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丹波焼を未来へつなぐ、『グループ窯』の若き陶芸家たち

『グループ窯(よう)』

国の伝統的工芸品に指定されている「丹波焼」の生産地、丹波篠山市今田町立杭地区で、45年も続く若手陶芸家のグループ『グループ窯(よう)』があります。地域で陶器のイベントを開催したりグループ展を行ったり、積極的に丹波焼をPRし、ファンとの交流も深めている彼ら。経験を経て卒業する人があれば、また新たなメンバーが入る、その繰り返しで常にメンバーが活性化し、活躍しています。現在、6人いるメンバーを紹介しましょう。

『グループ窯』の成り立ち

2023年春の『グループ窯』グループ展
2023年春の『グループ窯』グループ展

『グループ窯』のスタートは1978年、まだ日本経済に勢いがあり、陶器の売れ行きもよい頃でした。しかし先のことはわかりません。「力がある時にこそ、丹波焼をより多くの人に知ってもらおう」と、当時20代の若手陶芸家たちが陶器のイベントを開催しました。それが今に続く「陶器まつり」です。
初代実行委員長の大西文博さん(丹文窯)は、「はじめは、若造が何を始めるんだと、先輩らから相手にされませんでした」と振り返ります。グループのメンバー7人は友達を巻き込んで翌年陶器市を開催。初日から予想をはるかに超える人が集まり、静観していた先輩たちも協力を申し出ました。それから形を変えつつ毎年秋に陶器市が開催され、春には軽トラ市などのイベントも開催されています。

省三窯 市野秀作

『省三窯』の三代目となる市野秀作

『省三窯』の三代目となる市野秀作さんは京都の大学で社会学を専攻し、卒業してから高等技術専門学校で陶芸を学びました。「あととりだという自覚はありつつ、違う世界を見たくて大学はあえて芸術とは関係のない学部を選んだ」そうです。でも伝統文化が好きで、休みの日はお寺や美術館を見て回っていました。

実際に窯焼きを繰り返す中で知識を深めていきました

丹波に戻ってからは、実際に窯焼きを繰り返す中で知識を深めていきました。中でも釉薬の調合や焼成の加減は自分の感覚を磨くしかありません。焼成時にできる釉薬の流れによる模様は、コントロールに限界があり、窯から出して初めてわかります。「だから面白い。京都で観た美術品のように、深い表情をもち、多くの人に美しいと感じてもらえる作品を作りたい」と努力を続けています。

『釉彩面取ぐい呑』(各9,900円/木箱付)
『釉彩面取ぐい呑』(各9,900円/木箱付)

ろくろで形を作って叩いて角を出し、さらに包丁で面取りをしたぐい呑み。重ねた釉薬が流れてできる模様が美しい作品です。

『灰釉コーヒーカップ&ソーサー』(4,950円)
『灰釉コーヒーカップ&ソーサー』(4,950円)

成形したカップを土がやわらかいうちにねじって、斜めしのぎで変化をつけたカップは、白と薄緑が混ざったやさしい表情が印象的。

省三窯

住所兵庫県丹波篠山市今田町上立杭2-2
電話番号079-597-3450
営業時間10:00~17:00
定休日なし
アクセスJR相野駅からウイング神姫バスで「清水」行き、
美山台バス停下車、徒歩約10分
駐車場あり(3台)
HPhttps://shozogama.com/

雅峰窯 市野健太

窯元『雅峰窯』の五代目となる市野健太さん

1890年からの窯元『雅峰窯』の五代目となる市野健太さんは、父・弟とともに作陶に励んでいます。ポップな色使いが多い『雅峰窯』の中でも、雅峰窯ブルーと呼ばれる鮮やかなトルコブルーを中心に、いろいろな形や色に展開。そのハイセンスな器は、多くのファンのハートを捉えています。

市野健太さん

父とは違う方向を模索し、自分の作品作りにこだわっていた20代を経て、いつしか使う人の食卓を第一に思い浮かべるようになったそうです。「自分が好きだと思って作る器を、素敵だと感じてもらえる人に」と、工房を訪れるお客さんとコミュニケーションをとりながら器作りを楽しんでいます。

『border cup』( 4,400円)
『border cup』( 4,400円)

ガラス系の釉薬を使った美しい光沢が特徴的な雅峰窯ブルー。ボーダー柄がさわやかなカップです。

『rim plate』( 4,950円)
『rim plate』( 4,950円)

