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東条川体験⑥鴨川ダムを撮る!「東条川疏水写真撮影会in鴨川ダム」が開催されました
北播磨地域の水資源を支える東条川疏水。その源流は、東条湖として知られる鴨川ダムです。農水省の戦後初のコンクリートダムとして造られた鴨川ダムの魅力と東条川疏水の重要性を知ってもらうため「鴨川ダム撮影会」が2024年11月7日(木)に開催されました。
今回初めての試みのモニターツアーでありながら、募集開始から1週間で満席となった本企画。開催後の反響も上々。特別感たっぷりの撮影会の様子を紹介します。
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東条川疏水写真撮影会IN鴨川ダム
鴨川ダムは、1951(昭和26)年に完成した農水省の戦後初のコンクリートダムです。降水量が少なく水不足に悩まされてきた北播磨地域と戦後の食糧難を解消すべく造成されました。
歴史的な点については、10月25日(金)に「東条川疏水を知る 鴨川ダム歴史探訪」として、モニターツアーが開催され、紙芝居を交えた鴨川ダムの歴史や今回の鴨川ダム撮影会と同じコースを見学しましたので、別記事で紹介しています。興味のある方は、そちらも参考にしてください。
この歴史的な鴨川ダム。普段はダムの上部・通廊部分だけの開放ですが「鴨川ダム撮影会」では、ダム堤体内部監査廊や下部エリアなど、普段は入ることのできない場所の見学や撮影できる特別な企画。施設内を一般向けに公開した撮影会の開催は、今回が初の試みです。
撮影会では、神戸芸術工科大学の山本忠宏准教授を講師に迎え、撮影のコツや注意事項、撮った写真の講評をいただき、さらに地域の美味しいものが詰まったお弁当もある充実の内容。発表から1週間で定員が埋まったのも納得です。
東条川疏水の解説と撮影の心得
撮影会会場となったのは、観光旅館「東条湖グランド赤坂」。東条湖湖畔にあり、全室レイクビューで、2階の大広間からも東条湖を眺められる最高のロケーションです。
この日の東条湖の貯水率は70%程度。1週間前までは貯水率30%でしたが、季節外れの台風(熱帯低気圧に変わっていましたが)が秋雨前線を刺激し雨が降ったおかげで、例年並みの貯水量まで回復しました。
まさに恵みの雨。降水量の少ない地域だけに、水資源は大切です。
撮影会は、定員10名と少人数での開催という事もあり、スタッフを含め簡単な自己紹介から。それぞれの写真歴からダム愛まで、時にはどよめきがおこりながら、進められて行きます。
持参するカメラは必ずしも一眼レフカメラではなく、スマートフォンのカメラでもOKで、今回の参加者にもスマートフォンで参加された方もいました。
続いて、東条川疏水の紹介をする解説動画を上映。参加者は姫路市や西宮市、宝塚市に加え京都府からの参加もあって、初めて聞く話に興味津々のようです。
撮影に入る前に、講師の山本先生が「5つの写真撮影の心得」を伝授。詳しい内容は、参加者の特典として紹介するのを控えますが、安全への配慮や気づきのきっかけとなる言葉が散りばめてあり、改めて認識したことやすぐに実践したくなる話でした。
話を聞けば聞くほど撮影に出たくてウズウズしてきたので、撮影場所である鴨川ダムへと向かいます。鴨川ダムまでは徒歩5分です。
鴨川ダムを撮る
鴨川ダムは地元の小学生(4年生)が校外学習の一環で見学に訪れ、地域の歴史や先人の知恵を学ぶ場所になっていますが、景色を楽しんだり、撮影したりするにも十分魅力的な場所です。
例年なら湖畔を彩る美しい紅葉が見られる時期でしたが、今年の色づきは遅れているとのこと。紅葉シーズンには、近隣の「播州清水寺」と合わせておすすめスポットです。
「鴨川ダム撮影会」の魅力は、なんといっても普段は入れないところに入れ、撮影もできるというところ(撮影NG部分も存在します)。
はじめに立ち寄ったのは、鴨川ダムの心臓部「ダム操作室」。ダム好きにはたまらない場所のようです。
その後、ダムの銘板前で記念撮影。
ヘルメットを着用したら、いよいよ鴨川ダム内部の見学です。ただし、見学用に造られた場所ではないので、急で長くて薄暗い階段もあります。しかも施設内合計で240段。「怖い人は無理しないように」との呼びかけがされるほどです。
