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【丹波篠山】やさしい味わいの日本酒『秀月』の『狩場一酒造』が造る、里山と農地を守るはじめの一歩の酒

『狩場一酒造』

『狩場一酒造』は、丹波篠山ICから6kmほどの静かな地、波賀野にある酒蔵です。1916(大正5)年の創業から100年以上、丁寧な酒造りを行ってきました。銘柄は『秀月』、現在は四代目当主の狩場一龍(かりば かずたつ)さんと杜氏の竹内直樹さんが蔵を率いています。2022年からは100年後も続く里山モデルを作ろうと動き出した「ミチノムコウ」プロジェクトに賛同して、会員とともに新しい純米酒造りにも取り組んでいます。

名酒『秀月』の誕生

『狩場一酒造』

初代・狩場藤蔵は酒造りの名手として名を馳せた丹波杜氏でした。彼は、この古市の地形や環境を見て、必ず良い水があり、おいしいお酒が造れると確信したそうです。そして全財産をつぎ込んで井戸を掘り始めます。しかし水はなかなか出ませんでした。何度も挑戦してようやく探り当てた水源が今もこんこんと湧き続けているのです

醸す酒に『秀月』

1957(昭和32)年、古い木造蔵の上に、蒼い月を見た三代目当主は、あまりにも美しい光に魅せられ、醸す酒に『秀月』と名づけました。澄みきった空に浮かぶ月の光のように、人の心にしみゆくお酒を、ひたすらに作り続ける、それが狩場一酒造の思いなのです。

『秀月』の酒は、やわらかな甘みと味わい深いのが特徴

『秀月』の酒は、やわらかな甘みと味わい深いのが特徴です。そのやさしい味わいは、食事と一緒に楽しめる食中酒として多くのファンを虜にしています。造る量は決して多くはないため、ほとんど地元で消費され、長いあいだ、他府県で飲むことは難しいお酒でした。

麹室を新造して大吟醸へ挑戦

狩場一龍社長
狩場一龍社長

酔うためにお酒を飲んでいた昭和の時代を過ぎ、今は食事をおいしくいただくため、上質なお酒をたしなみたい、という人が増えているようです。市場に多く出回っていない地酒を求める愛飲家も増えています。地元の人に愛されるのはもちろんですが、もっと多くの人に飲んでほしいと、狩場さんは2016(平成28)年に大吟醸造りに挑戦します。

麹室(こうじむろ)

大吟醸というのは米を50%以下まで磨き(削ること)、温度管理にも気を配らないといけない繊細なお酒です。そのため、酒造りの要となる麹室(こうじむろ)も新しく作り替えました。

竹内直樹杜氏
竹内直樹杜氏

長く杜氏を努めた藤井隆男氏が高齢のため引退し、その技を引き継ぐ竹内杜氏が蔵人とともに日々酒造りに励んでいます。日本酒の原料は、米と麹と水(時に醸造アルコール)。発酵という目に見えないしくみで醸されるすべての工程に目を配り、手間を惜しまずに丁寧に造る、それが『秀月』の味を決めていきます。

古酒『熟成大古酒』

60%まで磨いて冷蔵で5年熟成させた古酒『熟成大古酒』も近々販売できそうです。日本酒の古酒はあまり見かけませんが、ブランデーを思わせるようなまろやかな深みとやわらかい味で、ストレートやオンザロックで飲むのがおすすめだそう。

『月の雲海 うすにごり』

季節ごとに味わいの異なるお酒が登場しますが、筆者が個人的に楽しみにしているのが、これから仕込んで2月ごろ発売になる『月の雲海 うすにごり』です。瓶内二次発酵によるさわやかな微発泡が特徴の純米大吟醸なんです。

100人で造る「ミチノムコウ」プロジェクト

稲刈りの様子
稲刈りの様子

耕作放棄地や休耕田の増加は日本中で問題になっています。この丹波篠山も例外ではなく、先人たちが大切に守ってきた自然環境が荒廃していきます。そんな状況を少しでも改善しようと地元、吉良農園の吉良佳晃さんが中心となって、活動を始めたのが新しい里山作り「ミチノムコウ」プロジェクトです。

ミチノムコウ】インスタグラム

「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」プロジェクト

その中で生まれたのが「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」プロジェクトです。一口3万円でメンバーになり、田植えから収穫までの米作りと酒造りを体験するというもの。
吉良さんからこの話を持ちかけられた時、地域の田んぼが荒れていくことに危機感を持っていた狩場さんは、こころよく引き受けました。以前から麹用の酒米は自身で作っていたため、田んぼの状況はよく知っていたのです。

『五百万石』

そしてプロジェクトは2022年の田植えからスタート。狩場さんのアドバイスによって、酒米の『五百万石』を作ることにして、農業のプロである吉良さんが主導し、無事に秋に収穫できました。耕作放棄地での栽培に不安はあったものの等級検査でも良い結果が出て、実際に仕込んだところ発酵力が旺盛な元気のある酒米だったそうです。狩場一酒造で仕込んだ発泡性の特別純米酒がその年の12月に完成し、名前は100人のメンバーで「ユメノツヅキ」に決めました。おいしかったことは言うまでもありません。

2023年の「100人ではぐくむ名前はまだ無い日本酒」プロジェクトも仕込みが終わり、完成を待つばかりです。今回は12月に発泡性を、2024年9月にひやおろしを届けるそうですが、お酒の名前はまだ決まっていません。この会のメンバー以外でも狩場一酒造の直売所で購入できるそうですが、数に限りがあるので、タイミングがよければ…ですね。

「ミチノムコウ」プロジェクト

狩場さんは「ミチノムコウ」プロジェクトに関わるまで、発泡性のお酒を造ったことはありませんでした。吉良さんたちが新しいことに挑戦するなら自分たちも新しいことをやってみようという気持ちから生まれたお酒です。地元以外で飲食店とのコラボイベントをしたり、試飲会にも積極的に出たり、「挑戦」が続いています。

(ライター 松田/ウエストプラン)

※本記事は2023年10月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

狩場一酒造株式会社

住所兵庫県丹波篠山市波賀野500
電話番号079-595-0040
営業時間10:00~18:30
定休日なし(正月を除く)
アクセスJR宝塚線古市駅から徒歩15分
駐車場あり(10台)
SNShttps://www.facebook.com/syuugetu
https://www.instagram.com/kariba1_syugetu/
https://twitter.com/kariba1_syuzo

株式会社ウエストプラン

松田きこ、かさはらみのり、中田優里奈、都志リサほか、兵庫県に精通した女性ライターが、観光やグルメ情報を中心に、阪神間や丹波・丹波篠山を縦横無尽に駆け回って取材します。

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