リムに描かれた遊び心のある筆あとに料理が映え、食卓を華やかにしてくれるお皿です。

雅峰窯

住所兵庫県丹波篠山市今田町上立杭355
電話番号079-597-2107
営業時間10:00~18:00
定休日なし
アクセスJR相野駅からウイング神姫バスで「清水」「兵庫陶芸美術館」行きに乗車約15分、
陶の郷前バス停下車徒歩5分
駐車場あり(3台)
HPhttps://www.gahougama.com/
SNShttps://www.instagram.com/gahougama/
https://www.instagram.com/kenta_ichino/

昇陽窯 大上裕樹

大上裕樹さん

金沢美術工芸大学で、デザインや工芸を学んだ大上裕樹さん。厳しい課題に対して、ひたすら創作する4年間を過ごし、卒業後は瀬戸の鈴木五郎氏のもとで内弟子として修業を積みました。「技術は見て盗む」という職人の世界で得たものは、技術以上に師匠の「挑戦を続ける不屈の精神」。それが、大上さんが作品に向きあう姿勢のベースになっているようです。

新作の壁面陶板を背に
新作の壁面陶板を背に

そして、「いろんなものを見たい。世界から見た日本のアートや工芸はどの位置にあるのだろう」と奥さんと2人、バックパッカーで世界一周。4カ月の旅で大きな刺激を受けました。丹波に戻って9年、2022年5月に県道292号沿いに自身が設計した新しい工房をオープン。1階はショップ、奥は工房、2階には独創的な作品が並びます。

『しのぎ象嵌pot』(17,800円)
『しのぎ象嵌pot』(17,800円)

しのぎの技術をアレンジしたしのぎ象嵌は、しのいだパーツを切って整え、再び埋め込む技。しのぎの太さや間隔の違いで表情が大きく変わります。

『丹波プラチナ彩徳利』(22,000円)、『ぐい呑』(15,400円)
『丹波プラチナ彩徳利』(22,000円)、『ぐい呑』(15,400円)

プラチナ彩を全面に施した珍しい器。暗い場所でも光りを放ち幻想的な雰囲気を醸し出します。

昇陽窯(SHO-YO-GAMA Ceramic Laboratory)

住所兵庫県丹波篠山市今田町下立杭8
電話番号079-597-2213
営業時間9:00~17:00
定休日火曜
アクセスJR相野駅からウイング神姫バスで「清水」「兵庫陶芸美術館」行きに乗車、
約10分、陶の郷前バス停下車すぐ
駐車場あり(2台)
HPhttps://www.sho-yo-gama-ceramic-lab.com/
https://shoyogama.thebase.in/
SNShttps://www.instagram.com/sho_yo_gama/
https://www.instagram.com/oogamiyuuki/

陶幸窯 市野翔太

市野翔太さん

京都で陶磁器と釉薬を学んだ市野翔太さんは、丹波に戻って父の市野浩祥氏に師事。「見て覚えろ」と渡された見本を再現すべく、見様見真似で工夫しながら作る日々でしたが、9年目の今「作るのが楽しくて、あれもこれも作りたい」と意欲的です。電気窯や自作の炭窯で焼成していますが、この先は、穴窯を使って偶発的に起こる模様の面白さを生かしたいとも考えています。

市野翔太さん

以前から青色が好きで、オリジナルの青色作りにも余念がありません。大量のテストピースから「これだ!」と思える青を選んでいますが、「もっと他のかわいい色も増やしたい」そう。おしゃれで手にとりやすい価格で、気がねなく普段遣いできる器をお客さんに届けたいとイメージをふくらませています。

『白群釉二段面取マグカップ』(2,200円)
『白群釉二段面取マグカップ』(2,200円)

白群釉(はくぐんゆう)と名付けたオリジナルの色。マットな質感がかわいらしく、面取りという装飾技法が施されています。

『青白纏四方皿』(8,800円)
『青白纏四方皿』(8,800円)

3年前の展示会で好評だったため、定番になったお皿。黒釉薬の上に白釉薬を四方に重ね、焼く時に流れる釉薬の模様の面白さを生かしています。

陶幸窯

住所兵庫県丹波篠山市今田町上立杭2-5
電話番号079-597- 3128
営業時間9:00~17:00
定休日水曜
アクセスJR相野駅からウイング神姫バスで「清水」行き、
美山台バス停下車、徒歩約10分
駐車場あり(4台)
HPhttps://tokogama.com/
SNShttps://www.instagram.com/tokogama/
https://www.instagram.com/syota_ichino/