でも、ダム好きの参加者。ワクワクしながら、時には立ち止まり撮影をしながらゆっくり進んでいきます。
ダムの内部である監査廊には、70年以上も前の建設当時の痕跡が今も残っています。建設時にコンクリートを流し込むための木の枠型がそのまま残っていたり、天井からの雫が凝固して鍾乳洞のようになっていたりと、歴史を感じさせてくれます。
参加者も思い思いのアングルで、カメラを構えています。
撮影会は、ダムの内部にとどまりません。建設時にコンクリートを練るために造られた施設「ミキシングプラント」跡も見学。
廃墟化した佇まいながら、時の流れに逆らうようにドンと構えたままの姿に、圧倒されます。
今回のコースで、唯一ダムを仰ぎ見ることができる場所もあり、参加者もレンズを向けていました。
取水塔や洪水吐ゲート巻上室(ダムの放流機能を担う施設)も見学。取水塔は珍しい半円柱型をしており、歴史を感じさせるデザインだそうです。
他にも参加者は、さまざまなところでカメラを構えます。ファインダー越しに見た風景にどんなものがあったのか。楽しみです。
昼食を挟んで作品発表&講評
時間はあっという間に過ぎ、名残惜しみながら撮影タイムは終了。東条湖グランド赤坂に戻って昼食です。
用意されていたのは、三田市や加東市、大阪市などで展開している料理店「和がや」の特製弁当。北播磨地域の食材がふんだんに使ってあります。特に、おおむね100日かけて飼育される多可町産の銘柄鶏「播州百日どり」。程よい硬さ(歯ごたえ)がありながらジューシーさを保ち、豊かな旨味が特徴で、炊き込みご飯やから揚げ、黒田庄牛を使ったコロッケなどもあって食べていても楽しい弁当でした。
参加者は、特製弁当を味わいながら、この日撮った写真のチェックを行い、講評をもらうための写真を選びました。
参加者の撮影した写真を講評してくれる山本先生の専門分野は、写真表現とまんが表現史。著書も多数あり、東条川疏水のパンフレットなどに使われている写真も山本先生が2年ほどかけて撮影されたもの。東条川疏水への愛着も深い先生です。
参加者は2枚の写真を提出し、スクリーンに映した状態で1人あたり5分程度の時間で講評は進んでいきます。数でいえば全部で20枚ほど。順位付けなどは無く、写真そのものから感じとった事をコメントしていただきました。
おもしろいと感じたのは、参加者がそれぞれの個性を表現しようと、他の人が発表しないような写真を選択したところ。2枚の選び方に意味を持たせる人もあり、山本先生も「撮ることと同じくらい選ぶことも重要」と話されるなど、見ているだけでとても楽しい講評会になりました。
本当は作品の全てを紹介したいところですが、一部だけ紹介します。補正や編集をしていない撮ったままの写真です。
鴨川ダム撮影会を終えて
今回のモニターツアー後に、山本先生が「思い切った写真を出してくれる人が多くておもしろかったです。」と話された撮影会。参加者のダム愛もさることながら、被写体としても鴨川ダムが魅力的だったのではないかと感じました。
撮影会の開催地となった鴨川ダムが完成したのは、1951(昭和26)年11月23日。この11月23日を「東条川疏水の日」と定め、地域の様々な団体による東条川疏水を守る活動の発表会が行われるなど、東条川疏水ネットワーク博物館会議を中心に多くのイベントが開催されています。
「2025大阪・関西万博」に合わせて兵庫県が魅力ある地域の体験を発信していく取り組み「ひょうごフィールドパビリオン」にも「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!」として登録していることから、これまで以上に東条川疏水について広くアピールしていく予定とのことです。
今回の「鴨川ダム撮影会」の経験を生かした東条川疏水での写真撮影会が今後どう開かれることになるのかとても楽しみになる1日でした。
開催が決まればローカルプライムでも案内できると思うのでご期待ください。
(ライター塚本隆司)
ライター 塚本 隆司(つかもと たかし)
姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。