩ります
バイオリンの生演奏が土曜の朝を彩ります

それでは、朝市を歩いてみましょう。

既存の商店、朝市のためにつどったお店あわせて20店ほどが狭い範囲に集まっています。 これまでの開催日は雨やくもりが多かったようですが、この日は久しぶりに天気に恵まれました。

恒例のごはんのふるまい。炊きあがる時間にあわせて人が集まります
恒例のごはんのふるまい。炊きあがる時間にあわせて人が集まります
筆者もご厚意に甘えていただきました
筆者もご厚意に甘えていただきました

蒲田商店の前の人だかりをのぞいてみると、土田さんが土鍋で炊いたごはんをふるまっていました。
ほかほかのごはんには、海苔やらっきょう、サラダに大根のオイル漬け、焼き豚といった各店主からの差し入れが添えられています。ぜいたくな朝のワンプレートにたくさんの人の手が伸び、あっという間に土鍋はカラに。

この日お披露目となった「イチバイク」。荷台の什器にチャイなどを載せて移動販売する〈ヒュッティ―〉(右)と、什器製作者の〈木犀〉(中央奥)
この日お披露目となった「イチバイク」。荷台の什器にチャイなどを載せて移動販売する〈ヒュッティ―〉(右)と、什器製作者の〈木犀〉(中央奥)
〈アヤバイクス〉は、自転車の製造から修理、カスタムまで手がけます
〈アヤバイクス〉は、自転車の製造から修理、カスタムまで手がけます

箱型の什器を搭載した古式ゆかしい自転車は、この日デビューの「イチバイク」。旧姫路市中央卸市場の移転に伴い廃棄された自転車が、自転車屋〈アヤバイクス〉と木工作家〈木犀〉の手によって立派なカーゴバイクに生まれ変わりました。

今回イチバイクを使ってチャイのふるまいと焼き菓子の販売をしていたのは、〈ヒュッティー〉。荷物を載せて走りまわる自転車は、市場の風景によくなじみます。
「今後いろんな人にイチバイクを使って販売してもらえたら」と土田さん。次回以降の活躍も楽しみです。

〈ホネカレー〉のカレープレートと〈グリーンハンズコーヒー〉のホットコーヒーを楽しむマダム。カメラを向けるといい笑顔
〈ホネカレー〉のカレープレートと〈グリーンハンズコーヒー〉のホットコーヒーを楽しむマダム。カメラを向けるといい笑顔
〈チャクラバール〉による南インド料理マサラドーサを親子でシェア
〈チャクラバール〉による南インド料理マサラドーサを親子でシェア
筆者が購入した〈ムーニャ〉の焼き菓子。遅すぎる母の日の贈りものです
筆者が購入した〈ムーニャ〉の焼き菓子。遅すぎる母の日の贈りものです

出店者めあてに訪れる人が多く、メインの通りより一本南の路地にある「シェアキッチンあわあわ」もにぎわっていました。

〈かBUる屋〉のチューリップハットをかぶって、ハイチーズ。通りのあちこちでチューリップハットをかぶった人を発見しましたよ
〈かBUる屋〉のチューリップハットをかぶって、ハイチーズ。通りのあちこちでチューリップハットをかぶった人を発見しましたよ
ワンコもお散歩
ワンコもお散歩
〈おもちゃのつちだ〉前では、〈ミナンコブンコ〉による絵本の読み聞かせ
〈おもちゃのつちだ〉前では、〈ミナンコブンコ〉による絵本の読み聞かせ

ここでは紹介しきれないお店や風景もありますが、朝市を歩いた気分になってもらえましたか?
店主とおしゃべりして、買い物して、同じ軒先に居合わせたお客さんともおしゃべりして、おなかを満たして……あちこちで足を止めていると、なかなか前に進めません(笑) それが朝市の醍醐味ですね。

子どもたちも「市場でお買い物」を体験

レザークラフト体験。手元を見つめる視線は真剣そのもの
レザークラフト体験。手元を見つめる視線は真剣そのもの

朝市には、子どもが楽しめる企画もあります。
今回は、「目利きの店主と会話をしながらお買い物」を体験してもらおうと、有志グループ〈ひめじ基地〉と姫路レザーをあつかう〈トマリエ〉がコラボし、ワークショップを開催。姫路レザーで三角コインケースを作り、500円玉を入れて市場でお買い物をするというものでした。

