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神社仏閣、城、茶室、木造建築好きにおすすめ「竹中大工道具館」

竹中大工道具館は、建築が近代化していくなか、大工道具を通じて、日本の建築技術の素晴らしさを後世に伝えていこうとしています。展示物は大工道具だけではありません。優れた道具によって創り出された建物や発展してきた歴史、それを使う技術など、見応えのある展示ばかり。建築関係者のみならず、神社仏閣や城郭、茶道、刀剣ファンなど、多くの人に見て欲しい博物館です。

竹中大工道具館とは

訪れて、見て、その素晴らしさに驚く博物館があります。竹中大工道具館もそのひとつです。

竹中大工道具館の始まりは、1984(昭和59)年。建設業界は、戦後からの高度成長期に大きな変革期を迎え、木造建築は鉄筋コンクリートに変わり、住宅もプレハブ住宅やマンションへと姿を変えていきます。

独特の進歩を遂げた日本の木造建築を支え続けてきた大工道具は、いい品質のものほど摩滅するまで使われ消えていき、新しいものは機械化・電動化され、無くなっていこうとしていました。

1841〜1865年頃、京都伏見・桃山天満宮を建てた大工・坂田岩次郎が社殿完成時に奉納した道具59点(京都市指定文化財)。1人の大工が持っていた道具一式が残っているのは珍しい

これら古い時代の道具や優れた道具を民族遺産として収集し、研究・展示を通じて工匠の精神や道具鍛冶の心を後世に伝えたいと開館されたのが竹中大工道具館です。手掛けたのは、日本を代表するスーパーゼネコンのひとつ、株式会社竹中工務店です(現在は公益財団法人竹中大工道具館が運営)。

竹中大工道具館の入口

竹中工務店の創業は1610(慶長15)年。織田信長の元家臣が名古屋で神社仏閣の造営に携わったのが始まりとされています。明治になって近代的な建築にも力を入れることになり神戸に進出し本社を置きました。後に本社は大阪へ移転しますが、この時、本社と社長の邸宅があったのが、現在の竹中大工道具館の場所です。

開館時は神戸市中央区(相楽園の近く)にありましたが、30周年を迎え手狭になったことや施設の老朽化のため、2014(平成26)年に一部の建物(表門と休憩室(リフォーム)、茶室)を残し移転オープンしました。

建物は地上1階、地下2階のため、外観は塀と緑に囲まれた邸宅にしか見えません。小さな案内板が目印になります。

本館は近代的な和風の建築

大邸宅跡の立派な門をくぐり、庭を通って本館へ。自動ドアは木製。木の表面をよく見れば釿(ちょうな:鉋(かんな)の無い時代からある木を削る道具)などを使った削り痕を残す「名栗(なぐり)仕上げ」になっています。

中に入れば受付カウンターは木製、壁はクロスではなく白漆喰。ロビーの天井も木製で、大きなガラス窓を通して、庭の景色を一望することができます。

木がもたらす和の美しさだけで十分に満足してしまうところですが、それだけではもったいないのが竹中大工道具館。建築に興味がある人なら「柱はどこだ?」「空調はどうなっている?」と、現代建築のもつ技で建てられた建物のそのものにも見どころがいっぱいです。

天井が高いロビー。取材日は企画展が開催されていた

ロビーは企画展などのイベントに使われることもありますが、通常は来館者が外を眺めながらくつろいだりする場所として、木工作家らの手によるイスが使える形で置かれています。木製家具に興味がある人にとっては、興味深い空間でもあります。

大きな土壁

階段部分の1階から地下2階までを貫く大きな土壁も必見。鏝(こて)による土壁削り出し仕上げになっています。土壁が半乾きの時に仕上げなければならないため、この大きさならば多くの職人が一斉に仕上げ作業を行わなければなりません。幾人もの手が入っているのにかかわらず、継ぎ目のない均一した仕上げに職人(左官)のレベルの高さが伺えます。

