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【東条川体験③】酒米・山田錦の田園を歩く「東条山田錦の里 探訪ウォーク」リポート

加東市で山田錦の田園

酒米・山田錦の収穫を前にした秋分の日(2024年9月22日)に加東市で山田錦の田園を歩く「東条山田錦の里 探訪ウォーク」(主催:東条山田錦フェスタ実行委員会)が開催されました。

同日開催の「加東市山田錦乾杯まつり」会場をゴールとした11.5Kmを歩く恒例イベントで、今年で20年目(15回目)。約180名が参加しました。

山田錦の田園が魅せる風景の中、実りある地を育む東条川疏水について学びながら歩いてきましたので紹介します。

秋の恒例行事「東条山田錦の里 探訪ウォーク」

コロナ禍や天候不良で中止を余儀なくされた年もありながら、今年で20年目となる「東条山田錦の里 探訪ウォーク」が開催されました。“田んぼ”と“探訪”をかけた、ユーモアあふれるイベントを毎年楽しみにしている人も多く、秋の恒例イベントになっています。

大陸へと抜けたはずの台風(14号)が秋雨前線を刺激しながら戻ってくるという、準備するスタッフをヤキモキさせた天候も、風は少し強めながらもウォークには心地よさそうな曇り空となり無事開催できることになりました。

集合(出発)場所は、加東市東条福祉センター「とどろき荘」。かつて戦国武将たちが戦いの傷を癒やしたと伝わる名湯・東条温泉があり、日帰り入浴ができる施設です(11月末日までは施設改修のため、一般入浴は中止しています)。

8時30分に受付を開始すると参加者が続々と集まり手続きを始めます。
参加申し込みは事前(8月1日〜30日)にあり、地元の人をはじめ神戸や姫路から毎年楽しみに訪れる人もいる人気のイベントです。

「播州鯉(ばんしゅうごい)」

参加者には、探訪ウォークマップの他、タオルや加東市特産の鯉のぼり「播州鯉(ばんしゅうごい)」をモチーフとしたミニ鯉のぼりなどが手渡されました。

出発に先立ち、とどろき荘の多目的ホールでは出発式が開かれ、東条山田錦振興会会長であり東条山田錦フェスタ実行委員会の石田会長が「特A地区の山田錦がある風景と山田錦の美味しいお酒を味わってほしい」と挨拶。

出発式で挨拶をする石田会長
出発式で挨拶をする石田会長

そして、加東市長ら来賓挨拶と続き、注意事項の説明が行われました。

出発式が終わると、歩くのが早い人は前に、ゆっくり歩きたい人は後ろに別れ、いよいよ出発。東条川沿いを歩いていきます。

歩きはじめからほどなくして、ポツポツと雨が降りだし、傘や合羽が必要になる空模様に。「合羽は暑いから濡れていく方がいい」とそのまま歩く人などさまざまです。

石田会長による山田錦の解説ポイント(1.6Km地点)に着く頃には雨脚が強くなってきました。

雨の中、山田錦の稲穂が広がる田園で解説する石田会長
雨の中、山田錦の稲穂が広がる田園で解説する石田会長

山田錦の稲穂は背丈が高く、倒れやすく、収穫時期が10月中旬ごろと遅いため、台風被害に遭いやすく、育てるのが難しいといわれています。ここ加東市の多くの地区は、山田錦の産地ぼ格付け評価で最上とされる「特A地区」に指定されていることなどを解説。酒米の王様といわれる山田錦の中でも高品質であることから、各地の酒造会社が求め、多くの銘酒が誕生しています。

広い田園一帯を吹き渡る風に、山田錦の稲穂が酒蔵ののぼり旗と一緒に揺れています。田園の中を歩く心地よさと澄んだ空気。天候は雨でも、この季節ならではの風景には心躍るものがあります。

山田錦栽培を支える地域の宝「東条川疏水」

藪営農倉庫や松沢公民館でのトイレ休憩、給水スポットを過ぎ、スタートしてから半分(5Kmちょっと)ほどの地点に、曽根サイフォンがあります。

稲田の上を通る管が曽根サイフォン
稲田の上を通る管が曽根サイフォン

曽根サイフォンとは、加東市や小野市、三木市の農地に鴨川ダム(東条湖)からの水を農地へと運ぶ東条川疏水の幹線水路のひとつです。特に平地部分に水を流すには、谷や川、道路を横断する必要があるため、送水のための管を設置しサイフォンの原理(管の中を水で満たすことで水位の高い方から低い方へ流す仕組み)を用います。

東条川疏水には、59箇所のサイフォンがあり、その代表的なものが曽根サイフォンになります。
東条川疏水は、山田錦栽培をはじめ、地域の農業や生活を支える重要な財産であることから「東条川疏水ネットワーク博物館会議」として、次世代へ引き継ぐ活動をしています。
「2025大阪・関西万博」に合わせ、兵庫県が地域の魅力ある体験を発信していく取り組み「ひょうごフィールドパビリオン」におけるプログラム「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!」でも紹介しています。