トマリエ店主の赤松さんに教えてもらいながら、道具を使ってコインケースを作っていきます
トマリエ店主の赤松さんに教えてもらいながら、道具を使ってコインケースを作っていきます
完成したコインケースとスタンプカードを首から提げて、市場へ繰り出します
完成したコインケースとスタンプカードを首から提げて、市場へ繰り出します
姫路駅の西、かつて卸売市場として栄えた「旧市」
親御さんとひめじ基地のメンバーが見守るなか、お買い物。500円で何が買えるかな?
おもちゃのつちだでゲットした刀でポーズを決めてくれる男の子。コインケース作りも「楽しかった!」とご満悦
おもちゃのつちだでゲットした刀でポーズを決めてくれる男の子。コインケース作りも「楽しかった!」とご満悦

店主に話しかける前の少し不安げな表情、お買い物ができて達成感でいっぱいの表情。子どもたちがおつかいに奮闘する姿は、朝市を訪れた人の目にほほえましく映ったことでしょう。

赤松さん(左)は土田さんと同じく第1回リノベーションスクールの受講生
赤松さん(左)は土田さんと同じく第1回リノベーションスクールの受講生

トマリエの赤松さんもひめじ基地のメンバーも、朝市運営委員。
学生時代からフリースクール運営などで子どもに関わってきた赤松さんは、「子どもたちにはいろんな選択肢を持ってほしい」と話します。
皮革に魅せられ、本格的なレザークラフト体験ができるトマリエをオープンしたのは3年前。地元姫路の魅力を高めようと、地域でつくるまちづくり協議会の会長も務めます。

「駅西が好き、おもしろいことが好き」というひめじ基地のメンバー。右から、松井さん、三木さん、松岡さん、藤井さん
「駅西が好き、おもしろいことが好き」というひめじ基地のメンバー。右から、松井さん、三木さん、松岡さん、藤井さん

一方ひめじ基地は、第2回リノベーションスクールで意気投合したメンバーによるグループ。2022年5月から旧モノレール橋脚下を拠点に、子どもの創造力や主体性を活かしたイベントを不定期開催しています。
「まちの探検やいしころアートなど、楽しみながらこの地域を知ってもらえるような活動をやっています」と三木さん。
朝市では毎回子ども向けのワークショップをおこなっています。

顔を合わせたコミュニケーション

レトロでポップな朝市のフライヤー
レトロでポップな朝市のフライヤー

5月で6回目を迎えた朝市。
「看板がないことや周知の手段など課題もありますが、毎月継続することが大事だと思ってます」と土田さん。
取り組みを続けてきたからこその喜びもあります。
「恒例のふるまいごはんにアテを差し入れてくださるお店が増えました。今回はじめて差し入れをしてくださったお店もあって。朝市に意義を見出してもらえたのならうれしいですね」。

ひめじ基地の松岡さんは、「旧市の人も朝市に関わってくれている人も、みんな優しい。だから活動を続けることができてます」と話します。

自転車のお客さんが軒先で店主とおしゃべり。旧市の日常です
自転車のお客さんが軒先で店主とおしゃべり。旧市の日常です

人に会わずとも買い物ができる時代。それに加えてコロナ禍以降、対面でのやりとりがずいぶん減ってしまいました。だからこそ、顔を合わせたコミュニケーションにあたたかさや安心感を感じます。

朝市は、リノベーションスクールでめぐりあった駅西を愛する人たちの思いの集大成。これから回を重ねるごとに、地域の文化として浸透していくことでしょう。
次回開催は6月17日(土)。早起きして、ぜひ足を運んでみてくださいね。

(ライター ながら)

※本記事は2023年5月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

旧市のきさき朝市

開催日時毎月第3土曜日の9:00~11:00
場所旧市エリア(姫路市忍町周辺)
アクセス姫路駅から西へ徒歩5分
駐車場近隣のコインパーキングをご利用ください
SNShttps://www.instagram.com/kyuuichi_nokisaki.asaichi/
※出店者情報、子ども向けワークショップ(有料)の内容などはインスタグラムでご確認ください。

ながら いつこ

あんこをこよなく愛するフリーライター。生まれも育ちも兵庫です。魅力ある人や食をメインに取材・ライティングをおこなっています。お気に入りのおやつのようにじっくり味わいたくなる記事をお届けします。

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