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神戸市と神姫バスが取り組む『貨客混載の実証事業』。地域貢献と今後の課題について

小型車両を活用したマルシェ型の移動販売

人口減少による過疎化などの原因で、郊外を走る路線バスの利用客が減少していることは日本全国で問題になっています。バス業界において、路線維持は今取り組むべき大きな課題。神姫バスも、国土交通省が進める「共創による地域交通形成支援事業」に選出され、神戸市と共に地域交通の今後のあり方を模索しています。そんな中で、今回は小型車両を活用したマルシェ型の移動販売に密着。路線維持と地域活性化に向けた取り組みについてご紹介します。

なぜ貨客混載の実証事業を行うのか

路線バス
路線バス

人口減少や少子高齢化などによって郊外を走る路線バスの利用者が減り、輸送需要が低下している現状はバス業界の大きな課題です。利用者側としても、過疎化が進む地域ではスーパーなどの生活に必要な施設が撤退し、バスで遠くまで買い物に行く必要性に迫られています。さらに路線バスが通らないエリアに住む人、その多くは高齢者ですが、買い物に困るという問題も出ています。

写真提供:『神戸市都市局駅まち推進課』
写真提供:『神戸市都市局駅まち推進課』

そこで、昨年より神戸市、神姫ゾーンバス(株)、双日(株)、兵庫六甲農業協同組合が、相互に連携・協力して取り組んでいるのが『貨客混載の実証事業』です。「貨客混載」とは、乗客を乗せたバスの空きスペースを使ってモノを運ぶ仕組みのこと。モノを運ぶことによって新たな収入を得ながらバス路線を維持するとともに実証事業では、地域の生活サービスの向上、地域活性化を図ることも目的としています。

写真提供:『神戸市都市局駅まち推進課』
写真提供:『神戸市都市局駅まち推進課』

神姫バスでは、これまでに「神戸-三田」間や「神戸-西脇」間など、さまざまな路線で「貨客混載の実証事業」を実施。農産物直売所の野菜や、百貨店のデパ地下スイーツなどの運送を行いました。利用者からも「わざわざ買いに行かなくても買える」と好評です。

「出張販売」に密着

エキソアレ西神中央
エキソアレ西神中央

今回取材した出張販売は、既存のバス路線を活用した『貨客混載』につなげるための実証事業です。
西神中央駅前のショッピングセンター「エキソアレ西神中央」で販売している商品を移動販売車に積み込んで、出張販売を行います。

「ダイハツハイゼットトラック(Nibako積載)」

使用する車両は、神戸市が兵庫ダイハツ販売株式会社から提供を受けている「ダイハツハイゼットトラック(Nibako積載)」。神戸市と兵庫ダイハツ販売株式会社は、地域課題の解決や、まちの活性化のために連携協定を締結しており、今回はコンパクトさを活かした車両で住宅街の一角にある「押部谷東地域福祉センター」で出張販売を実施しました。

まずは「エキソアレ西神中央」の搬入口から移動販売車へ、準備してあった商品の積み込み作業を開始。準備が整い次第、目的地の秋葉台地区「押部谷東地域福祉センター」へ向かいます。

「押部谷東地域福祉センター」

出店先の「押部谷東地域福祉センター」は、「エキソアレ西神中央」から車や公共交通機関で15分ほどのところ。オープン前にも関わらず、すでに数人のお客さんが列を作って待っていました。「前回買えなかったものを買いに来ました」というリピーターも多く、皆さんこの移動販売を心待ちにされていることがわかりました。

「押部谷東地域福祉センター」で販売したのは「神戸珈琲物語」の『生クリーム食パン』・『ぶどうパン』・『プレーンラスク』、「神戸ふたみ堂」の『三笠もんぶらん』、「旬菜みやこ」の『あん入りくずもち』、「姫路一貫楼」の『豚まん(2個入り)』の6商品。

今回、「押部谷東地域福祉センター」で販売したのは「神戸珈琲物語」の『生クリーム食パン』・『ぶどうパン』・『プレーンラスク』、「神戸ふたみ堂」の『三笠もんぶらん』、「旬菜みやこ」の『あん入りくずもち』、「姫路一貫楼」の『豚まん(2個入り)』の6商品。「神戸珈琲物語」の統括マネージャー・守道さんが販売員となり、これらの商品を販売します。

「神戸ふたみ堂」の『三笠もんぶらん』
「神戸ふたみ堂」の『三笠もんぶらん』

オープン直後から30分ほどは列が途切れることなく、人気商品はあっという間に完売。「押部谷東地域福祉センター」では、当日パソコン教室を行なっていたこともあり、その利用者が多く立ち寄っていました。

途中で雨が降ってきたこともあり今回の利用者は30名ほどだった
途中で雨が降ってきたこともあり今回の利用者は30名ほどだった
小型車両を活用したマルシェ型の移動販売に密着

中でも印象的だったのが、守道さんとの会話を楽しむ利用者の姿。「これはどんな商品なの?」「おすすめはある?」など、短時間でも会話を交わしながらの買い物に笑顔があふれていました。

利用者や事業者の声と今後の課題

販売を担当した守道さん

今回、販売を担当した守道さんによると、「神戸珈琲物語」が「出張販売」に参加したのは、「バス路線が減少し、来店できなくなるお客様が増えると私たちも困ります。何かできることがあれば」との思いから。会社も地域貢献ができるならと、移動販売の参加に前向きでした。

利用者にはアンケートも実施している
利用者にはアンケートも実施している

「お店での接客と違って、対面販売ではじっくりお客様と向き合うことができるのがいいですね。自社の商品を普段届けられない方々に届けられるのはもちろん、どういった商品が求められているのか、お客様との会話の中でニーズをリサーチできる。売上以外の見えない価値も大きいと思います」

「地域の人たちとの触れ合いも楽しいです」と、接客中は常に笑顔でお客さんとの会話を続けていた守道さん。

他地域(西区月が丘)での貨客混載の取り組みについて紹介したパネル
他地域(西区月が丘)での貨客混載の取り組みについて紹介したパネル

今回の実証事業では、バス路線の維持に向けた取り組みである貨客混載につなげていくため、商品の販売を通じ、地域の方とのつながりを大切にしていく必要があります。

利用者からは「便利で助かる」「普段買えないものが並んでいて楽しい」との声も多い出張販売。高齢化が進む地域においては、生活サービスの向上や、地域のコミュニケーション活性化の一助になっていることは明らかです。出張販売をきっかけとして、路線バスを活用した貨客混載につながり、人口減少にともなう路線維持への活路になるのか。今後の取り組みにますます期待が高まります。

出張販売について

移動販売車を活用した出張販売の実証事業

出張販売「出店予定店舗」

(ライター 中田/ウエストプラン)

※本記事は取材時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

株式会社ウエストプラン

松田きこ、かさはらみのり、中田優里奈、都志リサほか、兵庫県に精通した女性ライターが、観光やグルメ情報を中心に、阪神間や丹波・丹波篠山を縦横無尽に駆け回って取材します。

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