多くの技術がつぎ込まれている建物ですが、これらの説明書きはありません。何気ないところに技をしのばせているところに、設計者や職人たちの粋を感じます。

7つのコーナーに分かれた展示施設

展示は7つのコーナーがありますが、どこから見ても楽しめます。説明パネルなどは少なく、スマホで二次元コードを読み取れば解説を聴くことできる仕組みや、タッチパネル式の情報表示端末があり、詳しい解説を動画やゲーム感覚で楽しめるようになっています。(多くの解説が日本語、英語、中国語、韓国語の4か国語に対応しています)

竹中大工道具館が伝えたいことを表現しているメインの展示が一番目を引くところにあります。

奈良の唐招提寺金堂(国宝)の柱や屋根を原寸大で復元した模型です。高さは約7m。現地では、下から眺めるだけですが、ここでは近くで、横から斜め後ろからでも見ることができます。

ほとんど釘を使わず(屋根部分を支えるために釘が使用されています)どのように組み立てているのかわからないほど複雑です。

これが建てられたのが、今から1300年ほど昔。現代のように道具や機材が発展していない時代に、どのようにして作られたか、棟梁と呼ばれる人が何を考えどのように仕事を進めてきたのかなどが、「歴史の旅へ」「棟梁に学ぶ」「道具と手仕事」といったコーナーで解説されています。

棟梁の言葉(宮大工・西岡常一氏(1908-1995)の肉声も残っていて、聞くことができます)
江戸初期の大工技術書『匠明(しょうめい)』に「五意達者にして昼夜怠らず」とある。下は大工の教科書のレプリカ

先人たちが残してくれた言葉の重さを感じる展示がいくつもあります。

時代によって使われた道具の違いもわかるので、神社仏閣や城郭建築に興味がある人には、特におすすめします。今後の鑑賞ポイントに幅と深みが出ること間違いありません。

薬師寺の伽藍復興の端緒となった金堂・西塔再建を担当した宮大工・西岡常一氏のノート
茅負(かやおい、写真手前で横になっている木)が反っているのがわかる。垂木(茅負の下にある複数本の木)は、湾曲に合わせて端にいくほど断面が平行四辺形になっている

「名工の輝き」コーナーでは、道具を生みだしてきた名工たちの作品が並びます。

道具鍛冶の最高峰と呼ばれた千代鶴是秀氏(1874~1957)

なかでも道具鍛冶の最高峰と名高い千代鶴是秀は、明治生まれで昭和32年に亡くなりますが、彼を越える職人は今もいないといわれている名工。手作りの大工道具は1つ1つが特別なものだと、自分の作品に「銘」を入れ名前を付けるようになりました。不世出の鍛冶職人の心意気は、刀剣ファンも興味を持つであろう作品ばかり。大工・江戸熊との逸話は胸を打つ感動ものです。

「ノコギリや金物なら三木だろう」という人もいるでしょう。もちろん、三木の職人の作品も展示されています。

茶室に興味がある人は「和の伝統美」コーナーにある茶室スケルトン模型がおすすめ。京都の大徳寺玉林院の茶室「蓑庵(さあん)」(重要文化財)を柱や梁、竹組だけにした実物復元模型です。実物でもわからない数寄屋大工の技を目にして下さい。

丸太をどのように組み合わせしているか、手で触れて確認ができる

ちなみに、敷地内の中庭には3室ある茶室棟が建ち、春と秋に限定公開されています。「一滴庵(いってきあん)」と名付けられた三畳の小間は、館内の茶室スケルトン模型にもなっている名席・大徳寺玉林院の「蓑庵」の写し、七畳広間は表千家家元にある啐啄斎(そったくさい)好み七畳の間の写しという貴重なものです。

垣根の向こうに露地があり、茶室棟へとつづく

他にも「世界を巡る」コーナーでは中国やヨーロッパの大工道具と比較した展示、「木を生かす」コーナーでは、森の恵みを生かす伝統の知恵などを紹介。木の香りを確かめることができる展示もあります。

