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国指定重要文化財の異人館!元アメリカ総領事の邸宅『萌黄の館』を見学

『萌黄の館』

北野異人館街に立つ淡いグリーンの外観が目を引く『萌黄の館』。この建物は明治時代に、かつてアメリカ総領事のハンターシャープ氏(以下、ハンター氏)の邸宅として建てられました。屋敷には正面のポーチや、大きな窓、ベランダなどが備わっており、典型的なコロニアル様式の建築が特徴的。2階のベランダからは、神戸の街並みを一望することができ、フォトスポットとしても人気です。

元アメリカ総領事ハンター氏の邸宅だった洋館

ハンターシャープ氏の私邸として建てられた洋館

各線三宮駅から山側(北)へ歩いていくと、明治や大正期に建てられた外国人の洋館が点在する「北野異人館街」があります。異国情緒漂う街並みは、神戸の人気観光スポットのひとつ。なかでも、『萌黄の館』は淡いグリーンの美しい外観が目をひく建物です。建築時期は1903(明治36)年、アメリカ総領事ハンターシャープ氏の私邸として建てられた洋館で、1980(昭和55)年には国の重要文化財に指定されています。

正門側から見た建物の外観
正門側から見た建物の外観

『萌黄の館』は、2つの異なる形のベイ・ウィンドーや、アラベスク模様が施された階段、部屋ごとにタイルの模様が異なるマントルピースの暖炉など、凝った意匠がいたるところに見受けられるのが特徴です。

開放型ベランダの天井のデザインも特徴的
開放型ベランダの天井のデザインも特徴的

もともとは「白い異人館」と呼ばれていましたが、1987(昭和62)年に行われた改修の際に、下見張りの外壁が淡いグリーンだったことが判明。その後、建築当時の外壁に復元され、現在の名称になりました。また、2016年に放映されたNHK連続テレビ小説「べっぴんさん」をはじめ、数々の映画やドラマのロケ地にもなっており、館内には来館した俳優のサインも展示されています。

1階には応接室、食堂、書斎のほか、非公開エリアには厨房、配膳室があります。

重厚感のある階段

靴を脱いで中へ入ると、まず重厚感のある階段が目に入ります。階段をよく見ると、細かなデザインのアラベスク模様が施されており、存在感たっぷり。

使用している木材は桜の木

使用している木材は桜の木で、強度が強いところが特徴です。正面から見たときに、模様が重ならないよう配置されている点からも、ハンター氏のこだわりが感じられます。

各部屋の造りが豪奢

1階は主にお客さまをもてなす場だったこともあり、各部屋の造りが豪奢なところが印象的です。天井も3.74mと高く、広々とした空間に。各部屋の入り口は門構えのようなデザインが施されており、「それぞれの部屋を1軒の家に見立ててお客さまを招く」というコンセプトがあったのではないかといわれています。

各部屋には窓際に腰掛けられるウィンドーチェアもある
各部屋には窓際に腰掛けられるウィンドーチェアもある

実際にシャープ氏が住んだのは4年間ほどで、そのあとの所有者は、ドイツ人、日本人、アメリカ人、ドイツ人と何度も変わっているのだとか。現在、この館の所有者である小林家(元神戸電鉄社長の小林秀雄氏)に所有権が渡ったのは1944(昭和19)年で、1978(昭和53)年までは実際に住んでおられました。そのため、館内には小林家が所有していた調度品も展示されています。

食堂にある大理石の胸像

なかでも注目してほしいのが、食堂にある大理石の胸像とピアノ。大理石の胸像は、なんとイタリアのファシズム指導者であるムッソリーニが所有していたものなのです!これは小林夫人の祖父で、日本画家の菅楯彦(すがたてひこ)氏が、自身の作品と交換してイタリアから持ち帰った品といわれています。

同じく食堂に展示されている88鍵盤のピアノ

同じく食堂に展示されている88鍵盤のピアノは、ショパンの時代につくられたという希少な品。ショパンの存命期間は1810年から1849年までですから、今から170年ほど前の代物ということになります。そんな貴重な調度品にも注目しながら、じっくりと館内を見学してみましょう。

2階のベランダは神戸の街が一望できるビュースポット

2階は寝室や子ども部屋、居間、化粧室があるプライベートな空間

お客さまをもてなす1階に対して、2階は寝室や子ども部屋、居間、化粧室があるプライベートな空間でした。

どの部屋の暖炉もとっても素敵なデザイン!
どの部屋の暖炉もとっても素敵なデザイン!