曽根サイフォン脇に設置されたテントでは、サイフォンの仕組みを再現した実験模型があり、熱心に見ていく人も多くありました。

曽根サイフォンを過ぎ、山道へと入り安政池へ向かいます。

安政池は、元は江戸時代に築造された池で、鴨川ダムの貯水量を補うため堤防を嵩上げされています。
ここでも解説コーナーが設けられ、水資源を有効活用する仕組みや東条川疏水ネットワーク博物館について、パネル紹介がされていました。

次の目的地、依藤野(よりふじの)公民館では、トイレ休憩や給水ポイントだけではなく、恒例のブドウの試食が待っていました。1人3粒までではあるものの、疲れた体に、はじけるようなブドウの甘い果汁が沁み渡ります。

ここから残すは4km。黄金色の田園の中を歩く気持ちの良いコースに足取りも軽くなります。

ゴール会場は「加東市山田錦乾杯まつり2024」

最後の難所は、残り3Kmの国道沿いの歩道。車が多く通る道は、気持ちの良かった田園風景もまばらになり、市街地に近づくほど現実に引き戻される感が強くなります。やわらいでいた雨脚も強くなり、黙々と歩くのみ。途中の兵庫県立社高校周辺の緩やかな坂が、じわじわと体力を奪っていきます。

「ゴールまで2Km」の看板に「あと少し」と感じる人や「まだあるの?」と感じる人もあり悲喜交々
「ゴールまで2Km」の看板に「あと少し」と感じる人や「まだあるの?」と感じる人もあり悲喜交々

ゴール地点は社中央公園ステラパーク。この日は「加東市山田錦乾杯まつり2024」が行われていました。
乾杯まつりは、加東産の山田錦を使っている全国各地の酒蔵のうち20蔵が集結。山田錦で醸した日本酒の呑み比べができるなど、酒好きにはたまらないイベントです。

日本酒以外にもグルメや酒器の販売、ゲストによるトークショーや振る舞い酒など盛り上がっていました。

「探訪ウォーク」参加者は、12時前あたりから続々とゴール。受付ブースに到着した参加者に話を聞くと「田んぼの中を歩くのは最高に気持ち良かった」「雨だったが昨年の暑さに比べれば全く平気」などの声が聞かれました。
参加者には、お楽しみ抽選会も。景品には、日本酒や地元農産物の詰め合わせ、東条川疏水オリジナルのTシャツやトートバッグなど豪華賞品がいっぱい。

昼食として、山田錦の特製巻き寿司も配られ、早速乾杯まつり会場から日本酒を調達して、仲間と談笑しながら味わうグループなど、とてもいい雰囲気に包まれていました。

乾杯まつり会場内には山田錦PRブースもあり、山田錦を日本農業遺産(国連食糧農業機関による世界農業遺産に対し、国内版として農林水産省が制定した制度)に認定してもらおうとする活動も紹介されていました。

ちなみに2024年10月現在、1次審査を通過し、認定に向けた現地調査などが行われているところです。

加東市は「山田錦のまち」として、ひょうごフィールドパビリオンに「目いっぱい楽しむ山田錦」としてプログラム登録しています。山田錦を育む土での酒器作り体験や山田錦の田植え、稲刈り、酒造りなどを学ぶ体験が準備されています。

今回、探訪ウォークを主催した、東条山田錦フェスタ実行委員会の石田会長は「山田錦のことを多くの人に知ってもらうためには、この時期の田園を見てもらうのが一番。美味しい酒が生まれる風景を見て興味を持って欲しい」とのこと。今年度は「ひょうごフィールドパビリオン体験型プログラム」にも認定され、リピーターに加え地域内外から新たな参加者もありました。今後も毎年開催される予定なので、気になる人は、加東市の公式サイトで8月初旬頃に募集が始まるのを忘れずチェックしてください。

本記事は「ひょうごフィールドパビリオン SDGs体験型地域プログラム」に認定された「見て!動いて!味わって!東条川疏水博士になろう!(東条川疏水ネットワーク博物館会議)」におけるプログラム紹介記事の3回目として掲載しました。今後も活動の内容など紹介していきます。

(ライター 塚本隆司)

※本記事は2024年9月時点の情報です。価格は税込み表示です。商品内容や価格が変更となる場合があります。

ライター 塚本 隆司(つかもと たかし)

姫路城を眺めながら生きてきた、脱サラライターです。全国あれこれ旅をして来たけれど、やっぱり地元が1番!“兵庫のよいもの“を探し求めて歩きます。(呑み歩きだろ! とは言わないで笑)読んでくれているみなさまの「行きたい!欲しい!食べたい!」が「行こう!買おう!食べよう!」に心が動いたなら、何よりの幸せです。

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