信水窯 市野貴信

市野貴信さん

初代市野信水氏は茶陶の第一人者として知られていますが、三代目予定の貴信さんは信水氏とはまったく違うテイストの器を作っています。その特徴は色にあり、毎年新色に挑戦。釉薬に合わせる顔料の微妙な増減で何千もの色を作っているものの、納得がいって採用したのはまだいくつかだけ。「もっと自分の色を作りたい」と意欲を燃やしています。

市野貴信さん

工房の周りは自然豊かな環境です。集中したあとは外に出てリラックスすると同時に自然からインスピレーションを得ることも。変化を恐れず、30年以上続く信水窯ブランドの刷毛目白化粧も、時代に合わせて少しずつ色を変えています。「より料理が映えるように」それが目指す器です。

『白釉ガラス釉鉢』(2,750円)
『白釉ガラス釉鉢』(2,750円)

落ち着いたブルーの中央にエメラルドグリーン。シンプルな中にも計算された美しさを感じます。

『白釉ピンク流しカップ&ソーサー』(2,750円)
『白釉ピンク流しカップ&ソーサー』(2,750円)

薄いピンクを配したやさしい雰囲気のカップとソーサー。このピンクも定番となり、いろんな器に展開中。

信水窯

住所兵庫県丹波篠山市今田町上立杭4-3
電話番号079-597-2344
営業時間10:00~17:00
定休日なし
アクセスJR相野駅からウイング神姫バスで「清水」行き、
美山台バス停下車、徒歩約10分
駐車場あり(5台)
HP信水窯HP
SNShttps://www.instagram.com/shinsuigama/

炎丹久窯 清水辰弥

清水辰弥さん

窯元の家に生まれたものの陶芸の道に進むつもりはなく、大学では歴史を専攻し会社員として営業職に就いた清水辰弥さん。しかし祖父の急逝で立場を自覚し、一念発起して3年間研究所で学び、丹波に戻って2年が経ちました。

清水辰弥さん

父からは「自分の好きなものを作れ」と言われ、炎丹久窯ブランドの器は父に任せて、オリジナルの作品作りにチャレンジしています。「陶芸家としてまだスタートしたばかり、和の雰囲気の中にどこか洋のテイストを感じるデザインをプラスしていきたい」と目標に向かって進んでいます。

『緑マット七寸リム皿』(3,800円)、『五寸リム皿』(1,800円)、『豆リム皿』(900円)
『緑マット七寸リム皿』(3,800円)、『五寸リム皿』(1,800円)、『豆リム皿』(900円)

銅を加えて深みを出しながらも鮮やかな緑色のお皿。緑色が好きで、研究所時代に作ったオリジナルの色を少しずつアレンジしています。

『黒マット飯碗』(1,300円)、『五寸リム皿』(1,800円)
『黒マット飯碗』(1,300円)、『五寸リム皿』(1,800円)

大人感のある黒いマット皿。光を受けた時の落ち着いた色、さらっとしたなめらかな手ざわりが使いやすいのです。

炎丹久窯

住所兵庫県丹波篠山市今田町下立杭9-4
電話番号079-597-2315
営業時間9:00~17:00
定休日なし
アクセスJR相野駅からウイング神姫バスで「清水」「兵庫陶芸美術館」行きに乗車、
約10分、試験場前バス停下車すぐ
駐車場あり(5台)
HP炎丹久窯HP
SNShttps://www.instagram.com/4_3_z/
『グループ窯』

現在の『グループ窯』のメンバーは、全員が窯元の家に生まれて、陶芸が身近にある中で育ちました。陶芸の道にすんなり進んだ人、別の道を経て戻った人、経緯は違いますが、誰もが丹波焼の技法を大切にしつつ新しい作風を取り入れ、独自の器を作っています。若手ならではの想像力あふれる作品を楽しみに工房を訪れてみませんか。

(ライター 松田/ウエストプラン)
(撮影 草田康博)

※本記事は2023年5月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

株式会社ウエストプラン

松田きこ、かさはらみのり、中田優里奈、都志リサほか、兵庫県に精通した女性ライターが、観光やグルメ情報を中心に、阪神間や丹波・丹波篠山を縦横無尽に駆け回って取材します。

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