2階の注目ポイントは、各部屋に設置された暖炉。暖炉周りの「マントルピース」といわれる装飾にはイギリス・ミントン社製のタイルが施されていますが、このマントルピースは部屋ごとにデザインが違うのです。

2階のおすすめスポットであるベランダ

2階のおすすめスポットであるベランダは、ガイドブックなどにも、たびたび登場する人気の撮影場所です。窓の外には神戸の街並みが広がっているビュースポットで、雑誌や映画の撮影に使用されることも多いそう。

窓ガラス

窓ガラスをよく見ると、ところどころに歪みがあるガラスがはめられています。これは明治期につくられたガラスで、現代のガラスと違って、どこかレトロな雰囲気が感じられます。

ベランダの窓枠付近にはハンモック用のフックもある
ベランダの窓枠付近にはハンモック用のフックもある
ベランダ

また、この場所はベランダなので、雨が入ってくることを前提につくられており、雨水が流れやすいように、やや傾斜があるのも特徴的。窓の下にある立板も取り外しが可能で、風通しをよくするための造りになっているそう。そんな細かな部分に注目しながら見学すると、より一層楽しめますよ。

阪神淡路大震災のときに落下した煙突

そのほか、『萌黄の館』の庭には阪神淡路大震災のときに落下した煙突がそのままの状態で保存されている展示も。建物の壁は、板の重なる部分を表面に段差が出ないように張る「ドイツ下見板張り工法」という珍しい方法でつくられているので、あわせてチェックしくださいね。

『萌黄の館』へのアクセス方法

『萌黄の館』があるのは、各線新神戸駅または各線三宮駅から徒歩15分ほどのところ。シティーループを利用する場合は、北野異人館停留所から歩いて約5分です。シティーループは、神戸の主要な観光スポットをめぐる周遊バスのこと。1日乗車券や2日乗車券を提示すれば、『萌黄の館』でも入館料割引サービスが受けられます。お得&便利なバスなので、神戸観光にピッタリ。
車の場合は、駐車場の用意が無いので近隣のコインパーキングを利用しましょう。

明治期の外国人の暮らしぶりを知ることができる『萌黄の館』。トーマス氏のこだわりが随所に感じられる館内は、凝ったデザインがあちこちに散りばめられており、見どころたっぷりです。9月末までは、兵庫テノワールの一環として、お隣にある『風見鶏の館』と『萌黄の館』の非公開エリアを含む特別見学ツアーを実施中。解説を聞きながら館内を見学したいひとは、参加してみてはいかがでしょうか。

特別見学ツアー参考:
兵庫テロワール旅「風見鶏の館&萌黄の館バックヤードツアー」

(ライター 中田/ウエストプラン)

※本記事は2023年7月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

萌黄の館

住所兵庫県神戸市中央区北野町3-10-11
電話番号078-855-5221
営業時間9:30~18:00(入館は17:45まで)
定休日2月の第3水・木曜
入館料大人400円、高校生以下無料
※シティーループ1日乗車券持参の方350円
アクセス・各線新神戸駅または各線三宮駅から徒歩約15分
・シティーループ「北野異人館」停留所から約5分
駐車場なし
HPhttps://www.kobeijinkan.com/ijinkan_list/moegi
SNShttps://www.instagram.com/kitanoijinkan_moegi/

株式会社ウエストプラン

松田きこ、かさはらみのり、中田優里奈、都志リサほか、兵庫県に精通した女性ライターが、観光やグルメ情報を中心に、阪神間や丹波・丹波篠山を縦横無尽に駆け回って取材します。

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