『Kogane Brewery』(以下、KOGANE)は、大手前通りに店を構えるブルワリー(ビール醸造所)＆ビアレストランです。

姫路市内にはクラフトビールの醸造元が4軒あります。姫路初のクラフトビールが誕生したのは2022年7月に『Egret Brewery（イーグレブルワリー）』（姫路市英賀保）。その後、『FREE SPRITS BREWING(フリースピリッツブリューイング) 』（姫路市久保町）、『姫路鳩屋麦酒』（姫路市北条口）、そして『KOGANE』が醸造を始め、計4店舗のクラフトビール醸造元が誕生しています。

クラフトビールの醸造は、すぐに始められるようなものではありません。たまたま同じ地域で、しかも同時期に４つもの醸造元が誕生したのは珍しいこと。さらに4社で「姫路クラフトビール協会」を設立し、イベントを開催するなど、姫路のクラフトビールから姫路の食文化の発展と地域を盛り上げようと活動されています。
また、ビールの材料である、水とホップと大麦と酵母は、姫路市の周辺地域から調達できることから、関係各所と連携した姫路のビール造りが進められているわけです。

KOGANEがオープンしたのは、2022年2月。クラフトビール専門店として、自社醸造をはじめるまでは、委託醸造や協会メンバーの醸造ビール、厳選して取り寄せたクラフトビールを販売し、2023年11月から店内奥で醸造したオリジナルクラフトビールの販売を始めました。

店内では、常時9種類のクラフトビールが用意されています。
KOGANEオリジナルビールの他に、日本各地にある厳選したクラフトビールから選びラインナップされています。何があるかは行ってみてのお楽しみ。セゾンやIPAなどの人気のビールに加え、ペールエールやヴァイツェン、スタウトなど、9種のバランスを考えた品ぞろえになっています。

KOGANEが醸す定番主力クラフトビールは『JET IPA』（1Pint990円、1/2Pint720円）。JETには、KOGANE最初のビールとして「勢いよく」の意味合いと店長でありブルワーの飯田祐作さんが修業先で学んだビールにあやかって名付けられたもの。心地よい苦味のあるビールに仕上がっているので、1杯目のビールとして、一気に喉を潤したいビールです。
「美味いです」の言葉に「まだまだ改善の余地があります」と応えながらも、その出来映えには自信が見えます。

他にも爽やかな味わいが楽しめる『ZIT WEIZEN』（1Pint990円、1/2Pint720円）などがあり、スタッフのオススメを少しずつ楽しめる『3種飲み比べ』（130mlを3種、1,650円）など、これからもいろんなクラフトビールをメニューに加えてくれることでしょう。

ビール以外にも、フレッシュフルーツを使ったカクテルやハイボール、ノンアル飲料、子ども連れでも楽しめるようソフトドリンクやフルーツジュースなど、品ぞろえが豊富です。

KOGANEでは、肉や野菜を中心とした幅広いジャンルの料理が、すべてクラフトビールに合うように考えて作られています。しかも、できるだけヘルシーで栄養バランスのよいものを用意。これも、思い切りビールを楽しんでもらうためとか。

ぜひ、オススメしたい料理が『京都丹波産鹿肉のステーキ』（1,880円）。鹿肉は、京都の夜久野で獲れたものを特別に取り寄せているとのこと。
やわらかな食感と噛むほどに口の中でほどけていくようなしっかりとした赤身肉のおいしさ。じっくり味わい、そしてビールをひとくち。次の一切れに手を伸ばしたくなる楽しさを、ぜひ感じて欲しい逸品です。
鹿肉は、パティやジャーキーにも使われています。

人気の定番料理は、『KOGANEピクルス（自家製エール漬け）』（550円）や『サーモンとチーズの生春巻き』（770円）、『若鶏のから揚げ』（720円）、『ペペロンチーノ風枝豆』（450円）など。

ビールにはフライドポテトも外せません。

ビール造りを支えたクラウドファンディング

KOGANEのビール醸造への道は、クラウドファンディングによって開かれました。
2022年6月、「ビール作りを通して『姫路大手前通り』を世界一楽しく過ごせる場所にしていきたい！」とクラウドファンディングを立ち上げたところ、共感する多くの人から、1248万円の支援が集まり、ビール造りが本格的に始まりました。

その後は、海外情勢やコロナ禍の影響などの困難がありながらも、無事に醸造をはじめ、美味しいビールが飲める今があります。

KOGANEに入店したら見て欲しいものがあります。それは、入口すぐ右手の大きな絵。ここには、KOGANEの思いが詰まっています。 書かれている言葉に「KOGANEで、いろんな人の人生が交差する。誰かの人生をキラッと光らせながら、次の400年以上先の未来を育てていく場所へ。まちに暮らすひとと、まちを訪れるひととをはりまの恵みを詰め込んだビールがつなぎます」と、あります。

楽しくなる大手前通り

「ビール作りを通して『姫路大手前通り』を世界一楽しく過ごせる場所に」とは、どういうことなのか。『KOGANE』は、大手前通りと一体化した店舗づくりが進められていることからもわかります。

大手前通りによく訪れる人なら感じていると思いますが、2022年の夏ぐらいから変化があったはず。
姫路駅と姫路城を結ぶ動線に過ぎなかった大通りに、テーブルやイスがならび、キッチンカーなどが出店する日もあり、街の様子が変わってきています。

これらは、「大手前通りを日々人が佇み、楽しみ、そぞろ歩きが出来る目的地となるようなストリートにしたい」と立ち上がったプロジェクトの社会実験を通して得た知見の結果によるもの。

『KOGANE』前のスペースもそのひとつです。『KOGANE』で得た利益の一部が、子供達の遊び場や新しいストリートファニチャーの設置やイベントの誘致などに使われています。

なかでも『KOGANE』が販売するオリジナル瓶ビール「１０／１（Ten Per One）」は、1本あたり10円を大手前通りのまちづくりに還元していくビール。1本10円の還元という1人のアクションが10人に広がれば、小さな力も大きなパワーになるという想いが込められています。

大手前通りから姫路城を眺め、ビールを片手に語らう人たちの楽しい場所にしたい。それが『KOGANE』が今目指していること。そして、世界一楽しく過ごせる場所になるように、これからもいろんなことを考えられているようで楽しみです。

（ライター 塚本隆司）