STORY 1
山上へ向かう道を進むにつれ、姫路の喧騒が背後へ遠のき、木々の隙間を抜ける風が静かに景色を入れ替えていく。廣峯神社は、社殿より先に山の気配そのものが姿を現す場所だ。ここでは建物の美しさよりも、山が長い時間をかけて蓄えた空気の深さが先に人を包む。いま残る社殿は壮麗だが、この山に祈りが始まったのは、ずっと古い時代の素朴な営みからだった。
廣峯の原点は、現社域から西に外れた白幣山の尾根にある磐座である。はじめから社殿があったわけではない。そこにあったのは、ただ巨大な岩と、山の気息だけだった。
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