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【姫路】『姫路市立美術館』知れば知るほど楽しくなる美術館

『姫路市立美術館』

赤レンガの美術館『姫路市立美術館』と背後にそびえる姫路城。姫路を代表する風景として、多くのメディアでも紹介されています。 この『姫路市立美術館』。趣向を凝らした企画展などで楽しませてくれていますが、それだけではありません。 建物はもちろん、常設展示や庭園にもすごいものがたくさん。そして、さまざまな人が関わり運営されています。知れば誰かに話したくなる楽しい美術館『姫路市立美術館』を紹介しましょう。

赤レンガの美術館『姫路市立美術館』

世界文化遺産・国宝姫路城を背にした赤レンガの建物

世界文化遺産・国宝姫路城を背にした赤レンガの建物。姫路の歴史を物語る風景です。
この建物は、旧日本陸軍第十師団の被服庫・兵器庫として建設されました。西館(南北棟)は1905(明治38)年、北館(東西棟)は1913(大正2)年。当時は、同様の建物が全国各地に建てられたようです。現存し保存活用されている建物は、全国でも数例を残すのみ。
江戸時代の城下町が、軍都に変わっていく、明治・大正の時代を象徴する建物なのです。

終戦後の1947(昭和22)年からは、赤レンガの建物は姫路市庁舎として姫路の行政機関として使われます。昔の写真によると、庭園にはロータリーや駐車場があったとのこと。

1980(昭和55)年から大改修工事が行われ、1983(昭和58)年に市立美術館として開館しました。東京ディズニーランドが開園したのと同じ年です。

姫路在住のスティンドグラス作家・立花江津子氏の作品《芸術の曙》

この時、姫路在住のスティンドグラス作家・立花江津子氏の作品《芸術の曙》が設置されました。館内ホールの階段を優しく包む光。必見です。

陸軍倉庫・市庁舎・美術館と3代にわたり活用されている重厚感ある佇まいは、近代姫路の歴史そのもの。2003年に国の登録有形文化財に認定されました。

ロダンやモネの作品が見られる「國富奎三コレクション室」

さまざまな企画展で楽しませてくれる『姫路市立美術館』。2023年度は「チームラボ展」など、従来の美術展示の枠を超えた企画で楽しませてくれています。

興味のある企画展に足を運ぶのはもちろんですが、常設展示も見逃せません。特に、企画展のない期間は来館者も少ないので、ゆっくり常設展示を観覧できるいい機会。小さな子ども連れでも、楽しみやすい雰囲気があります。

「國富奎三(くにとみけいぞう)コレクション室」

姫路市立美術館では、市内在住の國富奎三氏から近代フランス絵画を中心に53点の作品の寄贈を受け、「國富奎三(くにとみけいぞう)コレクション室」にて、常時約30点を公開しています。

絵画や彫刻に興味がない人でも知っている、彫刻家のオーギュスト・ロダンや印象派のクロード・モネの作品が展示されています。

ロダンといえば《考える人》が有名。1880年にフランス政府からパリの装飾美術館の門扉の制作を依頼されたロダンが終生制作に取り組んだ大作《地獄の門》という作品構想の中での独立した作品が登場し《考える人》もその一つです。
姫路市立美術館で展示されているのは《考える人》と同じく《地獄の門》の中に存在する《うずくまる女》と《堕ちる男》を組み合わせて制作された《私は美しい》という作品です。

クロード・モネは、1972年に《印象・日の出》を制作。印象派の名前の由来は、これが起源といわれています。姫路市立美術館には、2年後の1974年に制作された《ル・プティ=ジェヌヴィリエにて、日の入り》が展示されています。日の出に対する日の入りとして、注目すべき作品です。近年、修復作業を経て黄ばみがとれ、色鮮やかになっています。

近くで見れば筆使いなど鮮明に見てとれ、離れて見れば窓の外の景色を眺めているかのような奥行きを感じる立体的な作品に。近づいたり離れたりしながら、鑑賞するのがおすすめ。じっくり眺められるように椅子も置かれています。
大人だけでなく感受性の鋭い子どもたちにこそ見て欲しいと感じる作品です。