一般的な滞在時間は1時間〜2時間ですが、少しでも興味がある人なら2時間では足りないでしょう。

そのためか、竹中大工道具館は、当日限り何度でも入館可能です。ランチに外出しても構いません。ただ、周辺に飲食店が少ないのが残念。休憩室は、飲食可能なので弁当持参で訪れるのもいいでしょう。自販機とコーヒーマシンが置いてあります。

1970年頃の建物をリフォームした休憩室。ボイラ室跡の煙突が残っている
休憩室内部。木をふんだんに使っている。机やイスは木工作家の作品

ミュージアムショップ、体験イベントもおすすめ

駐輪場から小山越しに花火が楽しめます

帰りにはミュージアムショップ(受付カウンターの後ろ)もぜひ立ち寄って下さい。

オリジナル商品では、トートバッグや手ぬぐい、ポストカードがあります。

人気商品は大工道具をかたどったストラップやキーホルダー、鉛筆削りなど。木工作家が端材を利用して作ったものなので、いつでもあるわけではありません。気に入ったら即購入をおすすめします。

竹中大工道具館には、体験イベントも人気です。

子ども向けを含め体験イベントやワークショップが開催されています。申込方法は先着順や事前申込(抽選)など、内容によって変わります。当日参加できるものもあります。

詳しくは公式サイトで確認ください。

シティループバスで行こう!竹中大工道具館へのアクセス方法

「Kobe 1-day loop bus ticket」
神戸市内の観光には周遊デジタルバスチケット「Kobe1-day loop bus ticket」がお得!

神戸市内の主要観光エリアを結ぶシティーループ、ポートループ、神姫バスの路線バス(山手線・神戸空港線を含む神戸中心エリアを運行する路線バス)が1日乗り放題のデジタル乗車券。神戸市内の観光地をぐるっと巡りたい方におすすめです。大人700円・小人300円で1日乗り放題なので、アクセス方法をバス一択でシンプルに神戸市内観光が楽しめます。竹中大工道具館は駐車場がありますが、数量が限られており満車になることが多いそうです。公共交通機関でのアクセスがおすすめです。

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新神戸駅バス停は、新幹線の新神戸駅前にあります(2階)。下車すると東方面(布引ハーブ園に行くロープウェイ乗り場の反対方向)、団体待合場所を過ぎてスロープを渡ると右手の塀に小さな看板があります。竹中大工道具館の裏手にあたるため、ぐるりと正面へお回り下さい。徒歩で約3分の距離です。

地下鉄を利用する人は、神戸市営地下鉄「新神戸駅」を下車。北出口2を新幹線のりば方向へ。あとは、シティーループバスと同じです。

神戸市営バスを利用の人は、2系統・18系統「熊内6丁目」下車徒歩約2分です。

車の場合、6台分の駐車スペースがありますが、満車の場合が多く、周辺駐車場もわかりにいくいうえ満車のことがあるため、公共交通機関の利用をおすすめします。

(ライター 塚本隆司)

※本記事は2023年6月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。



竹中大工道具館

住所神戸市中央区熊内町7-5-1
電話番号078-242-0216
営業時間9時30分〜16時30分(入館は16時まで)
定休日月曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始(12月29日~1月3日)
料金一般700円、大学生高校生500円、65歳以上5 00円、中学生以下無料
アクセス山陽新幹線「新神戸駅」中央改札口より徒歩約3分
神戸市営地下鉄「新神戸駅」北出口1または北出口2より徒歩約3分
シティーループバス「12新神戸駅前(2F)」下車徒歩約3分
神戸市バス2系統・18系統「熊内6丁目」下車徒歩約2分
駐車場6台(無料)*満車の場合が多いため公共交通機関の利用をおすすめします
公式HPhttps://www.dougukan.jp
公式
SNS
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ライター 塚本 隆司

姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。

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