気持ちのいい庭園に佇む彫刻たち

見過ごされがちなのが庭園。ここも知れば知るほど楽しい場所です。

大きなエノキやアキニレの木

まずは、気持ちの良さ。芝生の広場に幾つかのベンチ。大きな通りに面していながらも、心地よい風が吹き抜ける静かで落ち着ける場所です。
きっと、大きなエノキやアキニレの木のおかげでしょう。葉を落とした冬は見事な枝ぶりを、春から夏には葉を茂らせた美しい樹形、秋には紅葉で訪れる人の目を楽しませてくれます。

美しい樹形を見せてくれる木々(撮影日:2020年9月5日)
美しい樹形を見せてくれる木々(撮影日:2020年9月5日)

庭園には13体の彫刻があります。

ブールデルの《モントーバンの戦士》

園内中央で存在感たっぷりなのがブールデルの《モントーバンの戦士》(1898〜1900年)と北側にある《うずくまる浴女》(1906〜1907年)。ロダンに見込まれアシスタントになったこともある芸術家です。指導者としても人気で、日本人彫刻家にも影響を与えています。その1人が、木内克で《エーゲ海に捧ぐ》(1972年)が東門近くにあります。 館内のロダン、園内のブールデル、木内克の作品を見比べてみるのも一興です。

フクロウの作家とも呼ばれた神戸出身の彫刻家・山本常一の《夜の宴》

他にも、フクロウの作家とも呼ばれた神戸出身の彫刻家・山本常一の《夜の宴》(1979)や本館入り口前にある本郷新の《花束》(1971)などがあります。

《花束》は、札幌の五輪大橋にある一対の像のミニチュア版で、風を感じることができる作品。実際に風は吹きませんが、風が吹いているように感じるはずです。

屋外彫刻は、日焼けなどで作品の表現が違ってしまうこともあるため、そのままの状態をいかに維持するかが大変です。そこで、姫路市立美術館では、市民ボランティアが毎月第3土曜日に水洗いなどの清掃、8月には表面のワックスを剥がし塗り替えるなど維持管理に協力してくれています。
ボランティアは他にも、資料整理や事務作業・イベントの補助、ガイドスタッフ、子ども向けに美術に関係する絵本の読み聞かせ、ボランティア機関誌「あかねだより」の発行など、さまざまな場面で活躍、美術館の運営を支えてくれています。

ミュージアムカフェとミュージアムショップ

館内には、ミュージアムカフェがあり、ドリンクとドーナツで休憩することができます。

ミュージアムカフェのドーナツ

ミュージアムカフェのドーナツは、地元の福祉施設で作られたもの。油で揚げていなドーナツだから、ヘルシーで小腹を満たすのにはぴったり。夏はソフトクリームが人気です。
カフェスペースは、入館料不要です。周辺散策の途中に庭園を眺めながら、気軽に立ち寄れます。

姫路市立美術館友の会
写真提供:姫路市立美術館友の会

ミュージアムショップは、企画展開催に合わせて「姫路市立美術館友の会」が運営しています。企画展関連商品の外、過去の図録やオリジナルグッズ(葉書など)を販売。企画展外の時期でも、図録は郵送販売しているので、公式サイトの「友の会」をご確認ください。

友の会は「美術を愛好する人たちが集まり、美術鑑賞と学習を通じて、会員相互の教養と親睦を深めるとともに、郷土の美術文化の向上に資することを目的に組織されている」とあるように、とにかく姫路市立美術館が好きな人たちの集まりです。
会員証の提示で常設展や企画展が無料で観覧できるほか、会員向けの美術講座、美術鑑賞旅行など、美術館事業に関われる特典があります。

「明後日朝顔プロジェクト 姫路」一年をつうじて、苗植え式や収穫祭がおこなわれる
「明後日朝顔プロジェクト 姫路」一年をつうじて、苗植え式や収穫祭がおこなわれる

友の会内のグループが主催となって取り組む活動のひとつに「明後日朝顔 プロジェクト姫路」があります。朝顔を育てることを通じて地域のコミュニケーションを促すことを目的に、後述する「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」の2021年度招聘アーティスト・日比野克彦氏が2003年から始めた活動です。
「明後日朝顔プロジェクト」は2023年現在、26地域と1団体が参加。姫路市では、2014年に友の会が開いた講座をきっかけに市内に広がり、2021年には「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」で市民参加のアート作品として、市内7箇所で開催。ますます、広がりを見せています。

「姫路市立美術館友の会」の年会費は3,000円(学生会員1,500円)。入会は随時受け付けているので、興味がある人は公式サイト等で確認下さい。

2024年度のお楽しみ

姫路市立美術館では、2021年度から2024年度までの4年間、「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」(姫路市立美術館を中核とした文化観光推進拠点計画)を姫路城・書寫山圓教寺とともに、特別企画展を展開しています。

2024年度は、建築家の隈研吾氏を招聘し、姫路市立美術館と書寫山圓教寺を舞台に、これまでにない特別展が開催されます。

書寫山圓教寺 三之堂前広場
21世紀版<生き延びるためのデザインワーク>これからの用の美(仮)
ワークショップ 2024年4月20日(土)〜6月15日(土)
展示 2024年6月16日(日)〜12月1日(日)         

姫路市立美術館 企画展示室
自然とはなにか−隈研吾の建築美学 22世紀へのパースペクティブ(仮)  2024年9月21日(土)〜11月17日(日)
ザ・ミュージアム・コレクション・ミーツ隈研吾(仮)  2024年12月7日(土)〜2025年2月11日(火・祝)         

「平井優子 ダンス×中谷芙二子《白鷺が飛ぶ》霧の彫刻 #47769 -Yohaku(余白)-」 2023年3月12日 パフォーマンス風景 ©Fujiko Nakaya ©Yuko Hirai 写真提供:姫路市立美術館
「平井優子 ダンス×中谷芙二子《白鷺が飛ぶ》霧の彫刻 #47769 -Yohaku(余白)-」 2023年3月12日 パフォーマンス風景 ©Fujiko Nakaya ©Yuko Hirai 写真提供:姫路市立美術館

庭園では、2022年度から庭園アートプロジェクトとして、霧の彫刻家・中谷芙二子氏の「霧の彫刻」を開催(観覧無料)しています。
2024年度は、2024年4月27日(土)〜11月24日(日)を予定。9月上旬〜11月上旬は夜間公開もあります。
内容は、毎時決まった時間(詳細未定)に、庭園内に霧を発生させ幻想的な空間を創り出します。天候や気温湿度によって一時休止もありますが、夏の暑い時期など、姫路市立動物園に行った帰りの親子連れで賑わうなど、新しい美術館の楽しみ方として認知されつつあります。

「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」以外でも、「PRISM」展(2024年4月27日(土)〜6月23日(日)まで)など、企画展示室やコレクションギャラリーでさまざまな企画が予定されています。
詳しくは、公式サイトでご確認ください。

(ライター  塚本隆司)

※本記事は取材時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

姫路市立美術館

住所兵庫県姫路市本町68番地25 姫路城東側
電話番号079-222-2288
開館時間10時~17時(入館は16時30分まで)
入館料常設展示 一般210円、大高生150円、中小生100円、
企画展示展等は催しにより異なる
定休日毎週月曜日(祝日・休日の場合は翌平日休館)、
年末年始(12月29日〜1月3日)、その他特別休館あり
アクセス徒歩:JR、山陽電車姫路駅から徒歩約25分
神姫バス:姫路医療センター経由系統で約5分
「姫山公園南・国立姫路医療センター・美術館前」下車すぐ、
または城周辺観光ループバスで約5分「美術館前」下車すぐ
駐車場周辺の有料駐車場を利用
HPhttps://www.city.himeji.lg.jp/art/
SNSInstagram https://www.instagram.com/himeji_bijutsukan/
X https://twitter.com/himeji_bijutsu

ライター 塚本 隆司(つかもと たかし)

姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。

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